東京都などの一部地域を除いて緊急事態宣言が解除され、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の騒動も一時落ち着いてきているなか、第二波の感染拡大が懸念されている状況でもあります。
筆者も医療者として、緊急事態宣言解除後の感染爆発は危惧すべきことであると考えています。しかし、SNSで「なぜ、1日にCOVID-19患者が100人増えただけで、医療崩壊が起こるのか?」といったコメントがちらほらと目につきました。
そこで、今回はなぜ医療崩壊が起こりうるのかについてデータなどを元に説明したいと思います。
通常時もベッドの使用率は8割前後
病院の平均病床利用率は、厚生労働省の調査では80%前後で推移しています(※1)。
同調査の表では、感染症病床の利用率が少ないです。これは指定感染症や新型感染症を対象としているためです。普段は一般病床としてインフルエンザや肺炎患者などを入院させているため、COVID-19を扱っている病棟も病床利用率は80%程度と考えて良いでしょう。
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(出典:「平成30年病院報告」厚生労働省)
20%も空きがあるじゃないか。という声も聞こえてきそうですが、この20%に救急患者用として空けているベッドも含まれています。
つまり、病床利用率が100%になってしまうと、救急患者を受け入れられない状況が起きます。事実、COVID-19患者を受け入れている病院では、救急患者の受け入れを止めている病院もあります。
救急患者を受け入れられる病院は一握り
日本には多くの病院がありますが、救急患者を受け入れる病院には種類があります。
・入院を必要としない急病患者を診る一次救急
・入院を必要とする中・重症患者を診る二次救急
・集中治療室(ICU)などで診る必要がある重傷・重篤な患者を受け入れる三次救急
三次救急の数は日本全国でもそれほど多くありません。
この中で、COVID-19患者を受け入れる病院の多くは、三次救急にあたる病院です。それらの病院が救急患者を受け入れられなくなるとどうなるか?
入院する病院が他にあったとしても、遠くの病院へ行かなければならない…といった状況に陥ります。しかし、一刻を争う救急患者を遠くの病院に運ぶことは、それだけ死亡リスクがあがることになります。
医療従事者の不足
医療従事者の不足も叫ばれています。特に看護師は各都道府県や日本看護協会が職場復帰を呼びかけていました。
この記事でもあるように、多くの看護学部が新設されており、看護師の数は増えてきています。しかし、看護師が不足している現実があります。これはなぜなのでしょうか。
一つとして、看護師の数は増えているが、高齢社会に伴う介護施設の増加や在宅看護の需要が高まっており、病院以外で働く看護師が増えていること。
そして、今回のCOVID-19の影響が顕著に出ているのが、高度な医療を提供するには、人員も必要になるということです。
今回の騒ぎで一躍有名となったECMO(体外式膜型人工肺)ですが、高度な24時間体制の管理がいるほか、感染予防による防護具の着脱などを考えると人手が倍近く必要になると言われています(※2)。
感染したすべての人が入院対象だった
医療従事者の不足の原因として、COVID-19は感染したすべての人が入院対象となることです。そのため、感染爆発初期は、軽症患者で病床が埋まってしまう現象が起きてしまったのです。
現在は、宿泊施設での療養環境が整備されたことにより、病院がパンクするという危機は回避されました。しかし、宿泊施設でCOVID-19患者が療養するにあたり、医療者を配置しなければなりません。病院から派遣すれば、病院の人員が足りなくなるため、各都道府県が人員の確保に動いたわけです。
医療崩壊は私たち一人ひとりが止めるしかない
今回、COVID-19の騒動に関して、医療崩壊が起こる原因をお話ししました。これから、感染爆発の第二波、第三波が来ることを想定しておいた方が良いでしょう。
今回は医療崩壊を止めることができたかもしれません。次回も止めましょう。医療崩壊が来れば命の選択を我々医療者もせざるを得なくなります。
そのためにも、自粛解除に浮かれずに一人ひとりが感染防止を頭の隅に置いておくべきだといえるでしょう。
参考
(※1)『平成30(2018)年医療施設(動態)調査・病院報告の概況』厚生労働省
(※2)『「人手 倍近く必要」 切り札「エクモ」に課題』中日新聞
村松 拓