米IT大手(グーグル、アマゾン、フェイスブック、マイクロソフト)4社のデータセンター投資に温度差が生じ始めている。新型コロナウイルスの拡大に伴う、テレワーク/在宅勤務などの一斉導入でクラウド需要が逼迫したことで、マイクロソフトなどは投資拡大の姿勢を示す一方、フェイスブックなどは広告収益の急減によって、コスト管理を徹底するため設備投資を一部先送りする。新型コロナを契機に、大手4社の投資スタンスにも違いが出てきている。
フェイスブックは投資減額
新型コロナによって、テレワークの導入拡大、さらに「巣ごもり」需要の拡大によってeコマースやビデオストリーミングサービスの視聴機会が増えたことで、米系大手が展開するサービスの多くが好調だ。需要増に応えるべく、各社は積極的な設備投資を行う構えを見せており、結果として、これが足元の半導体需要につながっている。具体的にはプロセッサーをはじめ、DRAM/NANDなどのメモリー需要を喚起している。
ただ、米系4社の足元の状況を見ると、一部では設備投資の先送りや抑制も出てきている。大きな要因となっているのが、広告収益の急減だ。欧米各国ではロックダウン(都市封鎖)に伴い企業活動が停滞。これによって、広告の出稿量も大きく減少しており、フェイスブックは3月に入って、広告が急減したことを明かしている。
実際にフェイスブックは20年の設備投資(ファイナンスリース含む)について、当初計画の170億~190億ドルから、140億~160億ドル(中心値は前年比5%減)に引き下げるとしている。ただ、設備投資そのものを抑制するわけではなく、21年へ期ずれするものだと言及している。
グーグルの親会社であるアルファベットも同様に3月から広告売り上げが急減したとコメント。設備投資は前年比で減少する見通しだが、そのうち、テクニカルインフラと呼ばれるハードウエア関連は前年と同規模の水準になる見通しだ。
マイクロソフトは「Teams」が爆発的な伸び
一方で、アマゾン、マイクロソフトは足元のビジネスで追い風が吹いており、投資の手を緩めそうにない。アマゾンの20年1~3月期における全社売上高は前年同期比26%増の754億ドルを記録。主力のeコマースに加え、クラウドサービスのAWS(アマゾンウェブサービス)が同33%増、「Prime Video」などのサプスクリプションサービスが同29%増と高い伸びを示しており、新型コロナに伴う社会活動の変化をポジティブに受けることができている。
同社は年間の投資計画を明らかにしていないが、先行指標となるオペレーティングリースは1~3月期に前年同期比で21%増となっており、引き続き高い水準を維持している。
マイクロソフトもテレワーク/在宅勤務によって、コミュニケーションプラットフォーム「Teams」をはじめとする各種の「Office 365」サービスの利用が急拡大。4月末の決算でTeamsのDAU(Daily Active User)数が7500万人を突破したと公表。わずか1カ月半で利用者が1.7倍に膨らんでいる。さらにクラウドサービスの「Azure」部門の売上高も前年同期比59%増と大きな成長を見せている。
同社の1~3月期設備投資実績は前年比15%増の39億ドル。ただ、部品調達の混乱から当初計画を下回ったとしており、その反動から4~6月期は前四半期比で大幅な増加となる見込み。
電子デバイス産業新聞 副編集長 稲葉 雅巳