この記事の読みどころ
- 英国のEU離脱ショックとリーマンショックの間には1つの共通点があると考えています。
- 金融市場での大きなショックが起きる時は、イベントの結果が決まる直前に妙に楽観的な雰囲気が蔓延することがあります。
- 金融市場では、大勢の見方が一方に偏った時は、シートベルトを締め直すくらいの気持ちで臨む必要があります。
英国のEU離脱ショックとリーマンショックは似ている?
世界が注目した、英国のEUへの帰属についての国民投票は、「離脱」という結果となりました。大勢が判明した6月24日(金)の午後、日本の株式市場はその影響の直撃を受け、その日の日経平均株価は前日比で1,286円下落しました。下落幅が2008年のリーマンショック発生時より大きかったことで、「今回の件はリーマンショック級、またはそれ以上のショックではないか」という声も聞こえてきました。
一方、「リーマンショックと英国のEU離脱は全く別物だ」という見方も聞かれます。「リーマンショックの時は、金融機関同士で資金の融通をためらうほど、市場の流動性が急速に萎んでしまったけれど、今回はそのようなことにはなっていない」、という点が根拠として挙げられています。
今回の英国のEU離脱によるショックが、リーマンショック級のショックだったかどうかは、今後の展開次第の部分もありますので、現時点では何とも言えません。しかし、今思えば、1つ共通点があったと考えています。
リーマンショック直前は「救済されるだろう」という観測が大勢を占めた
リーマンショックは、文字通り、米国投資銀行大手のリーマン・ブラザーズが破綻したことが引き金となって起きたショックです。
当時、2007年に顕在化したサブプライム危機により、金融機関が保有するデリバティブ商品の価値が毀損し、莫大な損失を抱えているのではないかということが問題視されました。そうした中、2008年3月にベア・スターンズが経営危機に陥りました。この時は、米国政府主導で、JPモルガンが救済合併し、危機は回避されました。
その後、リーマン・ブラザーズが危機を迎えました。この時、金融業界の多くの人は、「ベア・スターンズが救済されたのだから、リーマン・ブラザーズも救済され、金融危機にはならないだろう」と予想していました。楽観的シナリオが支配的だった、何とも不思議な雰囲気にあったように記憶しています。
結果は、ご存じの通り、リーマン・ブラザーズは救済されずに破綻し、パニックになった投資家のリスク回避的な行動によって、リーマンショックが引き起こされてしまいました。
英国の国民投票直前は多くの人が「EUに残留するだろう」と考えた
ひるがえって、今回の英国の国民投票の話です。
投票日に向け、EU残留派と離脱派が拮抗しているということは、各種メディアによって連日伝えられていました。拮抗しているにも関わらず、「なんだかんだ言っても、残留に決まるだろう」というのが、多くの人の予想でした。残留することを前提とした投資ポジションで臨んだ人もいたと思います。しかし、ご存じの通り、結果は「離脱」となってしまいました。
共通点はイベントの結果が分かる直前の妙に楽観的な雰囲気
リーマンショックの時とEU離脱ショックの時の共通点の1つは、結果が決する直前に、妙に楽観的な雰囲気が漂っていたことだと思います。
金融市場では、イベントの結果が決する直前に、妙に楽観的な見方が大勢を占めることがあります。発生する確率としては半々くらいなのに、どのメディアで見ても同じようなことを言っているような時は要注意です。大勢の見方が一方に偏った時は、ショックが起きるかもしれないと考え、揺れに備えてシートベルトを締め直すくらいの気持ちで臨むことをお勧めします。