新型コロナウイルス(COVID-19)の世界的な感染拡大と感染を食い止めるための対策を受けて、経済は「突然の停止」となった。深刻な景気後退は不可避と見られ、その影響についても多くの不確実性が存在する。
市場は2008年の世界金融危機同様の事態を織り込んでいるが、今回は危機の性質が非常に異なる。他方で、中期の資産クラスの期待リターンは大幅に改善している。
突然の停止
マクロ経済の観点から見ると、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大は、経済見通しに著しい変化をもたらし、経済は「突然の停止」となった。
2020年1-3月期の初期段階では新型ウイルスの感染拡大は一部地域に限られ、隔離政策がサプライチェーンとともに一部の生産能力に影響を及ぼしていた。しかし、パンデミック(世界的流行)が広がった結果、その後の需要は大幅に減退した。
新型ウイルスの感染拡大をめぐり強い不透明感とパニックが発生し、封じ込め策によって社会的交流は抑制され、経済活動が停滞し、家計とビジネスは深刻な「現金のひっ迫」に直面している。悲観的なシナリオは、需要サイド(景況感の悪化)と供給サイド(企業の倒産など)の両方に対して、今後一段と打撃が加わり、「悪循環」をもたらすことを想定している。
景気の先行きを占う景気循環指標は、最初に中国で、次に欧米で経済への打撃が非常に大きいことを浮き彫りにした。たとえば、この2週間で米国の新規失業保険申請件数は各週ともに660万件を超え、世界金融危機当時の10倍にも上っている。
セントルイス連銀のエコノミストは、「突然の停止」により米国の失業率が30%に達する恐れがあるとしている。一方、フランス統計局は、目下フランスの経済活動は平時の65%に留まっていると推定している。
エコノミストは多くの先進国の4-6月期の国内総生産(GDP)成長率が2桁のマイナスになると推定している。2020年通年については、世界の経済成長率のコンセンサス予想は現在0.5%と、2月から1.9ポイント低下した。