他国も中国に追随し、日本は中小企業への無金利無担保融資を1兆6,000億円規模で実施するとし、韓国は給与支払いが困難になっている企業に3兆ウォン(約2,600億円)の支援を約束している。マレーシア、インドネシア、シンガポールでも類似の対策が提示されている。

銀行から企業への低利融資は、銀行が企業倒産リスクの多くから保護される政府保証が備われば一段と有効に機能すると考えられる。

イングランド銀行(中央銀行)が市中銀行から企業への低金利融資を促進する新しい資金提供策を発表したことを受けて、英国政府はGDP比15%に相当する3,300億英ポンド(約44兆円)規模の融資保証基金の創設と、深刻な影響を受けているセクターを対象とする減税を約束した。

フランスのマクロン大統領は「いかなる企業倒産も防ぐ」としてGDP比12%相当の3,000億ユーロ(約36兆円)の基金を設けることを約束し、企業ローンの保証、公共料金支払いと賃貸料の支払い猶予を支援する方針を示した。

スペインでも同じような政策が発表され、ドイツでは大手州立銀行の融資能力を強化することを通じて少なくともGDP比15%前後に相当する5,000億ユーロ(約59兆円)規模の中小企業融資が行われることと、納税の遅れも容認されることが発表された。

イタリアでは、政府と国内大手銀行とが連携して小規模企業の融資返済を猶予することが計画されている。それによって既存のローンに政府保証が付されるだけでなく、不良債権の認識に関する規則も緩和される見通しである。

欧州中央銀行(ECB)は、こうした各国政府の計画を有効に機能させることを念頭に、市中銀行への支援策を段階的に強化するとして、借入金利を中銀預金金利よりも低く誘導することや、企業への融資を増やす銀行にはより有利な条件で流動性を提供する対策などを打ち出している。

また米政府は、感染拡大に影響されている航空産業や直近の原油価格の急落が打撃となっているシェールオイル生産企業に対する支援額を引き上げ、少なくとも500億米ドル(約5.4兆円)とした。

さらに米国連邦準備制度理事会(FRB)は、コマーシャルペーパー市場に最大1兆米ドル(約107.5兆円)規模の支援を行うことで企業への短期クレジットを十分に下支えするとしている。

2. 家計所得への支援

世界各国の政策当局のもう一つの喫緊の課題は、新型コロナウイルスが消費者所得に与える打撃を抑えることであり、住宅ローン返済や食費、公共料金支払いといった主要な出費を家計がまかなえる状態を担保することである。その対応策としては、直接的現金給付や減税、主要出費項目の繰り延べなどが挙げられる。

2月に香港政府は、新型コロナウイルスが労働者給与に及ぼす影響の緩和策として、成人1人当たり10,000香港ドル(約13万9,000円)の現金支給を実施した。タイ、シンガポール、オーストラリアも低所得家計を対象に類似の施策を提示している。

また、米政府は、数百万人規模の成人を対象に1人当たり1,000米ドル(約10万8,000円)の現金給付、連邦税課税の延期、傷病手当の積み増しなどを検討している。

一方、イタリア政府が計画しているローン返済猶予は住宅ローンにも拡大され、日本と韓国では学校休校措置によって自宅にとどまらざるを得なくなった働く親に対する給与補償を行う。