欧米半導体装置メーカー、売上見通しの修正・撤回相次ぐ

ASMLも下方修正、需要旺盛も供給制約で

最終需要はリモートワークの進展などクラウド分野を牽引役に決して悪くはない

 ASML、アプライド マテリアルズ(AMAT)、ラムリサーチなど欧米の主要半導体製造装置メーカーの売上見通しの修正・撤回が相次いでいる。新型コロナウイルスの感染拡大により、外出制限や物流インフラの停滞、部材調達が困難になっているためだ。新型コロナの影響でコンシューマー製品を中心に最終需要が落ち込みを見せるなか、在宅勤務/テレワークの急速な進展に伴い、半導体市場はクラウド需要が大きな伸びを見せており、今回の装置メーカー各社の修正は需要減よりも供給面での制約が要素としては大きくなっている。

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カリフォルニアの屋内退避指令で業務停滞

 米系大手のAMATとラムリサーチが、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、直近の売上高見通しを相次いで撤回している。本社があるカリフォルニア州での外出禁止令に加え、ラムリサーチの場合は生産拠点(委託先)があるマレーシアでも生産活動の停止措置が出たことで売り上げのめどが立たなくなってきた。今後、両社のように装置生産の停滞や部材・パーツ調達が困難になるケースも想定され、一部で引き合いが増している顧客企業の納期に間に合わない事態も出てきそうだ。

 ラムリサーチは当初、20年1~3月期の売上高見通しとして、28億ドル±2億ドル(中心値は前四半期比8%増/前年同期比15%増)を計画。ファンドリー/ロジック分野の投資が引き続き好調に推移する見通しであることから、高い水準を見込んでいた。しかし、新型コロナの影響から3月17日付で白紙に戻した。

 3月16日以降、シリコンバレーを含むカリフォルニア州の複数のベイエリアでは屋内退避指令(Shelter in Place)が発動。本社のあるフリーモントでの業務ならびに、エッチング・成膜装置の心臓部ともいえるチャンバーの生産を行うリバモアの生産活動を一時的に停止せざるを得ない状況となっている。さらにマレーシアでも大手EMS(フレックス)を活用して装置の最終組立を行っているが、同国でも最低限のインフラを除くすべての経済活動を制限する活動制限令が出されたことで顧客への出荷が行えない状況になっている。

 その後、マレーシア政府は条件付きで一部製造業の操業を認める例外措置を発表している。これには食品や医療のほか、化学品や電気電子産業も含まれており、従業員の減員や衛生環境の整備など一定の条件を満たすことを条件に操業の継続を許可するもの。ただ、マレーシアでの生産活動停止を回避できたとしても、操業度が落ちることは確実だ。加えて、部材・パーツの調達も今後支障が出てくることが想定されるため、影響は不可避との見方が大勢だ。

 AMATも3月23日付で、20年度第2四半期(2~4月)の売上高予想を取り下げた。具体的な修正ガイダンスはラムリサーチ同様に開示しなかった。

自社工場持つ企業も間接的な影響

 AMATやラムリサーチのように、装置の最終組立工程でアウトソーシングを活用するのは、海外の半導体製造装置メーカーに多い。日系企業のアドバンテストもメモリーテスターは国内の自社工場での生産がメーンとなっている一方で、過去に買収した旧ヴェリジーのテスターはEMSでの生産にほぼ依存している。

 仮に自社工場で生産しているケースでも、同業他社が大幅な納期遅延を起こせば、顧客の投資スケジュール自体が変更を余儀なくされるため、間接的な影響を受けることになりそうだ。

 新型コロナが猛威をふるうなかでも、顧客である半導体メーカーの投資意欲は意外にも旺盛だ。スマートフォンなどのコンシューマー製品は需要低下が顕著だが、データセンターなどのクラウド需要は対照的に増加している。米IT企業大手のデータセンター投資再開に加え、足元では在宅勤務/リモートワークの一斉導入によってクラウド/ストレージ需要が増している。需要拡大を見据えて、サムスン電子などのメモリー大手はDRAMの大型投資を敢行する構えだ。さらに一部顧客では製造装置の生産停滞・遅延を考慮して、装置メーカーへの発注を前倒しで行うケースも出てきた。

 中国ローカル顧客の投資延伸などによるマイナス影響はあるものの、DRAM大型投資といったプラス影響が予想以上に大きく、半導体製造装置メーカーにとっては足元の旺盛な需要にどう対処していくかが、現状での優先課題となっている。

ASMLも下方修正を発表

 オランダに本社を構える露光装置最大手のASMLも3月30日になって、20年1~3月期の業績アップデートを行っている。同社は当初、1~3月期に31億~33億ユーロの売上高を見込んでいたが、これを24億~25億ユーロに引き下げた。

 7億~8億ユーロの修正額となっているが、この要因について、出荷・移動制限により中国・武漢をはじめとする一部顧客への装置出荷が遅れていること、サプライチェーンの一時的な問題などを挙げている。また、一部顧客では不確実性の高まりから、EUV装置を通常のFAT(Factory Acceptance Test=最終承認テスト)前に出荷することを要請しており、これにより顧客による最小承認は顧客サイトへの据え付け完了後に行われることになり、売上計上のタイミングが遅れることも修正要因としている。ただし、同社ではこの修正額については4~6月期、もしくは7~9月期にスライドしてだけであり、年間ベースで需要に変化はないことも強調している。

電子デバイス産業新聞 副編集長 稲葉 雅巳

参考記事

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稲葉 雅巳(電子デバイス産業新聞)

2005年(株)産業タイムズ社入社、以後、電子デバイス産業新聞(旧:半導体産業新聞)編集部記者として、半導体を中心にエレクトロニクス業界の取材活動を続ける。2015年から副編集長。