2016年2月以降、日本でもマイナス金利が導入され、低金利時代に一層拍車がかかっています。他の先進諸国においてもこの十年間、軒並み低金利が続いていると言っても過言ではないでしょう。銀行にお金を預けたり、国債を買ったりしても資産は増えず、リターンの良い投資先を求めている方も多いはずです。

そんな中、自然と注目が集まるのは依然として高い金利水準を保つ途上国・新興国市場ではないでしょうか。中でもとりわけ高い金利水準を保っているのが、マイクロファイナンス機関を始めとする、途上国・新興国の農村地帯における金融機関です。

たとえば、マイクロファイナンス機関の金利は世界平均29%と、日本の金融機関からすると考えられないような数字を保っています。

高金利の2つの側面:需要側と供給側

この高金利には2つの側面があると考えられます。

1つ目は、途上国・新興国の農村地帯における高い資金需要です。途上国・新興国の農村地帯にはこれだけの高金利を払ってもお金を借りたい人がいる、また、この金利以上の利益を生み出せる顧客が多くいる、ということです。こうした地域には経済成長の余地はまだまだ残されています。

これは嬉しいニュースなのですが、問題はもう1つの側面、供給側の論理です。

このような高い金利を目にすると、ともするとマイクロファイナンス機関は暴利を貪っていると思われるかもしれませんが、そうではありません。

交通インフラが整っておらず、顧客の信用程度に関する情報が少ない途上国・新興国の農村地帯においては、ローンの回収や顧客の信用程度の把握に膨大なコストがかかります。この高コストが金利に跳ね返っているのです。

このコストを圧縮することができれば、金利を適正なレベルに抑えられ、より多くの人に融資が行き渡ります。また、金融機関は顧客数を伸ばすことができるので、より高い社会的効用を生み出せます。

それに貢献する可能性を持っているのがデジタル化です。

供給側の問題を解決するデジタル化

まず、途上国・新興国の農村地域における金融機関は、ローンの実施や回収を携帯電話の電子マネー等を通じて行うことで、大幅にコストを削減できます。

また、さらに重要なのは、信用情報の把握です。

従来は、顧客の信用情報の把握は、ローンオフィサー(顧客との窓口になる営業担当)の感覚や、顧客への口頭インタビューから得られる情報に頼っていたため、正確な顧客の信用程度の査定が難しく、顧客の信用程度をベースに金利を設定するようなことはできませんでした。

しかし、近年、携帯電話の普及やデジタル化が進み(携帯電話の普及率は途上国・新興国においても非常に高い)、顧客データの解析(たとえば携帯電話の通話料や公共料金の支払履歴、フェイスブックの投稿履歴など)によって、より正確な顧客の信用情報の査定が可能になっています。

金融機関の将来性はデジタル化にあり?

このように、途上国・新興国の農村地域における金融機関はデジタル化を進めることで金利を最適化し、より多くの顧客にサービスを提供することが可能になります。そうすることで、経済成長の余力をあますところなく活用できるようになります。

途上国・新興国の農村地域における金融機関(または、これらの機関へ投融資を行っている機関)への投融資を考える場合には、これらの機関が適切にデジタル化されているか、適切なシステムを導入しているか、経営陣がデジタル化の重要性を認識しているか等が大事なポイントとなってくるでしょう。

参考文献:
responsAbility-Microfinance Maket Outlook 2016
世界情報通信事情-携帯電話事情

 

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