娘の顔を見ると、目にいっぱい涙をためながらも唇を固く結び、必死に泣くまいとこらえているのです。

「痛いでしょう? 我慢しなくていいよ」と伝えると
「これから私の傷を治そうと血小板が頑張ってくれるから、私も頑張る」と言うのです。

当時娘が愛読していたのが『はたらく細胞』というマンガ。人間の体内の細胞を擬人化したキャラクターたちの日常を描いたヒット作です。このマンガを読んでから娘は細胞に興味を持ち始め、「NK細胞って〜」とか「マクロファージは〜」など、私たちが知らないような細胞の名前やその役割をすらすら話してくれるようになりました。

そして今回も、小さな女の子に擬人化された血小板が頑張って傷を修復してくれる様子を頭にイメージし、自分も痛みと頑張って戦わなきゃ…と思ったのだとか。

また、このマンガのおかげで、去年の暑い夏の時期に、娘は帽子をかぶったり、こまめに水分補給をしたりと熱中症対策を自ら進んで行ったのです。

娘いわく「熱中症になったら体の中の白血球や赤血球が苦しむから」。親が口うるさく言うよりも、一冊のマンガのほうが効果的だったのですから…いやはや何とも言えません。

人生とは何か?を考えるきっかけに

小説を読むメリットのひとつとして挙げられるのが、「別の人生を追体験することで自分の経験以上のものが得られる」ということ。しかし、これは何も小説に限ったことではなく、マンガであってもじゅうぶんにその体験は享受できるのです。