COVID-19による「アジア人差別」はトランプの再選に好都合か

トランプ大統領が過度のゼノフォビアであることは周知の事実。COVID-19の拡大はトランプ大統領にしてみれば、「ほら、見ろ!異人種はろくなことをしない」と言わんばかりの出来事でしょう。

トランプ大統領が2016年の大統領選挙で勝利を収めた理由は、複雑ですが、彼の支持者の特徴をざっくり分けると両極端な2通り。

一方は、「減税」で得をする富裕層や企業。もう一方は、グローバリズムやエリート支配層体制の反対を訴えるブルーカラー層の白人(その多くは白人至上主義)

この3年間、前者にとっては確か有利だったと言えるでしょう。しかし経済学者のロバート・ライシュ元労働長官は、「一般の労働者層には潤った企業からの恩恵はほとんど降りてくることはなく」、むしろ「大企業への過剰な税制優遇制度のせいで、一般労働者層の生活を向上させることに失敗している実状は日々明らかになっている」とThe Guardianに掲載した記事の中で指摘しています(※1)。

後者のブルーカラー層の白人支持者(特にトランプ氏にとっての重要な州)の中にもそういった不公平や経済ナショナリズムの失敗に苛立ちを感じ始めている人も多く、もはや反支配層を掲げる説得力もありません。差別主義だけではトランプ大統領の再選は難しいだろうと言われていました(※1)。

しかし今回のCOVID-19は、トランプ大統領にとっては人種差別扇動のきっかけになり、「なぜ彼の支持者達がトランプ大統領を支持したのか、それは、『トランプが自分達が切望する差別的な毒舌を吐く差別主義者だから』ということを思い出させた」(※2)ようです。もう一度、自分の必要性をアピールするには有利なことと言えるかもしれません。

経済面の向上では結局裏切られたブルーカラー層の白人が、それでも感情的に差別主義に魅力を感じるのならば、トランプ大統領の再選を可能にするかもしれません。

【参考】
(※1)“How Trump has betrayed the working class”The Guardian
(※2)“Trump goes full racist, of course, to cover up coronavirus lies and incompetence”salon

美紀 ブライト