ソニーは、先ごろ発表した2019年度(20年3月期)第3四半期決算で、イメージング&センシング・ソリューション事業(I&SS=半導体事業)の通期業績見通しを再び上方修正した。上方修正は今期2度目。一方で、生産効率のアップで一部を抑制できたとして、設備投資の予定額をわずかに引き下げた。
イメージセンサー売上高上積み
19年度のI&SS売上高を1兆400億円から1兆900億円(うちイメージセンサーは8900億円から9400億円)へ、営業利益を2000億円から2300億円へ、それぞれ500億円ずつ上方修正した。モバイル用(主にスマートフォン用)イメージセンサーの販売数量増と製品ミックスの改善が寄与する見込みだ。
ただし、新型コロナウイルスの感染拡大が、今回の上方修正を打ち消す規模の大きな影響を及ぼす可能性が否定できないと考えており、引き続き情報収集と影響の把握に努める。
引き続き生産能力を増強
10~12月期のI&SS事業の業績は、売上高が前年同期比29%増の2980億円(うちイメージセンサー2616億円)、営業利益が同62%増の752億円となった。同様に、モバイル用イメージセンサーの販売数量増と製品ミックスの改善が貢献した。次の成長ドライバーとして期待するToF(Time of Flight)センサーは、まだ小規模ながら順調に立ち上がりつつあると説明した。
10~12月期には、イメージセンサーの月産能力を前四半期末の10.8万枚(300mmウエハー換算)から11.5万枚まで引き上げたが、相変わらずフル稼働が継続した。20年1~3月期には12.4万枚まで引き上げる予定だが、フル稼働が続く見通しだ。
また、来期に備え、当初は20年1~3月期にウエハー5万枚分の「戦略在庫」を積み上げたい意向だったが、「19年度内にすべて出荷する予定」と述べ、引き続き需要が旺盛であることを強調した。
中長期目標を維持
19年度の設備投資額は、生産効率のアップで一部抑制できたとして、当初計画の2800億円を2650億円に減額した。しかし、18~20年度に累計7000億円(18年度実績は1463億円)を見込んでいる投資計画には影響はなく、当初の計画を変えていないと説明した。
同社は現在、イメージセンサー新工場を長崎工場内に建設中。規模や生産能力、稼働時期は公表していないが、21年度初頭に稼働させるとみられる。これにより、19年5月のIR Dayで中長期目標に掲げた「25年度のイメージセンサーの金額シェア60%」「I&SS分野としてROIC(投下資本利益率)20~25%の達成」(18年度実績は15%)を目指す。
20年度は、特に上期にイメージセンサーの強い需要を想定しているが、競争環境も激しくなると予測している。戦略在庫を積み上げられないことに加え、画素サイズ0.8μmのイメージセンサーが量産2年目に入り、競合メーカーのキャッチアップと単価下落があると想定する。
電子デバイス産業新聞 編集長 津村 明宏