2019年は「老後2000万円問題」をきっかけに資産形成への関心が高まり、投資家の裾野が広がりました。そして、投資初心者でも手がけやすい金融商品が「投資信託」です。今回は、投資信託の仕組みやメリット・デメリットについて解説します。
投資信託の仕組み
投資信託とは、大勢の投資家から資金を集め、株式や債券・不動産などに投資して運用する金融商品で、「ファンド」とも呼ばれています。
通常、株や債券などに投資するにはまとまった資金が必要になりますが、投資信託であれば少額で投資・運用することができます。ネット証券を利用すれば、100円から購入することも可能です。
投資家から集めた資金をどのような対象に投資するかは、投資信託ごとの運用方針に基づき、ファンドマネージャー(運用担当者)が決定します。投資対象は国内だけではなく、海外の金融商品を選択することも可能です。
投資家は投資信託の中身を確認して商品を決め、定期的に運用状況を確認するだけでいいので、投資初心者にとってはじめやすい金融商品といえるでしょう。
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株式投資信託と公社債投資信託の違い
投資信託は大きく分けて、債券を中心に運用する「公社債投資信託」と、株式を中心に運用する「株式投資信託」に分類できます。公社債投資信託は、株式を組み入れることができません。債券を中心に運用しているファンドでも、株式が組み込まれている場合は、株式投資信託になります。
ただ、投資信託協会によれば、現在の公募投信(一般の投資信託)では、株式投資信託の本数が5,961本、公社債投資信託が99本と、株式投資信託がほとんどです。
インデックスファンドとアクティブファンドの違い
株式投資信託は、運用手法により「インデックスファンド」と「アクティブファンド」の2種類に分類できます。
インデックスファンドとは、日本株でいえば、日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)、米国株式であれば、S&P500、世界株式であればMSCIコクサイなどの指数と連動することを目指して運用するファンドです。日経平均株価などの指数は、テレビのニュースなどで目にする機会も多いので、値動きがわかりやすいというメリットがあります。
個別銘柄の選定や情報収集の手間がかからないうえ、頻繁に銘柄の入れ替えをする必要がないので、アクティブファンドよりも運用コスト(信託報酬など)が安い傾向にあります。
アクティブファンドとは、運用の専門家であるファンドマネージャーが、自らの相場観や運用方針によって銘柄を決定し、あらかじめ定められたベンチマーク(日経平均株価やTOPIXなどの指数)を上回ることを目指すファンドです。
どのような市場や銘柄を選んで売買するかは、それぞれのファンドによって異なります。インデックスファンドは対象となる指数に連動することを目指すので、ファンドの運用成績に大きな違いはありませんが、アクティブファンドでは運用するファンドマネージャーの手腕により、実績に大きな差がでます。
アクティブファンドを選ぶときは、目論見書で運用方法や運用方針を必ずチェックするようにしましょう。
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インデックスファンドの人気が高まっている背景
近年、インデックスファンドの人気が高まっています。三菱アセット・ブレインズによると、2019年末のインデックスファンドの純資産(確定拠出年金やラップ口座専用は除く)は50兆9,500億円と、43兆9,500億円だったアクティブファンドをはじめて上回りました。
「老後2000万円問題」を契機に投資家の裾野が広がり、つみたてNISAやiDeCoなどの非課税優遇制度でも、コストの安いインデックスファンドの人気が高まったというのが背景にあります。
2019年の9月にSBIアセットマネジメントが設定した「SBI・バンガード・S&P500インデックスファンド」の信託報酬が、追加株式投信で最低の0.0938%と0.1%を切るなど、インデックスファンドの信託報酬引き下げ競争も激化しています。今後も、インデックスファンドの人気は続くでしょう。
投資信託の3つのメリット
その1:少額からはじめられる
投資信託の最大のメリットは、少額からはじめられるということです。ネット証券を利用すれば、100円から購入可能です。投資信託は多くの投資家から資金を集め、一つにまとめて運用を行うので、一人ひとりの資金は少なくても効率のいい運用ができるのです。
その2:株式や債券など複数の資産に分散投資できる
投資信託は、国内外の株式や債券・不動産などさまざまなものに投資可能です。資産をいくつかの商品に分けて投資することを「分散投資」といいます。すべての資金を一つの金融商品に集中させると、運用がうまくいかなかった場合、マイナスの影響が資産全体に及ぶ可能性があります。
しかし、株や債券など値動きの異なる複数の資産に分散させておけば、リスクを軽減させながら、安定した収益を期待することができるのです。
その3:投資のプロに運用を任せられる
株式や債券などの投資に関する知識を、個人で身につけることは大変です。しかし、投資信託なら経済や金融に関する知識を身につけた「ファンドマネージャー」と呼ばれる専門家が、投資家に代わって運用します。
個人の投資家は銘柄選びやタイミングに悩まなくてよくなり、運用にかかる手間が省けるというメリットがあるのです。
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投資信託の2つのデメリット
その1:コストがかかる
投資信託は、購入時に買付手数料(販売手数料)がかかります。また、運用のプロに任せて投資を行うため、運用管理費用(信託報酬)などのコストがかかります。
買付手数料は、ファンドによって異なりますが、投資金額に対して1~3%程度かかるのが一般的です。ただ、インデックスファンドなどでは、「ノーロード」という買付手数料がかからないファンドもあります。
信託報酬は、投資信託を保有している間、毎日かかるコストです。信託報酬もファンドによって異なりますが、純資産総額(基準価額×受益権口数)に対して0.5~2%程度かかります。
投資信託を選ぶときは騰落率などの運用成績を重視して選ぶことになりますが、買付手数料や信託報酬などのコストも合わせて考えるようにしましょう。
その2:元本保証ではない
投資信託は元本が保証された金融商品ではありません。投資信託の基準価額(値段)は市場環境によって変動します。投資信託を購入した後に運用がうまくいって利益を得られることもあれば、運用がうまくいかずに投資した額を下回って損をすることもあるので注意が必要です。
まとめにかえて
投資信託は少額から始められ、投資のプロに運用を任せられるというメリットがあります。しかし、元本保証ではありませんし、信託報酬などの保有コストがかかります。必ず余裕資金で運用するようにしましょう。また投資初心者の方は、コストが安く値動きがわかりやすい「インデックスファンド」から運用を始めることをおすすめします。
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参考資料
- 投資信託協会「投資信託の全体像(純資産総額・ファンド本数)直近データのバックナンバー」
- 日本経済新聞「国内投信、指数型が初の過半に 低コスト志向で」
- NIKKEI STYLE「止まらない投信安売り競争 投資家に思わぬしわ寄せも」
LIMO編集部