昨年6月以降、北京や香港政府への抗議デモが続く香港では、今回のことが新たな反発の起爆剤となる恐れがある。市民の間では、新型コロナウイルスに対する香港政府への不満が広がっており、深センとの国境を完全に封鎖し、中国人の流入を停止せよ!と求める香港人の声が高まっている。背景には、香港の高度な医療を求めて、中国人が押し寄せてくるという警戒感があるという。
そして、フランスでは、アジア系への差別や嫌がらせが増えているという。パリなどでは、「お前は感染している」、「近づくな」といった罵声や嫌がらせも発生し、現地に住む中国系フランス人への風当たりも強まっているという。
日本人にとっての”もう1つのリスク”
新型コロナウイルスの感染拡大は新たな対立を生んでいる。だが、日本人へのリスクという視点から考えると、アジア系への差別や暴力は大きな問題だろう。
同じアジア系であれば、日本人か中国人、韓国人を区別できることは多い。しかし、非アジアの世界、たとえば、アフリカや欧州の人々がそれを見分けることができるだろうか。
現地の多くの人の判断材料は、おそらく、髪の毛が黒い、目が黒い、肌が黄色いくらいであろう。同じアジア系ということで意図的ではないにしても、現地に滞在する日本人が差別や暴力に巻き込まれる可能性もあることには注意が必要だ。
和田 大樹