国産SNSからスマホゲームに転換し大躍進を遂げたミクシィ
ミクシィ(2121)は、2004年2月にSNS「mixi」の運営を開始、2006年9月に東証マザーズに上場しました。SNSの草分けと言える企業で、順調に成長を続け2008年3月期から2009年3月期にかけて業績がピークをつけます。しかし、その後スマホの普及が進んだこと、他社がゲーム課金にビジネスモデルの舵を切る中で同社がやや出遅れたこと、米フェイスブックの日本参入などから、2014年3月期まで業績がじりじり低下していきました。
転機になったのは2013年10月、ユーザー課金型のスマホネイティブゲーム「モンスターストライク」の運営開始でした。2014年3月期は経常利益が2億円台まで減少しましたが、翌2015年3月期には527億円とJカーブを描いて大躍進を遂げます。そして、2016年3月期は経常利益が947億円にまで急伸しました。大変貌と言える成果です。
なお、2017年3月期の会社予想(2016年5月10日発表)によれば、売上高は対前年比+4%の2,180億円を予想していますが、新規ゲームの開発、メディアミックス、各サービスのプロモーションを織り込み、経常利益は同▲15%減の800億円となっています。
今後のポイントは1,200億円を超える軍資金の活用法
同社のIR資料によれば、モンスターストライクの世界累計利用者数が2016年4月29日に3,500万人を突破しています。この1年を見ると、国内の利用者の増加よりも海外の利用者増が順調です。同社としてはこのタイトルの経済的寿命を最大化すること、海外で市場を開拓することが必須の方針になります。
とはいえ、新しいタイトルやサービスも成功させていかなければなりません。幸い同社のバランスシートには2016年3月末現在1,263億円の現預金があり、有利子負債はありませんので、戦いを続ける軍資金には不自由しないと言えます。ポイントは、この軍資金をどれだけ有効に使うことができるかにあると言えるでしょう。
チャート節目4,000~4,200円の攻防。上下に大きく振れる可能性あり
では株価チャートを見てみましょう。
筆者にとっては大変興味深いチャートです。まず同社株は2007年後半に、いったん高値4,200円を付けました。上場後、最初の業績のピークの少し前のことです。その後は業績が伸び悩むのと同じ足取りで、株価は2013年秋まで長期のじり安になりました。
次の株価の転機は2013年秋から冬にかけてで、モンスターストライクの登場を好感し急騰し始めます。株価もさることながら売買株数が急増し、投資家の認識が一気に変わっていった様子がよくわかります。そして株価はロケットが飛ぶが如く上昇し、2014年夏に4,200円を突破、2014年冬に6,970円を付けにいきます。
先ほどお話したように業績のピークは2016年3月期ですが、株価は2014年冬以降6,970円を超えることはありませんでした。2015年6月に6,670円まで上昇しましたが、ここで反落してしまいました。そしてこの頃から、株価はじり安基調に入り、最近では株価は4,000円を挟んで行ったり来たりしています。
”同社の足元の収益力と現預金を見ると売り込むほど株価は高くないが、2014年冬以降の下落トレンドを上抜けるには材料が不足する”、そんなもやもやする投資家心理をチャートは語っているようです。チャートを見る限り、いましばらく4,000円から4,200円あたりを中心に一進一退を続けそうですが、このレンジを離れる材料が出た時には、ポジティブ・ネガティブいずれのケースでも株価は大きく水準を変えることになりそうです。
このことを踏まえると、やはり1,200億円の軍資金の行方が注目ポイントになりそうです。
皆様の運用の参考になることを願っています。
LIMO編集部