昼過ぎにやってきた彼は無言のまま玄関を上がり、真っすぐ寝室に向かったのです。筆者はその迫力に多少気後れしながらも、彼とK子の後ろに続きました。
『ガタッ…ゴトゴト…』寝室に入り、彼はベッドのヘッドボードの引き出しを明けました。
そして、そこから取り出したのは…避妊具でした…。彼はその数を数え『変わってないみたいだな』と言ったのです。
その言葉を聞いたK子の目は、一瞬にして涙でいっぱいになっていました。顔を上げてはいましたが、目線は彼の方を向くことはできないようでした。
「もう帰ってください!!」K子の前に立ち、思わず筆者は言ってしまいました。あまりにも…あまりにもひど過ぎる仕打ちだと思い、言わずにはいられなかったのです。
『俺はな、お前を刺して死のうと思ったよ!それほどお前のことを好きだって思う男がいること、忘れんな!』彼はそう言って、まとめて置いてあった他の荷物は持たず、帰ってしまったのでした。
その後…
その後、K子はとても落ち込んでいましたが、仕事は休むことなく続けていました。彼と顔を会わせた時には、他の人と変わりないように接していたと言います。
ですが、それが悪かったのか…別れてから1年ほど経った後、病院内でたまたま話をする機会があり、その時に『まだ好きなんだろう?俺のこと』と言われたというのです。
しかし彼は離婚したとも、別居したとも、耳にすることはなかったそうです。逆に、長期休みに家族で海外旅行に行った…とか、お子さんの入学式があった…という話は、流れてきたそうです。