この記事の読みどころ

  •  ホンダ株の決算発表翌日の出来高は、他社が軒並み倍増以上へ増える中、わずかな増加に止まりました。
  •  ホンダ株に対する関心が低下し、コア銘柄ではなくなった可能性があります。
  •  一連の“タカタ問題”への後手に回る対応に投資家が見切りをつけたのかもしれません。

決算発表は株式市場の大きな恒例イベント

近年、決算発表後に株価が大きく動くケースが多く見られます。その中でも、4月末~5月上旬にかけて行われる本決算の発表後は、他の四半期決算以上に多く見られるような気がします。やはり、終わった1年間の実績もさることながら、新たな事業年度に対する会社計画には大きな注目が集まるものです。

そして、その発表された実績や計画に対するサプライズで、発表翌日の株価は大きく変動します。今に始まったことではありませんが、様々な市場参加者(個人投資家、機関投資家、事業法人等)にとって、決算発表は大きなイベントになっていることは間違いありません。

“サプライズなし“がサプライズとなる

そして、仮に決算発表の内容にサプライズがなくとも、翌日の株価が大きく動くこともめずらしくありません。これは、決算発表前から多くの投資家が色々な売買の“仕込み”を行っているため、その“仕込み”の解消だけでも、株価が動くようになっているのです。

言い換えると、『“サプライズなし”がサプライズ』ということですが、ほぼ例外なく株式の売買高(出来高)が大幅に増加します。特に、短期筋のヘッジファンドの存在感が高まったここ数年、その傾向が強くなっていると見られます。

ホンダの決算発表で異変が発生?

今回の決算発表では、円高進行の影響が大きな注目点だったため、自動車メーカーには例年以上の関心が寄せられたと見ていいでしょう。

ところが、大手自動車メーカーの1つであるホンダ(7267)の決算発表で“異変”が起きました。それは、決算発表翌日にもかかわらず、株式の出来高がほとんど変わらなかったのです。決算発表翌日としては、売買が非常に少なかったということです。

“それがどうした?”、“たまたまだろう?”と思われる方も少なくないかもしれません。しかし、ホンダを含む自動車株の多くは、決算発表の翌日は、ほぼ例外なく前述したような要因で株式の売買高(出来高)が増え、株価が動くケースが見られています。結果的に株価の騰落率が小さく終わったとしても、出来高は大きく増えるのが“恒例”と言えます。

他の自動車株は発表翌日に出来高が急増

事実、今回の決算発表日と翌日の出来高を比較すると、日産自動車(7201)が+51%増、トヨタ自動車(7203)が+110%増、マツダ(7261)が+187%増、スズキ(7269)が+107%増、富士重工(7270)が+97%増となっており、日産以外は全て倍増、あるいは、倍増以上になっています。

その日産も、決算発表日に三菱自動車(7211)との資本提携ニュースが流れたことで出来高が膨らんでおり、決算発表前日と発表翌日を比べると約3倍増へ大幅増加しています。こうした決算発表翌日の出来高が急増するのは、今回に限ったことではありません。

ホンダ株の出来高はわずかしか増えていない

しかし、今回のホンダはわずか+16%増に止まりました。しかも、その前後を見ても出来高が膨らむことはなく、むしろ減少気味となっています。

確かに、ホンダの決算発表翌日の5月16日は相場全体も薄商いでしたので、その影響が多少はあるでしょう。しかし、それは他社の決算発表でも起きた事象です。特殊要因とは言い難いと考えます。

つまり、ホンダ株に対する投資家の注目度が、過去にないくらい大きく低下した可能性があります。少し大げさな言い方をすると、自動車株のコア銘柄ではなくなったかもしれません。

参考:ホンダの過去2年間の株価推移

投資家がホンダの経営に愛想が尽きた可能性

ホンダはこの約1年半に渡り、一連の“タカタ問題”によるリコール対応に追われました。何度もリコール費用を積み増したにもかかわらず、問題解決には至らずに収益悪化を余儀なくされてきました。

今回、ホンダは、この問題に一応の決着を付けたと主張していますが、株式市場は懐疑的なように見えます。そして、問題解決で後手後手に回ったホンダの“経営(マネジメント能力)“に対して、多くの投資家の愛想が尽きたのかもしれません。

筆者の懸念が杞憂に終わることを望みます。

 

LIMO編集部