今回は英国のISA(Individual Savings Account、個人貯蓄口座)についてみていこうと思います。
1999年に導入された英国のISAは度重なる制度の改善を経て、2017年4月(いずれも4月5日に終わる年度、以下同様)の口座開設数は2,119.7万口座に達しています。これは英国の18歳以上人口5,180万人(2018年推計)の40%が口座を開設していることになります。
また2018年の年間資金拠出額は預金型ISAで3,980万ポンド、2009年比3割増、株式型ISAで2,870万ポンド、同3倍になっています。
ISA利用者数は日本とあまり変わらない
ただ、口座を開設している人がすべて資金を入れているわけではありません。2017年4月までの1年間に口座に資金を拠出したのは1,068.4万人で、口座開設者数の半数にとどまります。日本のNISAでも稼働口座比率が半分強ほどに留まっているとの批判もありますが、英国にも似たところがあるものです。
また、日本のNISAは株式と投資信託が投資対象となっていることから英国の株式型ISAと同じといえます。
前述の英国ISAへの資金拠出者1,068.4万人のうち、株式型ISAへ資金を拠出した人(預金型ISAと併用者を含む)は258.9万人で、預金型しか対象にしていない人809.5万人と比べると大幅に少ないことがわかります。この人数は英国の18歳以上人口の4.9%にとどまります。
日本のNISAの口座数が1,308.9万口座(2019年6月)で20歳以上人口の12.5%。その半数しか実際に資金を入れていないとしても、実は日本の普及度合いは英国以上とみることもできます。
重要なのは制度の利用度合い
しかし、最大の課題は制度としての利用度合いにあたる残高でしょう。英国ISAの残高は2018年4月現在6,080.2億ポンドで、1ポンド140円で換算すると85兆円になります。うち株式型は3,373.7億ポンド、同47兆円、預金型は2,702.9億ポンド、同38兆円といったところです。
これに対して、日本のNISAの残高は、金融庁が発表している「2014年から2019年の利用枠で買い付けがあった金額の合計」を近似値としてみると、その額は17兆円です。英国株式型ISAの3分の1強の水準にとどまっていることがわかります。
また英国の個人金融資産6.7兆ポンド(2017年)に対して、株式型ISAは5%に相当する規模ですが、これを日本の個人金融資産1,800兆円に当てはめてみると、日本のNISAの残高は90兆円あっていいと試算できます。まだまだ残高における日英の差は大きいと言わざるを得ません。
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合同会社フィンウェル研究所代表 野尻 哲史