ついに、年金改革法案成立!
ブラジルでは過度に手厚い年金制度が、社会保障支出を増大させ、財政問題の構造的な原因となっていましたが、歴代政権は、過去20年以上にわたり、国民の痛みを伴う改革を進めることができずにいました。ところが、2019年に発足したボルソナロ政権は、約8ヶ月で年金改革法案を成立させました。
新たな年金制度では、50代だった最低受給開始年齢を、男性65歳、女性62歳に引き上げ、GDPの約12%に当たる約8000億レアル(約21兆円)の歳出削減効果が今後10年間で見込まれています。年金改革法案可決を受け、ボルソナロ大統領は「この勝利は我々の国を良い方向へ飛び立たせるための道を開く」と述べました。
ブラジル株式は史上最高値更新
経済・政治の両面において、不確実性への懸念が大きく高まった2019年ですが、世界的な金融緩和と景気回復期待に支えられ、新興国株式は好調なパフォーマンスを示しました。その中でも、ブラジル株式は年初来30%を超える上昇、ついにボペスパ指数は11万ポイントを超え、史上最高値を更新しました。
さらに、ボルソナロ政権による改革と力強いファンダメンタルズに支えられ、企業収益の堅調な伸びが予想されています。長期的に株価は企業業績に連動する傾向にあるため、2020年もブラジル株式市場の上昇トレンドが続くことが期待できます。
緩和的な金融政策が、経済成長を後押し
2019年は、米国をはじめとする多くの国々の中央銀行が、景気を重視した金融政策への転換に踏み切り、利下げを進めました。ブラジル中央銀行も2019年に4回の利下げを実施し、12月には全会一致で、過去最低の4.5%としました。
緩和的な金融政策は景気を刺激し、足元ではすでに経済成長の回復が確認されていますが、一方では、インフレ率はこの数年で大幅に低下し、インフレ目標圏(4.25%±1.5%)の中央値を下回り、安定的に推移していることから、追加利下げ余地も残されていると見られています。
さらなる改革で、注目が集まるブラジル市場
ボルソナロ政権は今後、税制改革、行政改革、国営企業の民営化、インフラ投資計画など、引き続き改革に積極的に取り組む方針を示しています。2018年のブラジルのビジネス競争力総合ランキングは109位。特に税金制度に関しては、190ヶ国中184位でした。
ブラジルでは、企業が税金を納めるための準備・申告・支払いに、年間2000時間以上を要すると言われています。長年、左派政権下で放置された非効率な仕組みや複雑な制度等の統合と簡素化が急がれます。2019年の年金制度改革は構造改革の始まりにすぎず、今後、本格的な改革進められることで、海外からの注目も集まり、ブラジル市場へのさらなる資金流入も期待されています。