そして、これだけのドル箱コンテンツを、スポンサー企業が放っておくはずがありません。筆頭スポンサーで冠スポンサーでもあるサッポロビールを別とすれば、数多くの大企業が名乗りを上げて、激しい広告枠獲得競争を繰り広げています。

当然、スポンサー料は年々跳ね上がっていると推測できますが、それでも、大きな広告価値があると考えられます。大会運営の資金は潤沢と見ていいのではないでしょうか。この状況は、出場する大学にとっても広告宣伝という観点では、正しく“願ったり叶ったり”なのです。

2024年から箱根駅伝が全国化へ? 見え隠れする思惑とは

さて、そんな箱根駅伝ですが、2024年に開催される第100回記念大会から名実ともに“全国化”される方向で議論が進んでいます。つまり、現在の関東陸上連盟の加盟大学だけでなく、全国の大学に参加資格を与えるという内容です。

当然ながら、関東陸連は激しく反対し、他の地区陸連は手放しで賛成しているようです。確かに、関東陸連の大学から見れば、(予選会などで)ただでさえ難しい出場が、より一層難しくなります。予選落ちすれば、大学の宣伝にもなりません。一方、他の地方陸連の大学から見れば、絶好の宣伝チャンスが巡ってきます。

また、前述したスポンサー企業も、商業的観点から全国展開に賛同していると見られます。

この全国化への議論、正式決定までは様々な紆余曲折がありそうです。ただ、忘れてはならないのは、主役はあくまでもアスリートであるということです。そして、その先には、マラソンを含めた陸上長距離競技のレベル引き上げがあるはずです。

幸い、不振が続いた日本の男子マラソンでは、日本記録を更新する複数のアスリートが登場してきました。彼らは皆、学生時代に箱根駅伝で大活躍しています。

大学同士の過度な志願者争奪戦やスポンサー企業の意向によって、本来の意義が失われないことを願うばかりです。

葛西 裕一