在職老齢年金制度の2つの問題点

そこで言われる問題点として、高齢者の就業抑制効果というものがあります。年金の金額は、現役時代に給与天引きされた保険料の金額によって決まるので、調整はできません(ただし、給与天引きされていた各自の保険料を積み立てて老後に支給しているわけではないということにご注意を!)

それであれば、働く量を調整して年金が減額されないようにしようということになります。この傾向は、特に28万円と減額の基準が低い65歳未満の人に多いようです。

そもそも、今後は年金の支給開始年齢が徐々に引き上げられていきます(男性は1961年4月2日、女性は1966年4月2日以降生まれの人は支給開始時期が65歳となります)。

そもそも65歳までは働きなさいというメッセージを国が出している以上、65歳未満の在職老齢年金の基準額を引き上げる方向であることは現役世代にとっても納得がいくのではないでしょうか。

在職老齢年金は、就業抑制効果とともに、もう一つの問題があります。それは、税制度との連携不足です。先ほどから給与と年金の合計額という言葉を使っています。そうです。まさに給与との合算でしか比較していないのです。

依然として多くの方は給与の形で収入を得ていますが、たとえばコンサルタントとして個人事業主で事業所得を得ている人や、マンションの一室などを貸し出して不動産所得を得ている人、株式投資などで収益を上げている人、これらはすべて給与ではありません。そのため、在職老齢年金の計算にあたって、なんら考慮されていないのです。

特に資産を持っている人ほど給与以外の収入がある傾向にありますので、その意味で在職老齢年金は逆進的な制度といえるかもしれません。

たとえば確定申告の情報と連携するなど、給与以外の面での収入も在職老齢年金の計算に反映できるように制度を整えるのが公平性のためには必要なのかもしれません。

渋田 貴正