「邦人拘束」は続くのか〜中国ビジネスを政治リスクから考える

さらに、9月下旬、江蘇省で英語圏から英語教師を受け入れる事業を展開する企業の米国人2人が、受け入れた英語教師らを不当に他省へ行き来させていたとして逮捕された。

詳しい背景は明らかになっておらず、その2週間前に米国内で中国政府職員1人が就労ビザの詐欺容疑で逮捕されたことに対する外交的報復ではないかとの指摘もある。

日中関係における安全保障リスクの顕在化

中国での外国人拘束は今に始まったことではないが、その真相は分からないままである。

だが、こういった教訓として、日本の経営者たちは今まで以上に政治リスク(外交・安全保障リスク、地政学リスクなど)を重視する必要があろう。一連の拘束の具体的理由は分からないが、中国を巡る関係各国の政治動向を追うことは、中国ビジネスの今後を探る上で極めて重要だ。

たとえば、来年春に習近平氏の訪日が予定され、来年は日中関係も暖かくなるのではと予想する人もいるだろう。だが、日中経済関係は戦略的に考えなければならない。

日中関係を安全保障的に考えれば、何も改善に向かっている兆候はなく、むしろリスクは顕在化している。

中国にとって日本は米国陣営の一国であり、東シナ海や南シナ海、そして西太平洋への海洋覇権を進める上での対立国となる。また、日中が争う尖閣諸島の問題もあるように、安全保障的に対立する日中は、緊張をいかに回避するかという立場にある。

要は、国家の根幹に関わる安全保障問題で何かしらの政治的緊張が生じれば、それはそのまま経済的リスクとして波及する恐れがある。

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OSCアドバイザー/清和大学講師
岐阜女子大学特別研究員、日本安全保障戦略研究所(SSRI)研究員、日本安全保障・危機管理学会主任研究員などを兼務。
専門分野は国際政治学、安全保障論、国際テロリズム論。日本安全保障・危機管理学会奨励賞を受賞(2014年5月)、著書に『テロ、誘拐、脅迫 海外リスクの実態と対策』(同文館2015年7月)、『「技術」が変える戦争と平和』(芙蓉書房2018年9月)など。研究プロフィールはこちら