昔、このような子がいました。小学生低学年の男の子、オドオドした様子でなかなか目が合わせられないという印象でした。少し上にしっかりしたお兄ちゃんがいて、比べられているところがあったのかもしれません。

筆者が企画した子供向け史跡巡りツアーにその子が参加したときのことです。電車で移動するのでもよりの駅に集合、子供達は各自切符を買うようにしていました。自分で切符を買ったり自分の財布を管理したり時刻や行き先を確かめたりすることも大切な勉強だからです。

子供を駅まで送った後、親はたいてい「お願いします」と言ってすぐに去ります。ところが、その子が母親とともに駅に着いてから、母親は心配だからかなかなか去ろうとしません。切符を買おうとするときにも母親はその子に「早く財布を出して」「早く」と何度も言ってくるのです。

その子は決して器用なタイプでなかったために財布を取り出すにも時間はかかるのですが、出発まで余裕もあったので時間をかけて自分で切符を買えばよかったのです。

それが母親にとっては見ていられなかったのでしょうね。「早く」をくり返すし子供の財布を取ろうとする様子。「待って」と止めたものの「早くしなさい」のセリフは止まりませんでした。ようやく切符を買えたところで母親は帰っていったのですが、心配でたまらないようすはありありと伝わりました。息がつまりそうです。

子供は何をするにも時間はかかります。親の立場になると、そのような子供を見て「早くして」と言いたくなってしまい、子供の代わりに親がやってしまうこともあります。しかし、親がしてしまうと子供が自らするという「学び」の機会を奪ってしまうことになるのです。

結局、目に見える成果が出なかったとのことでその子は入会から4か月でやめてしまいました。成果が出せなかった塾の責任は大きいのですが、まだ4か月しかたっていなかったことと小学校低学年であったことを考えると、もう少し待つべきだったと思います。親に待つ姿勢があったら、子供もいきいきして長い目で見て成果も出せたのかもしれません。

見守るだけで上達

では、親は子供に何をしてあげればいいのでしょうか。何かしないと親の責任が果たせないと思われる方が多いかもしれません。