米半導体大手のインテルは、11月20日付で顧客やパートナー企業に対してレターを送付、CPUの供給状況について説明した。現在も供給が追い付いていない状況を謝罪し、今後、自社ファブや外部リソースの活用を積極的に行い、需要に応えていく。

「7」サポート終了で、パソコン市場が予想外の健闘

 CPUの供給不足は18年夏ごろから表面化。この時も当時暫定CEOを努めていたBob Swan氏(その後正式にCEOに就任)が顧客宛に書簡を発表して、供給状況を説明した。18年設備投資金額も当初金額から10億ドル積み増して、14nm世代の生産能力を増強。19年も過去最高となる160億ドルを投じて、生産能力を約25%増強し、顧客需要に応えてきた。しかし、CPU供給不足の状態は解消しておらず、今回10~12月期のパソコン出荷に影響を及ぼすとして、顧客らにレターを送るかたちをとった。

 Sales, Marketing and Communications GroupでGeneral Managerを務めるMichelle Johnston Holthaus氏は、11月20日付のレターのなかで、同社は自社ファブで14nm世代の増強と10nm世代の立ち上げを進めているほか、外部ファンドリーの活用によって供給能力を高めていると説明している。生産能力増強により、下期の供給能力は上期比で2桁台の増加を図れたという。しかし、Windows 7が20年1月にサポートを終了することに伴い、買い替え需要が旺盛でパソコン市場では近年のマイナス成長から一転、19年はプラス成長が見込まれている。

 これにより、需給ギャップが広がり、今回の供給不足を引き起こしているものとみられる。ただ、もともと供給がタイトなこともあり、「顧客企業がCPU確保のため、過剰発注している可能性」(部材メーカー)も指摘されており、実態把握は難しい状況だ。

背景に10nmの低歩留まり影響か

 今回の供給不足に関しては、インテルは一貫してパソコン市場の予想外の好調を理由に挙げているが、それだけではないはずだ。インテルは現在、最新世代の10nmプロセスの立ち上げを進めているが、歩留まり改善が進まず、思い切った生産能力増強に踏み切れていない。10nm世代の主力工場であるイスラエルの「Fab28」では月産1万枚強の10nm用ラインしか稼働しておらず、同社の製品出荷を製造プロセス別に見れば、圧倒的に14nm世代が過半を占める状況だ。

 現在の要求に応えるには、歩留まりが安定した14nmを追加増強していくのがベターだが、いずれ10nmへ世代交代を図っていくことを考慮すると、投資効率は決して良いとはいえない。しかし、10nm世代を立ち上げようとすると収益低下に直面するというジレンマに陥っているように見える。実際にインテルは19年第4四半期の粗利益率を前四半期比で低下すると予想しているが、10nm世代の立ち上げを理由の1つに挙げている。

 タイトな供給状況が続いていることもあり、パソコン向け製品のASP(平均単価)も上昇傾向にある。第3四半期業績におけるノートパソコン向け製品のASPは前四半期比2%上昇しており、業績面ではプラスに作用していることも忘れてはならない。

電子デバイス産業新聞 副編集長 稲葉 雅巳