再来月4月から「働きながら年金を受け取る」シニア世代にとって大きな制度変更がはじまります。

少子高齢化が進む中、シニア世代の就労はますます広がっています。最新データでは、65〜69歳の半数以上(54.9%)が働いているとされ、元気に活躍する高齢者は珍しい存在ではなくなりました。

労働力人口に占める65歳以上の者の比率は上昇傾向1/5

労働力人口に占める65歳以上の者の比率は上昇傾向

出所:内閣府「令和7年版高齢社会白書(全体版)」

こうした状況を踏まえ、厚生労働省は「在職老齢年金制度」の見直しを決定。働く意欲のある高齢者が、より安心して仕事を続けられるしくみへと変わります。

1. 在職老齢年金、基準額「51万円→65万円」へ!年金"満額ライン"が大幅アップ

「在職老齢年金」とは、働きながら厚生年金を受け取る人のうち、収入が一定額を超えた場合に、年金の一部または全部が支給停止になるしくみです。今回の改正で大きく変わるのは、年金が減額されるかどうかの目安となる「基準額」です。

1.1 改正の内容

  • 支給停止の基準額:月51万円 → 月65万円へ引き上げ
  • 対象者:厚生年金に加入しながら働く60歳以上の人
  • 調整の対象:老齢厚生年金のみ

※老齢基礎年金はこれまでどおり全額支給

つまり、「働いて収入が増えると年金が減るから」と仕事をセーブしていた人でも、これまでより多く稼ぎながら年金を満額受け取れる可能性が広がります。

2. 在職老齢年金、年金10万円なら「賃金55万円まで」年金満額に!早見表でチェック

では、実際にどのくらい違いが出るのでしょうか。たとえば、賃金(月額)46万円、老齢厚生年金の受給額が月10万円の場合で比べてみます。在職老齢年金の計算に使われるのは「標準報酬月額+直近1年間の標準賞与額の1/12」です。

※この章でいう賃金とは、月給(標準報酬月額)にボーナス(標準賞与額)を加えた総報酬制の月額相当分を指します。

賃金月46万円、老齢厚生年金の受給額が月10万円の場合のイメージ3/5

賃金月46万円、老齢厚生年金の受給額が月10万円の場合のイメージ

出所:日本年金機構チラシ「働きながら年金を受給する皆さま 在職老齢年金制度が改正されます」

■2026年3月まで(基準額51万円)

  • 賃金46万円+年金10万円=合計56万円
  • 基準額を5万円上回るため、その超えた分の半額(2万5000円)が支給停止
    → 年金の受取額は 7万5000円

■ 2026年4月から(基準額65万円)

  • 合計56万円は新しい基準額65万円を下回る
    → 年金は 10万円全額支給

このように、同じ収入でも手取り年金額が変わるケースがあります。

2.1 在職老齢年金早見表

日本年金機構の《在職老齢年金早見表》を見ると、働きながら年金を受け取る場合に「給与(月額)」と「老齢厚生年金の月額」の合計が基準額を超えたとき「いくら年金が支給停止になるのか」ひと目で確認することができます。

在職老齢年金早見表4/5

在職老齢年金早見表

出所:日本年金機構「在職老齢年金早見表」

例えば、年金(月額)が10万円の人の場合「全額支給される賃金の目安」は、

  • 改正前:41万円まで
  • 改正後:55万円まで

と、大きく広がります。

3. 在職老齢年金、健康寿命の延伸と「長く働ける社会」へ

今回の「在職老齢年金」改正の根底には、日本の平均寿命と健康寿命の延伸があります。

2022年のデータでは、平均寿命は男性81.05歳、女性87.09歳。一方、日常生活に制限なく過ごせる「健康寿命」は男性72.57歳、女性75.45歳となっています。

注目すべきは、平均寿命と健康寿命の差が、男性8.49年、女性11.63年と、2010年以降わずかながら縮小傾向にある点です。元気で活動的なシニア世代が増える中、制度がその意欲を削がないよう、より柔軟に働ける環境整備が進められています。

「健康寿命を延ばし、平均寿命との差を縮める」という国の目標は、社会保障の持続可能性を高めるだけでなく、一人ひとりが自分らしく社会と関わり続けるための鍵となります。4月からの新制度を賢く活用し、理想のキャリアプランを検討してみてはいかがでしょうか。

参考資料

村岸 理美