会社を辞めて国保(国民健康保険)に入るとき、「家族は扶養に入れておけば保険料はかからない」と考えている人は少なくありません。ところが国保には扶養のしくみがなく、収入のない配偶者や子どもにも、一人ひとり保険料の均等割がかかります。

行政の現場を取材してきた立場から見ると、会社の健康保険と国保の計算のちがいは、退職の前に知っておきたい点です。ここでは、国保と、退職後2年まで会社の健康保険を続けられる任意継続を、同じ世帯で比べます。

前提は、前年の給与が正社員の平均給与559万円の人が、収入のない配偶者と未就学児1人の3人世帯で退職した場合です。東京都大田区の2026年度の国保料と、全国健康保険協会(協会けんぽ)東京支部の任意継続の保険料を試算します。

※給与559万円は、国税庁「令和7年分 民間給与実態統計調査」の正社員の平均給与です。国保料は大田区「国民健康保険料の計算方法」(令和8年度)、任意継続は全国健康保険協会「任意継続」と令和8年度の東京支部の保険料率をもとにしています。

1. 国保に扶養はない?家族も一人ひとりが加入者になり、均等割は人数分を世帯主がまとめて払う

国保に扶養のしくみはありません。会社の健康保険では、収入が一定以下の家族は「被扶養者」として保険料の負担なく加入できますが、国保では家族も一人ひとりが加入者です。

厚生労働省「国民健康保険の保険料・保険税について」によると、国保の保険料は世帯単位で算定し、加入者ごとに所得に応じた分(応能分)と人数に応じた分(応益分)を計算して合計します。国民健康保険法では、保険料は加入者の属する世帯の世帯主から徴収すると定められています。

大田区の2026年度(令和8年度)の国保料は、次の3つの区分の合計です(40〜64歳の加入者がいる世帯は、このほかに介護分がかかります)。

  • 【医療分】所得割は算定基礎額の7.51%、均等割は1人あたり年4万7600円
  • 【後期高齢者支援金分】所得割は2.80%、均等割は1人あたり年1万7600円
  • 【子ども・子育て支援金分】所得割は0.27%、均等割は1人あたり年1873円(2026年度から)

算定基礎額は、前年の総所得金額などから基礎控除の43万円を引いた額です。収入のない配偶者は所得割がかかりませんが、均等割は大人1人あたり年6万7073円かかります。

2. 国保の未就学児の均等割はどうなる?5割軽減で1人あたり年3万2600円になり、子ども・子育て支援金分は全額軽減

国保の均等割は子どもにもかかりますが、未就学児は5割軽減されます。厚生労働省によると、未就学児の均等割の5割を公費で軽減するしくみで、2022年4月から全国で行われています。所得が少ない世帯の7割・5割・2割軽減を受けたあとの額から、さらに5割が軽減されます。

大田区の2026年度の額にあてはめると、未就学児1人の均等割は次のとおりです。

  • 【医療分】年4万7600円 → 5割軽減で年2万3800円
  • 【後期高齢者支援金分】年1万7600円 → 5割軽減で年8800円
  • 【子ども・子育て支援金分】18歳になった後の最初の3月31日までの子は全額軽減で0円
  • 【合計】年3万2600円(大人1人の年6万7073円の約半分)

軽減は年齢で自動的に判定され、申請はいりません。小学生になると5割軽減は終わり、医療分と後期高齢者支援金分の均等割は大人と同じ額になります。

ここまでで、国保に扶養がない理由と、未就学児の均等割を見てきました。

ここからは、国保と任意継続の比較と、家族の人数による差を見ていきます。