2026年11月、退職前に有給休暇20日をまとめて取りたいときは、厚生労働省の解説で、会社が時季を変えられるのは「退職日まで」。12月31日退職なら、週5日勤務で12月4日から休める試算
「上司にダメと言われたから」と退職前の有給を諦めるのは損。会社には“認めるほかない”理由と、例外になる過去の判例
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退職の日が決まった。有給休暇が、あと20日残っている。
そこで、退職前にまとめて使いたいと上司に伝えたところ、「引き継ぎがあるから困る」と言われた。
そんな場面で、「断られたら、あきらめるしかないのか」と悩む人もいるでしょう。
結論から言うと、厚生労働省の解説では、退職日をもって有給休暇の権利は消えます。そのため、会社は時季を変えることができず、認めるほかないとされています。ただし、長期の連続取得では、時季変更権の扱いが争われた判例も、同じ解説に紹介されています。
この記事では、2026年11月に確認した厚生労働省の資料をもとに、退職前の有給休暇の考え方と、日数別の休み始めの試算を整理します。
※有給休暇は、法律では「年次有給休暇」といいます。「時季変更権」は、会社が休みの時季を変えてもらうよう求める権利です。
1. 退職前の有給休暇:会社が時季を変えられるのは、退職日まで
1.1 退職日をもって有給休暇の権利は消える。使い切りたいという申請は、認めるほかない
厚生労働省の「確かめよう労働条件」では、会社を退職した場合、退職日をもって年次有給休暇の権利は消滅するとしています。
退職間近に、残りの有給休暇をすべて使い切って退職したいと申請する人もいます。
その場合、退職をもって有給休暇の権利が消えるため、会社は時季変更権を行使できず、取得を認めるほかないと書かれています。
一方で、休みが1か月ほどの長期になる場合に、時季変更権が認められるかが争われた例(時事通信社事件)も、同じ解説にあります。会社に、ある程度の判断の余地を認めた判例です。
1.2 沖縄労働局の事例も、「与えなければならない」としている
沖縄労働局の労働相談事例には、残りの有給休暇が30日ある職員が、退職願を出して、そのまま有給休暇をとって辞めたいと届け出た例があります。
答えは、「与えなければならない」です。
理由は、会社が拒めるのは、請求された時季に与えることが「事業の正常な運営を妨げる」場合に限られ、退職の日をこえて時季を変えることはできないからです。
1.3 時季変更権が使えるのは、「事業の正常な運営を妨げる」場合。使えるかは個別に判断される
有給休暇は、原則として、労働者が請求する時季に与えなければなりません(労働基準法第39条第4項)。
会社が時季変更権を使えるのは、その時季に与えると「事業の正常な運営を妨げる」場合です。
厚生労働省は、例として、年末などの特に忙しい時季を指定する場合や、同じ時期に多くの人の請求が重なる場合を挙げています。
ただし、退職日がその時季より前なら、ずらす先がありません。
図の内容を、項目ごとに書き出します。
- 5日分:12月25日(金)から休み、最終出勤日は12月24日(木)
- 10日分:12月18日(金)から休み、最終出勤日は12月17日(木)
- 15日分:12月11日(金)から休み、最終出勤日は12月10日(木)
- 20日分:12月4日(金)から休み、最終出勤日は12月3日(木)
※試算の前提:退職日は2026年12月31日(木)。週5日勤務(土日が休み)で、12月に祝日はなく、請求どおり連続で取得できるものとします。年末年始に会社が休みの日がある場合は、結果が変わります。
ここまでで、退職日をこえて時季を変えられないことと、日数別の休み始めを見てきました。
ここからは、有給休暇の日数と、会社から退職日を遅らせるよう頼まれたときを見ていきます。
著者
株式会社モニクルリサーチ メディア編集本部
元・厚生労働省担当記者(社会保障専門紙)
中央大学法学部を卒業後、東証プライム上場IT企業での法人営業を経て、厚生労働省記者クラブに所属する行政・自治体向けの社会保障専門紙記者として活動。
現在は「公的社会保障制度(年金・医療・介護)」の仕組みと、「私的資産形成(NISA・iDeCo)」の税制優遇制度を横断的に分析し、生活者のための家計防衛術を提供する編集者として活動している。
各省庁が公表する難解な一次情報(e-Gov法令検索の条文データや、総務省統計局の家計調査など)を読み解き、現役世代からシニア層までを対象に、事実に基づいた実用的な解説記事を継続的に執筆している。
このほか、専門家と実務家が発信する金融経済ニュースサイト『LIMO&ファイナンス』でも情報を発信している。
【経歴・専門性】
前職の専門紙記者時代には、厚生労働省本省および各地方自治体(保険者)を直接取材対象とし、現場の最前線で以下の重要政策の決定プロセスと一次情報に触れてきた。
これらの政策取材を通じ、「制度の複雑化が引き起こす、生活者のサイレントな不利益(申請漏れや制度の不知による経済的損失)」の構造を実務レベルで把握。役所の論理で構築された難解な制度設計を、IT企業時代に培ったデータ分析手法と掛け合わせることで、客観的指標(平均値ではなく中央値を用いた実態把握など)に基づく解説記事を執筆している。
【具体的な実績・保有資格・メディア掲載歴】
公的機関の一次データに依拠した客観的な記事執筆により、Yahoo!ニュース「経済ランキング」において多数の1位を獲得。具体的な執筆・担当領域における実績は以下の通りである。
- 公的年金・給付金領域:日本年金機構の公表資料に基づく「在職老齢年金による支給停止基準」や「年金生活者支援給付金の受給要件」の解説。また、国税庁のガイドラインに沿った定額減税や各種給付金の対象者判定フローの実務的整理。
- 医療・介護保険領域:高額療養費制度などの自己負担限度額の算出方法や、公的保障のセーフティネット範囲の図解解説。
- 資産運用領域:金融庁のNISA特設サイトや、iDeCo公式サイト(国民年金基金連合会)のデータに基づく税制優遇メリットの数値化。特定の金融商品の購入推奨は行わず、公的年金の不足分を補うための長期積立投資の制度整理に特化。
- 貯蓄・家計管理領域:家計調査などの官公庁統計データに基づいた、年代別・世帯年収別の貯蓄実態の論理的解説、およびインフレ時代におけるリスク管理手法の情報提供。
- 保有資格・実務知見:東京商工会議所 ビジネスマネジャー検定試験®合格。上場企業での実務経験と当資格で培った「組織マネジメント」や「コンプライアンス・リスク管理」の視点を個人の家計防衛に転用し、ビジネスパーソンが納得できる論理的な解説の裏付けとしている。
【読者へ提供する価値と発信理念】
「役所の論理ではなく、生活者の視点で制度を翻訳する」ことを発信の基本理念としている。
複雑怪奇な社会保障制度においては、制度を知らないこと自体が直接的な経済的損失に直結する。この情報非対称性を是正し、「知っていれば救われたはずの人が損をする現状をゼロにする」ことが現在の活動における最大のミッションである。
そのため、記事執筆にあたっては個人の主観や推測、投資推奨は避ける。
そのうえで、読者の生活や資産に影響を与える領域であることを自覚し、読者が「国に頼りすぎず、国を賢く利用する」ための正確で安全な判断材料を提供し、生活者とその家族を守るための実用的な知見を届け続けている。