退職の日が決まった。有給休暇が、あと20日残っている。

そこで、退職前にまとめて使いたいと上司に伝えたところ、「引き継ぎがあるから困る」と言われた。

そんな場面で、「断られたら、あきらめるしかないのか」と悩む人もいるでしょう。

結論から言うと、厚生労働省の解説では、退職日をもって有給休暇の権利は消えます。そのため、会社は時季を変えることができず、認めるほかないとされています。ただし、長期の連続取得では、時季変更権の扱いが争われた判例も、同じ解説に紹介されています。

この記事では、2026年11月に確認した厚生労働省の資料をもとに、退職前の有給休暇の考え方と、日数別の休み始めの試算を整理します。

※有給休暇は、法律では「年次有給休暇」といいます。「時季変更権」は、会社が休みの時季を変えてもらうよう求める権利です。

1. 退職前の有給休暇:会社が時季を変えられるのは、退職日まで

1.1 退職日をもって有給休暇の権利は消える。使い切りたいという申請は、認めるほかない

厚生労働省の「確かめよう労働条件」では、会社を退職した場合、退職日をもって年次有給休暇の権利は消滅するとしています。

退職間近に、残りの有給休暇をすべて使い切って退職したいと申請する人もいます。

その場合、退職をもって有給休暇の権利が消えるため、会社は時季変更権を行使できず、取得を認めるほかないと書かれています。

一方で、休みが1か月ほどの長期になる場合に、時季変更権が認められるかが争われた例(時事通信社事件)も、同じ解説にあります。会社に、ある程度の判断の余地を認めた判例です。

1.2 沖縄労働局の事例も、「与えなければならない」としている

沖縄労働局の労働相談事例には、残りの有給休暇が30日ある職員が、退職願を出して、そのまま有給休暇をとって辞めたいと届け出た例があります。

答えは、「与えなければならない」です。

理由は、会社が拒めるのは、請求された時季に与えることが「事業の正常な運営を妨げる」場合に限られ、退職の日をこえて時季を変えることはできないからです。

1.3 時季変更権が使えるのは、「事業の正常な運営を妨げる」場合。使えるかは個別に判断される

有給休暇は、原則として、労働者が請求する時季に与えなければなりません(労働基準法第39条第4項)。

会社が時季変更権を使えるのは、その時季に与えると「事業の正常な運営を妨げる」場合です。

厚生労働省は、例として、年末などの特に忙しい時季を指定する場合や、同じ時期に多くの人の請求が重なる場合を挙げています。

ただし、退職日がその時季より前なら、ずらす先がありません。

退職日が12月31日なら、有給休暇の日数別にいつから休める?5日・10日・15日・20日を使い切る休み始めを、週5日勤務で試算1/2

退職日が2026年12月31日(木)の人が、有給休暇を連続で使い切るときの休み始めを日数別に試算した図。週5日勤務で、12月に祝日がない前提。5日分は12月25日から休み、最終出勤日は12月24日。10日分は12月18日から、最終出勤日は12月17日。15日分は12月11日から、最終出勤日は12月10日。20日分は12月4日から、最終出勤日は12月3日

出所:厚生労働省『年次有給休暇』(確かめよう労働条件)をもとにLIMO編集部が試算して作成

図の内容を、項目ごとに書き出します。

  • 5日分:12月25日(金)から休み、最終出勤日は12月24日(木)
  • 10日分:12月18日(金)から休み、最終出勤日は12月17日(木)
  • 15日分:12月11日(金)から休み、最終出勤日は12月10日(木)
  • 20日分:12月4日(金)から休み、最終出勤日は12月3日(木)

※試算の前提:退職日は2026年12月31日(木)。週5日勤務(土日が休み)で、12月に祝日はなく、請求どおり連続で取得できるものとします。年末年始に会社が休みの日がある場合は、結果が変わります。

ここまでで、退職日をこえて時季を変えられないことと、日数別の休み始めを見てきました。

ここからは、有給休暇の日数と、会社から退職日を遅らせるよう頼まれたときを見ていきます。