夫と2人暮らしで、子どもはいない。夫の両親も、すでに亡くなっている。

もし夫が先に亡くなったら、自宅は、そのまま自分のものになるのでしょうか。

結論から言うと、このとき相続人になるのは、妻だけではありません。夫の兄弟姉妹も、相続人になります。

民法が決めている取り分の目安(法定相続分)は、妻が4分の3、夫の兄弟姉妹が合わせて4分の1です。

自宅が財産の大半だと、妻の分が自宅だけで使い切られることがあります。生活費にする預貯金が、手元に残らないかもしれません。

この記事では、2026年11月時点の条文と公的な案内をもとに、子どものいない夫婦の相続を整理します。

法定相続分、自宅と預貯金を例にした試算、自宅に住み続けるための「配偶者居住権」の順に見ていきます。

1. 子も両親もいない夫が亡くなると、妻に加えて夫の兄弟姉妹が相続人になる。法定相続分は妻4分の3、兄弟姉妹4分の1

1.1 妻(配偶者)は、いつでも相続人になる

民法第890条は、亡くなった方の配偶者は、常に相続人になると定めています。

夫が亡くなったときの妻は、必ず相続人に入ります。

1.2 兄弟姉妹は、子も直系尊属(父母など)もいないときに相続人になる

民法第889条は、亡くなった方に子がいない場合、まず父母など(直系尊属)が相続人になると定めています。

父母などもいなければ、兄弟姉妹が相続人になります。

夫の両親がすでに亡くなっていて、ほかに直系尊属もいないなら、夫の兄弟姉妹が、妻といっしょに相続人です。

1.3 取り分の目安は、だれが相続人かで決まる

法定相続分は、民法第900条が決めています。

妻と夫の兄弟姉妹が相続人のときは、妻が4分の3、兄弟姉妹が合わせて4分の1です。

夫の両親が健在なら、相続人は妻と両親です。妻が3分の2、両親が3分の1になります。

【民法の法定相続分】夫に子がいないとき、妻と相続分を分けるのは誰か。夫の両親が健在な場合と、兄弟姉妹の場合を、早見表で整理1/2

夫に子がいない場合の法定相続分を示した図。夫の両親が健在なら、妻が3分の2、両親が3分の1。両親がいなくて兄弟姉妹がいるなら、妻が4分の3、兄弟姉妹が4分の1

出所:e-Gov法令検索『民法』第889条・第890条・第900条を参考にLIMO編集部作成

図の内容を、項目ごとに書き出します。

  • 夫の両親が健在:妻が3分の2、両親が3分の1(民法第900条第2号)
  • 夫の両親がいなくて、兄弟姉妹がいる:妻が4分の3、兄弟姉妹が合わせて4分の1(同条第3号)

両親が健在かどうかで、妻の取り分は3分の2か4分の3に変わります。

1.4 兄弟姉妹が何人かいれば等分。父母の一方だけ同じなら半分

兄弟姉妹が何人かいるときの各自の取り分は、第900条第4号により、等しいものとされています。

ただし、父母の一方だけが同じ兄弟姉妹の取り分は、父母の両方が同じ兄弟姉妹の2分の1です。

夫の実家のきょうだいが相続人になるため、妻は、ふだん付き合いの少ない義理のきょうだいと、遺産の分け方の話合い(遺産分割)をする場合があります。

2. 編集部の試算:自宅3000万円と預貯金1000万円なら、妻は3000万円、兄弟姉妹2人は各500万円

夫の財産が、自宅の評価額3000万円と、預貯金1000万円で、合わせて4000万円の場合を考えます。

相続人は、妻と、夫の兄弟姉妹2人(父母の両方が同じ)です。この金額は編集部の仮定です。

  • 妻の法定相続分:4000万円×4分の3=3000万円
  • 兄弟姉妹の法定相続分:4000万円×4分の1=1000万円。2人で等分すると各500万円

財産の合計4000万円に、それぞれの割合をかけた金額です。

兄弟姉妹の2人は、父母の両方が同じなので、取り分は等しくなります。

【子のいない夫婦の相続】自宅3000万円と預貯金1000万円なら、妻と夫の兄弟姉妹2人は、法定相続分でそれぞれいくらになるかを試算2/2

自宅3000万円と預貯金1000万円、合計4000万円の相続を法定相続分で分けた試算の図。妻は3000万円、夫の兄弟姉妹2人は各500万円

出所:e-Gov法令検索『民法』第900条を参考にLIMO編集部が試算

図の内容を、項目ごとに書き出します。

  • 妻:3000万円(4分の3)
  • 夫の兄弟姉妹2人:各500万円(合わせて4分の1の1000万円)

2.1 自宅が3000万円だと、妻の分は自宅だけで使い切られる

この試算では、妻の法定相続分3000万円は、自宅の評価額3000万円と同じです。

妻が自宅の所有権を取ると、預貯金1000万円は兄弟姉妹の分になります。妻の手元に、預貯金は残りません。

ここまでの金額は、法定相続分どおりに分けた場合の目安です。

実際の分け方は、相続人どうしの話合い(遺産分割協議)で決まります。

自宅に住み続ける方法として、法務省は「配偶者居住権」を案内しています。

所有権より低い価額で居住権を確保でき、預貯金などをより多く取得できるメリットがある、と説明されています。

ただし、居住権は妻の取り分の中から取得するため、居住権の価値の評価が必要です。

ここからは、兄弟姉妹が先に亡くなっているときの相続人と、配偶者居住権のくわしい内容を見ていきます。