5. 【元証券会社員の視点】検証:孫の大学入学の援助は、老後の貯蓄から介護の備えを分けてから額を決める
資産運用の相談を受けてきた立場から見ると、老後の貯蓄は「いくらあるか」よりも「何年分の不足を埋められるか」で見たほうが、使い道を決めやすくなります。今回の試算では、貯蓄の中央値1777万円は、介護の費用を見込まなければ不足の約34.9年分にあたります。
一方で、介護の費用を2人分見込むと、残りは約692.6万円で、不足の約13.6年分になります。私立の初年度納付金の援助は約2.7年分ですから、援助の額よりも、老後に必要な備えを先に取り分けておくかどうかで、貯蓄が持つ年齢は大きく変わります。
援助の額を決めるときは、次の順番で考えておきたいところです。
- 【1】介護の費用(1人約542.2万円)を夫婦の人数分、先に取り分ける。その他に必要な老後資金もあらかじめ取り分ける
- 【2】残りを年間の不足で割り、何歳まで持つかを確かめる
- 【3】そのうえで、援助に回せる額を決める
介護以外にも、車や家電の買い替え、旅行や趣味に使う費用、リフォーム費用、病気をしたときの費用なども入れて計算をするといいでしょう。
試算は全国の平均・中央値で置いているため、実際の不足額は家計によって違います。毎月の不足は、年金の振込額と通帳の出入りを1年分書き出すと把握できます。
入学料と授業料は払う時期が分かれるため、入学料だけ、1年目の授業料だけといった形で援助の範囲を区切ることもできます。学校へ直接払う形にしておくと、贈与税の扱いも確かめやすくなります。
6. まとめ
孫の大学入学の援助は、私立大学の初年度納付金の平均約138.1万円なら、65歳以上の夫婦のみの無職世帯の不足の約2.7年分、国立大学の標準額約81.8万円なら約1.6年分です。介護の費用を見込むと、援助の額より介護の備えのほうが、貯蓄が持つ年齢に大きく影響します。
援助の額は、まず老後に必要な備えを分けてから、残りの貯蓄が何歳まで持つかを確かめて決めておくと安心です。贈与税の扱いで迷うときは、所轄の税務署(国税庁の電話相談センター)で確かめられます。
※本記事の試算は一定の前提に基づく概算です。実際の家計の収支や貯蓄、介護の費用、大学の学費は世帯や大学によって異なります。贈与税の扱いは国税庁の案内や所轄の税務署でご確認ください。
参考資料
- 総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)2025年(令和7年)平均結果の概要」
- 総務省統計局「家計調査報告(貯蓄・負債編)2025年(令和7年)平均結果の概要」
- 生命保険文化センター「介護にはどれくらいの費用・期間がかかる?」
- 文部科学省「私立大学等の令和7年度入学者に係る学生納付金等調査結果について」
- e-Gov法令検索「国立大学等の授業料その他の費用に関する省令」
- 国税庁「No.4405 贈与税がかからない場合」
- 国税庁「扶養義務者(父母や祖父母)から「生活費」又は「教育費」の贈与を受けた場合の贈与税に関するQ&A」
- 国税庁「No.4510 直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税」
- 国税庁「No.4402 贈与税がかかる場合」
宮野 茉莉子