5. 手口別で見ると上位は? 点検商法・かたり商法の件数

65歳以上の販売方法・手口別の相談件数では、インターネット通販が6万9399件、定期購入が4万6958件で上位に並びます。訪問や電話による手口では、家庭訪販が2万8205件(3位)、電話勧誘販売が2万2547件(4位)です。

身分を偽る「かたり商法」は1万9447件(5位)、点検を口実にする「点検商法」は1万4167件(6位)でした。点検商法は65歳未満の相談上位10位には入っていません。報告書では、給湯器等の点検に関する相談が増えたとされています。

6. 高齢者世帯の収入と貯蓄は?契約額の規模感をつかむ

ここでは、公的統計から高齢者世帯の家計の状況を確認します。ただし、以下の統計は相談データとは調査対象や定義が異なり、相談との因果関係を示すものではありません。

6.1 高齢者世帯の所得は?公的年金のみの世帯は41.3%

厚生労働省の「2025(令和7)年 国民生活基礎調査の概況」(2026年7月15日公表)によると、高齢者世帯は1754万6000世帯で、全世帯の31.9%を占めます。1世帯当たりの平均所得金額は336万1000円(2024年の所得)で、うち公的年金・恩給が205万9000円(総所得の61.3%)です。

公的年金・恩給が総所得の100%を占める世帯は41.3%で、生活意識が「苦しい」(大変苦しい21.0%とやや苦しい31.1%の合計)とした世帯は52.1%と、半数を超えています。

6.2 貯蓄は?2500万円以上が36.3%、300万円未満が14.9%

総務省統計局の「家計調査報告(貯蓄・負債編)2025年平均結果の概要」(2026年5月19日公表)では、世帯主が65歳以上の二人以上世帯のうち、貯蓄現在高が2500万円以上の世帯は36.3%、300万円未満の世帯は14.9%です。

二人以上世帯に限った数値ですが、貯蓄額には大きな幅があることが分かります。

6.3 国民年金の平均月額は?契約額は約12.3倍

厚生労働省年金局の「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」(2025年12月公表)によると、国民年金の老齢年金受給権者(厚生年金の受給者の基礎年金部分を含む)の平均年金月額は、令和6年度末現在で5万9310円です。

たとえば、前述の平均契約購入金額を73万円として5万9310円で割ると、約12.3倍(73万円÷5万9310円≒12.31、編集部算出)になります。

平均値どうしの単純な比較で、個別の契約額や年金額を示すものではありませんが、契約額の規模感をつかむ目安になりそうです。

契約当事者が65歳以上の相談は、2025年度に33万0497件となりました。平均契約購入金額は約73万円で、85歳以上では訪問販売の割合が通信販売を上回るなど、年齢が上がるほど相談の入り口が移り変わる傾向が資料から読み取れます。

ここで見た数字は相談件数や構成比であり、トラブルに遭う確率や被害の大きさを示すものではありません。身近な高齢者の様子を気にかけるときの目安として、受け止めておきたいところです。

クーリング・オフの対象や起算日、地域の見守りネットワーク、相談先については、続く章で資料から整理します。

7. 確認しておきたい注意点が3つある

相談の入り口は通信販売が最も多い一方で、訪問販売や電話勧誘販売は年齢が上がるほど割合が高まります。入り口によって契約後に取れる手段が異なる点を、3つに分けて整理します。

7.1 注意点1:通信販売のトラブルは、クーリング・オフ制度の対象外

65歳以上の相談で最も多い販売購入形態は、通信販売(11万8301件、35.8%)です。国民生活センターによると、通信販売にはクーリング・オフ制度がありません。返品は事業者の特約に従い、特約がない場合は商品を受け取った日を含めて8日以内であれば可能ですが、返品の費用は消費者の負担です。訪問販売などと同じ感覚で「解約できる」と考えてしまう点は、見落としやすいポイントです。

7.2 注意点2:訪問販売などの8日間は、起算日と通知方法に注意

訪問販売、電話勧誘販売、訪問購入のクーリング・オフ期間は8日間です。期間は、申込書面または契約書面のうち早いほうを受け取った日から数えます。通知は書面(はがき可)または電磁的記録で行い、はがきの場合は特定記録郵便や簡易書留など、発信記録が残る方法が勧められています。個別の取引が対象になるかどうかは契約内容によって異なるため、最寄りの消費生活センター等で確認してください。

7.3 注意点3:早めに家族や消費生活センターへ相談する

国民生活センターの報告書では、消費生活で少しでも不安を感じたら、早めに家族や知人、最寄りの消費生活センター等に相談するよう呼びかけています。身近な高齢者がトラブルにあっているのではないかと気づいた場合も、できるだけ早く相談することが大切とされ、日頃から高齢者の生活や言動、態度などを見守ることも挙げられています。

85歳以上では訪問販売の割合が最も高く、点検商法では給湯器等の点検に関する相談が増えています。いったん持ち帰って家族に相談する時間を取ることも、一つの備えになります。

※クーリング・オフの対象になるかなど個別の判断や具体的なご相談は、最寄りの消費生活センター(消費者ホットライン188)などにご確認ください。