漫画家の祭さんは、大明神さんと、小明神さんというチンチラさんと一緒に暮らしていました。

名前は兄弟のようですが、2匹のチンチラさんたちの出自は別々。でも、少しだけ先に生まれた大明神さんのおっとりした性格もあり、本当の兄弟のように、一緒のケージで仲良く生活をしていました。しかし、2016年の梅雨の少し前、大明神さんが原因不明の食欲不振に陥り、数週間にわたる祭さんの献身的な看護もむなしく、息を引き取ってしまいます。

苦しい息の下、いままでの感謝の気持ちを語りかけるかのように、最後まで鳴き続けた大明神さんの様子と、これまでの楽しい日々を思い出し、涙にくれる祭さん。しかし、ずっと悲しんでいるわけにはいきません。飼い主として、そして残された家族として、最後のお務めを果たさなくてはいけません。それは大明神さんを見送ること。

祭さんは、葬儀屋さんにお願いし、大明神さんの遺体を火葬後、ペット霊園に納骨することにしました。大明神さんに会いたいときは、霊園までお墓参りにいくことになります。手元に遺骨を置いておくことも考えましたが、それでは祭さん自身に何かがあった時に、それを引き取らなくてはいけなくなった人が持て余してしまうかもしれないと思い、選択肢からはずしました。

棺に大明神さんの遺体をおさめ、小明神さんとともにお祈りをささげます。祭さんは、遺骨を手元に置かない代わりに、大明神さんのひげをとっておくことにしました。そうこうしているうちに、お願いしていた葬儀屋さんが、大明神さんのお迎えにやって来ました。あわてて喪服に着替えて対応する祭さん。

火葬をお願いした葬儀屋さんは、出張火葬を扱っているところだったためか、炉を積んだ火葬車でお迎えに来てくれました。黒のスーツを着用した担当者の男性が、神妙な面持ちでお悔やみの言葉を述べた後に、火葬までの流れや各種手続きについての話をはじめます。その様子は、セレモニーホールなどで、人の葬儀を執り行う人とほとんど変わりはありません。一通りの説明の後、祭さんはトランクルームに設置された炉の横のスペースで、大明神さんの火葬に必要な書類を書くように指示されました。

出張火葬を行った帰りということで、火葬炉にはまだ熱がこもっています。むわっと押し寄せてくる熱気。その横で書類を記入しながら、祭さんはぼんやりと考えます。「ああ、あの葬儀屋さんは、今まさに、誰かの大切なペットを供養してきたところなんだな…」。

家族同様に大切にしてきたペットが収められた棺を前に泣く人。遺体が煙になって天に上ってゆくのを見ながら、あらためて涙する人。そして最後に、小さな遺骨を大事そうに受け取る人。ここに来る前に、あの葬儀屋さんの目前では、そういう光景が繰り広げられていたはず。まさに生と死は隣りあわせ。そう思うと、ペットの死に直面して、悲しみに打ちひしがれたのは自分だけじゃないのだなと、今の自分と同じやるせない気持ちと戦う見知らぬ誰かを思い、ほんの少し慰められた気持ちになった祭さんなのでした…。

チンチライフ、次回もどうぞお楽しみに。

【マンガ記事】チンチライフ!

チンチラの大明神と小明神、そして漫画家の祭さんの3人(?)が織りなす、ドタバタな毎日。チンチラって何?という方から、チンチラの飼い主さんまで、初めて情報からディープなチンチラ情報まで、楽しくお伝えしていきます。

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