7. 繰り越せる損失の額と、実際に差し引ける額は別の数字
株の損失の繰越控除は、損失の額がそのまま税金を減らすわけではありません。この試算では、損失100万円でも200万円でも、翌年以後の譲渡益が年20万円なら、少なくなる税金は同じ約12.2万円でした。
繰り越せる期間は翌年以後3年間と決まっているため、その間にどれだけ譲渡益や配当が出るかが、差し引ける額の上限になります。
もう1つは、手続きが続くかどうかです。繰越控除は、損失が出た年から連続して付表を添付した確定申告書を出すことが前提で、上場株式等を売らなかった年も申告が必要とされています。途中の年の申告が抜けると、その後の繰越控除に関わってくる点には留意が必要です。
特定口座(源泉徴収あり)は、普段は確定申告をしなくても税金の計算が終わる仕組みです。その分、損失が出た年だけは、申告するかどうかを自分で決める場面になります。年間取引報告書で、損失の額と、同じ口座に受け入れた配当の額を確かめるところから始めるとよさそうです。
確定申告をすると、合計所得金額を通じて扶養の判定などに関わる場合もあります。差し引ける見込みの額、続けて申告する手間、合計所得金額への影響の3つを並べて見ることが、申告するかどうかを考える手がかりになるといえそうです。
8. まとめ
株の損失は、確定申告により、上場株式等の譲渡益と申告分離課税を選んだ配当から差し引け、差し引ききれない分は翌年以後3年間繰り越せます。特定口座(源泉徴収あり)でも、繰越控除を受けるには確定申告が必要で、その後も連続して付表を添付した確定申告書を出すことになります。
試算では、損失100万円なら翌年以後の譲渡益が年50万円で約20.3万円、年20万円で約12.2万円、税金が少なくなりました。NISA口座の損失は対象外です。年間取引報告書と国税庁のホームページで、自分の損失と配当の扱いを確かめてみるとよいかもしれませんね。
※本記事の試算は一定の前提に基づく概算です。上場株式等の譲渡益や配当の額は年によって変わり、試算どおりに差し引けるとは限りません。本記事は特定の銘柄や金融機関をすすめるものではありません。税金の扱いや申告の方法は、国税庁のホームページや税務署でご確認ください。
参考資料
- 国税庁「No.1474 上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除」
- 国税庁「No.1465 株式等の譲渡損失(赤字)の取扱い」
- 国税庁「No.1476 特定口座制度」
- 国税庁「No.1331 上場株式等の配当等に係る申告分離課税制度」
高原 祥子