6. 【元厚生労働省担当記者の視点】検証:公務員の年収を民間と比べにくいのは、月例給・ボーナス・退職給付を別々の物差しで民間に合わせる設計の結果

「公務員の年収は民間より高いのか」という問いに、一つの数字で答えるのは難しいと感じます。人事院の比較は、月例給は4月分の金額、ボーナスは過去1年の支給月数、退職給付はおよそ数年ごとの別の調査と、部分ごとに物差しを変えて民間に合わせる組み立てになっているためです。

月例給で役職段階・勤務地域・学歴・年齢をそろえるのは、公務員と民間で人員の構成が違うからだと考えられます。全体の平均どうしを並べると、年齢が高い人や管理職が多い側が高く見えてしまいます。今回、同じ条件にそろえた結果、民間が月1万5056円上回っていたことは、平均の印象と比べ方の結果が一致しない例だといえるでしょう。

比べる相手を企業規模100人以上に限っている点も、読み方に関わります。民間の大学卒・男性の60歳までの賃金は、企業規模によって約8710万円の幅がありました。比較の対象を変えれば較差の数字も変わるため、対象の線引きは恣意的に動かすものではなく、公務の職務・職責や人材確保の状況に照らして見直されたものと捉えると理解しやすいでしょう。

退職給付では、公務と民間の差が0.06%と小さい一方で、民間は半分以上が企業年金、公務は約9割が退職手当でした。総額がそろっていても、いつ・どの形で受け取るかは違います。組織のリスク管理でも、総額だけでなく受け取りの時期と形を分けて見ることが基本になりますが、家計でも同じで、一時金と年金では老後の資金の組み立て方が変わってきます。

公務員と民間のどちらの年収が高いかは、比べる部分と条件を決めないと答えが出ない問いです。自分の場合を考えるときは、月例給、ボーナスの月数、退職給付、60歳以降の給与をそれぞれ確かめ、同じ条件の数字どうしで並べることが実務的には有効です。給与の制度は情報の非対称性を抱えやすい分野であり、比べ方を知ること自体が判断の材料になると考えています。

7. まとめ

公務員の年収を民間と比べる人事院の方法は、役職段階・勤務地域・学歴・年齢をそろえた4月分の給与の比較で、令和8年は民間が月1万5056円(3.51%)上回りました。ボーナスは民間の過去1年の支給割合4.72月分をもとに、4.65月分から4.70月分への引き上げが勧告され、10月9日(金)に給与法の改正案が閣議で決定されています。

生涯で見ると、民間の大学卒・男性は60歳までの賃金が生涯の約77%を占め、企業規模で約8710万円の幅があります。退職給付の官民差は0.06%でしたが、民間は半分以上が企業年金という違いがあります。最新の数字は、人事院の勧告や内閣人事局の資料で確かめることができます。

※本記事の試算は一定の前提に基づく概算です。給与・退職給付の制度と数字は記事作成時点のもので、給与の改定は法律の成立によって決まります。実際の給与や退職給付の額は、職種・級・勤続年数・勤務地域などによって異なります。最新の情報は、人事院・内閣人事局・勤務先の人事担当の案内でご確認ください。

参考資料

齊藤 慧