「公務員の年収は民間より高い」「退職金まで含めると生涯の差はもっと大きい」といった声を耳にすることがあります。一方で、毎年8月の人事院勧告では、公務員の給与を民間に合わせて引き上げる内容が続いています。公務員の年収と民間の差は、どの数字をどう比べるかで見え方が変わります。

厚生労働省の記者クラブで制度を取材してきた経験からお伝えすると、公的な比較の数字は「何と何を、どの条件でそろえたか」を知ってはじめて読めるものです。ここでは、人事院が公務員の年収を民間と比べるしくみを、月例給・ボーナス・退職給付に分けて見ていきます。

あわせて、民間の大学卒の生涯賃金の構成と、退職給付の官民比較の中身を計算しました。

※月1万5056円(3.51%)は、人事院「令和8年人事院勧告」の別表第3に示された、民間給与(44万3507円)と国家公務員給与(行政職俸給表(一)、42万8451円)の較差です。

1. 公務員の年収は民間より高い?人事院の比較では、役職段階・勤務地域・学歴・年齢をそろえた4月分の給与で民間が月1万5056円(3.51%)上回った

人事院は、国家公務員の給与水準を民間企業の従業員の給与水準と均衡させること(民間準拠)を基本に勧告を行っています。公務員の年収を民間と比べるときの物差しは、全体の平均どうしではありません。人事院の資料から、月例給の比べ方を並べると次のとおりです。

  • 【比べる人】国家公務員は一般の行政事務を行う行政職俸給表(一)の職員、民間はこれに類似する事務・技術関係職種の従業員
  • 【比べる給与】双方の4月分の給与
  • 【そろえる条件】役職段階・勤務地域・学歴・年齢を同じくする人どうしで比べる(ラスパイレス方式)
  • 【民間の対象】企業規模100人以上、かつ事業所規模50人以上の事業所。令和8年の調査では8144事業所の調査が完了

比較の対象とする民間の企業規模は、これまで50人以上とされてきましたが、令和7年から100人以上に見直されました(人事院月報 2026年1月号「国家公務員給与等実態調査及び職種別民間給与実態調査の概要」)。

令和8年8月7日(金)の勧告では、この方法で比べた4月分の給与が、民間44万3507円、国家公務員42万8451円でした。同じ条件にそろえると、民間が月1万5056円(3.51%)上回っていたことになります。12か月分に直すと約18.1万円です。

政府は10月9日(金)の閣議で、公務員の給与改定に関する取扱いと、一般職の職員の給与に関する法律(給与法)の改正案を決定しました。給与が実際に改定されるのは、この法律が成立してからです。

※試算の前提:月例給の較差1万5056円を12倍した額です。ボーナスや手当の改定、税金・社会保険料は考えていません。