7. 【元銀行員の視点】検証:奨学金の肩代わりは「誰の借金か」で税が決まり、残りを一括で返すほど贈与税は大きくなる

試算では、第一種奨学金の返還例で、卒業直後に残り約259.2万円を一括で肩代わりすると贈与税は約14.9万円、5年返したあとの約172.8万円なら約6.3万円でした。毎月1万4400円の返還額に直すと、約10.4か月分と約4.4か月分にあたります。

同じお金でも、在学中に親が授業料として払えば非課税になりうるのに対し、卒業後に奨学金の残りとして返せば贈与、と扱いが分かれます。教育のためのお金かどうかではなく、払った時点で「誰の借金を返したのか」で決まる、という点は知っておいていただきたいところです。

銀行で住宅ローンのご相談をお受けしていた頃も、繰上返済で残高が減るのは、ローンを借りたご本人の借金でした。奨学金の繰上返還も、減るのは奨学生本人の借金です。親のお金で返しても、前倒しで返したのは子ども本人という扱いになります。

一方で、繰上返還には利点もあります。日本学生支援機構によると、有利子の第二種奨学金は、繰り上げた期間の利子はかかりません。肩代わりの額を、毎月の返還分にとどめるか、一括にするかは、利子と贈与税の両方を並べて考えることができます。

肩代わりを考えるときは、まず返還残額と、第一種・第二種のどちらかを、日本学生支援機構で確かめていただきたいところです。そのうえで、その年にほかの贈与がないかも含めて、110万円を超えるかどうかを見ておくと、申告の要否を判断しやすくなります。

8. まとめ

子どもの奨学金を親が肩代わりすると、子どもの借金を返したことになり、相続税法第8条で贈与とみなされます。教育費の非課税は必要な都度直接充てるものに限られ、学費を払い終えたあとの返済は、この形にあたりにくいと考えられます。

第一種奨学金の返還例では、5年返したあとの残り約172.8万円を一括で返すと贈与税は約6.3万円で、残りが110万円以下になる8年8か月目以降は0円です。2026年中の肩代わりで110万円を超えるなら、2027年3月15日(月)までの申告が必要です。分け方や保証人としての支払いの扱いは、税務署で確かめていただきたいところです。

※本記事の試算は一定の前提に基づく概算です。実際の贈与税は、その年に受けたほかの贈与や奨学金の種類、返還の状況などで変わります。贈与税の扱いは税務署で、奨学金の返還残額や繰上返還の手続きは日本学生支援機構でご確認ください。

参考資料

中本 智恵