5. 奨学金の肩代わりを毎年110万円以内に分けると?贈与税はかからないこともあるが、最初に「毎年返す」と約束すると定期金の贈与になる場合も

5年返したあとの残り約172.8万円を2年に分け、1年約86.4万円ずつ肩代わりすれば、ほかに贈与がない限り、各年の合計は110万円以下です。ただし、分け方によっては、まとめて贈与されたものとして扱われることがあります。

国税庁のタックスアンサー「No.4402 贈与税がかかる場合」のQ&Aでは、親から毎年100万円ずつ10年間贈与を受ける例で、次のように整理されています。

  • 【毎年贈与契約を結び、毎年贈与する場合】各年の合計が110万円以下なら贈与税はかからず、申告もいらない
  • 【毎年100万円ずつ10年間贈与することを最初に約束した場合】約束をした年に、定期金に関する権利の贈与を受けたものとして贈与税がかかる

奨学金の残りを「何年かに分けて親が全部返す」と最初に決めてしまうと、この「約束」にあたるかどうかが問われることになります。その年ごとに、親が出すかどうかと金額を決めるのが、通常の暦年課税の形です。

また、国税庁「No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)」によると、2024年1月1日以後の暦年課税の贈与は、贈与した人が亡くなったとき、相続開始前7年以内の分が相続税の計算に足し戻されます。相続で財産を受け取る子どもへの肩代わりは、この対象になります。

6. 連帯保証人の親が奨学金を払った場合は?子どもに返してもらわなければ贈与とみなされ、子どもが資力を喪失していれば例外も

日本学生支援機構「第一種奨学金の人的保証制度」では、連帯保証人は原則として父母です。奨学生本人が返還を延滞すると、日本学生支援機構は連帯保証人に請求します。連帯保証人が返すべき額は、本人の返還未済額の全額です。

連帯保証人として親が払った場合も、贈与税と無関係ではありません。国税庁の相続税法基本通達(第8条関係)では、次のように示されています。

  • 【保証人が代わりに返し、子どもへの求償権を放棄した場合】代わって返した金額が、贈与とみなされる(8-3)
  • 【子どもが資力を喪失して返すことが困難な場合】扶養義務者が返した額のうち、返すことが困難な部分は贈与とみなさない(相続税法第8条ただし書)
  • 【資力を喪失して返すことが困難な場合とは】借金の額が財産の額を超えるなど、社会通念上、支払いができないと認められる場合(7-4・8-4)

生活が苦しそうに見えるというだけでは、資力の喪失にはあたりにくいと考えられます。日本学生支援機構には、返還が難しいときに返還月額を減らす減額返還や、返還を待ってもらう返還期限猶予の制度もあります。なお、これらの適用期間中は繰上返還ができません。