6. 【証券会社出身の視点】検証:米国ETFの米国の遺産税は「税額」より「申告の手間」が先に来る
この記事では、米国ETFを持ったまま亡くなった場合の米国の遺産税の対象と申告の目安、条約の控除を使う場合と使わない場合の税額、そして日本の相続税との関係をご紹介しました。日本と米国を合わせた遺産が1億4025万円の例では、条約の控除を使えば米国の遺産税は0ドルでした。
注意していただきたいのは、税額が0ドルになる場合でも、米国の財産が6万ドルを超えていれば申告が必要になる点です。按分の控除を使うには、日本の財産も含めた遺産全体の額を書き、その裏付けの書類を添えることになります。英語での申告を、亡くなった日から9か月以内に進めることになります。
確認していただきたい観点を、順に整理します。第一に、米国の法人の株式やETFを、円に直していくら持っているか。6万ドルは1ドル157.35円なら約944万円で、為替が円安になるほど円で見た目安は上がります。第二に、その資産を日本の証券会社のどの口座で、どの名義で持っているか。第三に、ご家族が口座の存在を知っているかどうかです。
また、ここで計算したのは、米国の財産が米国ETFだけで、債務や葬式費用などの控除を考えない場合です。米国の不動産を持っている、米国の市民権や永住権がある、といった場合は前提が変わります。為替の水準や控除額も年ごとに変わります。
米国ETFを持つかどうかを税額だけで決めるより、受け継ぐときにどのような手続きが必要になるかを先に知っておくと、どの資産をどの形で持つかも決めやすくなります。保有の内容を書き出しておくことから始めてみてください。
※本記事は特定の金融商品をすすめるものではありません。
7. まとめ
米国ETFは米国の法人の株式として、日本の証券会社の口座で持っていても米国の遺産税の対象になりえます。米国の財産が6万ドル(約944万円)を超えると申告が必要で、非居住者の控除1万3000ドルだけで計算すると、25万ドル分で約5万7800ドル(約909.5万円)になります。
日本に住む人は、日米相続税条約にもとづく按分の控除を使うことができ、遺産1億4025万円の例では米国の遺産税は0ドルでした。日本の相続税では米国ETFも対象で、米国で払った遺産税は上限の範囲で差し引けます。制度の詳しい内容は、IRSや国税庁のホームページで確かめることができます。
※本記事の試算は一定の前提に基づく概算です。円の金額は1ドル157.35円で換算しており、実際の税額は亡くなった日の財産の価額、為替、債務などの控除によって変わります。本記事は特定の金融商品をすすめるものではありません。最新の制度の内容は、IRS(米国内国歳入庁)や国税庁のホームページでご確認ください。
参考資料
- IRS「Estate tax for nonresidents not citizens of the United States」
- IRS「Instructions for Form 706-NA」
- IRS「Instructions for Form 706」
- 国税庁「No.4152 相続税の計算」
- 国税庁「No.4155 相続税の税率」
- 国税庁「令和6年分 相続税の申告事績の概要」
- e-Gov法令検索「相続税法」
- 日本銀行「時系列統計データ検索サイト」
安達 さやか