5. iDeCoの併用はどう組み合わせる?一時金は退職所得控除の残り、年金は60〜64歳の年60万円までに分けると、試算の前提では増加は0円
併用では、一時金の部分は退職所得控除を、年金の部分は公的年金等控除を使います。2つの控除の空いている枠に分けて受け取ると、どちらの枠も超えない組み合わせを作れることがあります。
- 【一時金の部分】退職所得控除のうち、退職金で使っていない残りの額まで
- 【年金の部分】60〜64歳なら、ほかの公的年金等と合わせて年60万円まで
財務省「令和7年度税制改正の大綱」によると、2026年1月1日以後に受け取る退職金について、その前年以前9年内にiDeCoの一時金を受け取っていた場合は、退職所得控除の計算で勤続期間の重なりが調整されます(改正前は4年内)。この調整の対象は一時金で、年金で受け取る分は退職所得ではありません。
また、2026年12月1日(火)からの70歳になるまでの加入は、iDeCoの老齢給付金を受給していないことが要件の一つです。60歳以降もiDeCoに掛金を出し続けるかどうかで、受け取りを始める時期の選び方も変わります。
6. 【検証】試算から見えること:iDeCoの受け取り方は、どの控除の枠が空いているかで税金と保険料が変わる
同じ300万円でも、試算の前提では、増える税金と保険料は0円から約81万円まで開きました。差を生んだのは、受け取る時期に、退職所得控除と公的年金等控除のどちらの枠が空いているかです。
60〜64歳は、特別支給の老齢厚生年金がない世代では公的年金を受け取らないため、公的年金等控除の60万円がまるごと空いています。65歳からは、平均的な厚生年金を受け取る人なら、公的年金だけで110万円の枠が埋まっています。
- 【65歳から・同じ年30万円】男性の平均年金で年約8.1万円、女性の平均年金で年約5.2万円の増加
- 【同じ300万円・一時金】退職金で控除を使い切っていても約23万円
65歳から10年で年金で受け取る場合は、退職所得控除を使い切った一時金よりも、増える税金と保険料が多くなる例もありました。年金で受け取る分は、所得税・住民税に加えて、国民健康保険料と介護保険料の段階にも影響するためです。
女性の平均年金の例では、iDeCoの年30万円で住民税が非課税から課税に変わり、増加の約5.2万円のうち約3.6万円は介護保険料でした。住民税が非課税かどうかで決まる負担は、税率だけを見ていると見落としやすい部分です。
一時金・年金・併用のどれが向いているかは、退職金の有無と額、60〜64歳の働き方と収入、65歳からの公的年金の額で変わります。iDeCoの受け取り方は、受け取る時期に空いている控除の枠を確かめる仕組みと捉えると整理しやすくなります。
7. まとめ
iDeCoの受け取り方は、一時金なら退職所得控除、年金で受け取るなら公的年金等控除を使います。試算の前提では、300万円を60〜64歳に年60万円ずつ受け取ると税金と保険料の増加は0円、65歳から10年で受け取ると男性の平均年金で約81万円、女性の平均年金で約52万円でした。
2026年12月1日(火)からは、老齢基礎年金やiDeCoの老齢給付金を受給していないなど一定の要件を満たす人は、70歳になるまでiDeCoに加入できます。勤め先の退職金の額と受け取る年、iDeCoの加入期間、ねんきん定期便の年金見込額をそろえておくと、受け取り方を比べやすくなります。
※本記事の試算は一定の前提に基づく概算です。実際の税金と保険料は、ほかの所得、世帯の状況、加入している医療保険、お住まいの自治体などによって変わります。詳しくは国税庁のホームページや税務署、iDeCoの運営管理機関、お住まいの市区町村でご確認ください。
参考資料
- 国税庁「No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」
- 国税庁「No.1600 公的年金等の課税関係」
- 国民年金基金連合会 iDeCo公式サイト「給付について」
- 厚生労働省「2025年の制度改正」
- 日本年金機構「特別支給の老齢厚生年金」
- 大田区「国民健康保険料計算方法」
- 大田区「介護保険料」
安達 さやか