4. 管理職でも深夜の割増賃金は出る?22時から翌5時の勤務には、1時間あたり約585円の割増がつく
東京労働局「しっかりマスター 労働基準法 管理監督者編」によると、管理監督者であっても、深夜割増賃金(22時から翌5時まで)は支払う必要があります。年次有給休暇も、一般の社員と同じように与える必要があります。
東京労働局「しっかりマスター 労働基準法 割増賃金編」によると、深夜の割増率は25%以上です。所定内給与37万9000円を所定内の労働時間162時間で割ると、1時間あたり約2340円になり、深夜の割増は1時間あたり約585円です。
- 【深夜の勤務が月5時間】割増は月約2900円、年約3.5万円
- 【深夜の勤務が月10時間】割増は月約5800円、年約7万円
※1時間あたりの賃金は、本来は家族手当や通勤手当などを除いた月給を、1年間の1か月平均所定労働時間で割って求めます。ここでは統計の所定内給与と所定内の労働時間から概算しています。
5. 残業代が多い人ほど、管理職になったあとの逆転は遠い?残業が月20時間ならボーナスは約1.55倍、月30時間なら約1.82倍が必要
残業の時間が長いほど、管理職になって残業代がなくなったときの手取りの差は大きくなります。1時間あたり約2340円の賃金を時間外の割増率25%の分だけ1.25倍して残業代を求め、ボーナスがいくら増えれば手取りが並ぶかを試算すると、次のとおりです。
- 【残業が月20時間(残業代 月約5.8万円)】手取りの差は年約49.9万円。ボーナスは約69.9万円増(約1.55倍)が必要
- 【残業が月30時間(残業代 月約8.8万円)】手取りの差は年約70.1万円。ボーナスは約104.8万円増(約1.82倍)が必要
- 【残業が月45時間(残業代 月約13.2万円)】手取りの差は年約104.4万円。ボーナスは約160.3万円増(約2.25倍)が必要
※試算の前提:所定内給与月37万9000円、ボーナス年127万8700円、社会保険料・税は前の章と同じ。月45時間は、東京労働局「しっかりマスター 労働基準法 割増賃金編」の時間外労働の限度時間(1か月45時間)です。
6. 【検証】試算から見えること:管理職の残業代は月給の一部として保険料が区分で決まり、ボーナスは1000円単位で保険料がかかる
試算では、40代前半の正社員の平均で、残業代がなくなると手取りは年約31.6万円減り、ボーナスで並べるには年収の差の約43.1万円より多い約44.3万円の上乗せが必要でした。
理由の一つは、社会保険料のかかり方の違いです。月給の社会保険料は、月給をいくつかの区分に当てはめた標準報酬月額で決まります。残業代込みの月41万4900円は41万円の区分、残業代なしの月37万9000円は38万円の区分で、残業代の約3.6万円に対して区分は3万円しか上がりません。
一方、ボーナスの社会保険料は、1000円未満を切り捨てた額(標準賞与額)にかかります。増えたボーナスには、ほぼそのまま社会保険料と税金がかかるため、年収の差を埋めるだけでは手取りが並びません。
月給とボーナスの合計だけを見ると、管理職になったあとの年収が残業代のあったころと同じなら「変わらない」と見えます。手取りで並べるには、増えたボーナスから社会保険料と税金が引かれる分まで見込む必要があります。
また、管理職としての扱いが労働基準法の管理監督者に当たるかどうかは、職務内容や権限、勤務の実態で判断されます。昇進の前に、役職手当やボーナスの決まりとあわせて、勤務時間の扱いを会社の就業規則などで確かめておくと、手取りの見通しを立てやすくなります。
7. まとめ
管理職になって労働基準法の管理監督者として扱われると、残業代は出なくなります。40代前半の正社員の平均で試算すると、年収は約43.1万円、手取りは年約31.6万円減り、ボーナスで手取りを並べるには約44.3万円の上乗せ(約1.35倍)が必要でした。
管理監督者でも、22時から翌5時の深夜の割増賃金は出ます。管理職への昇進を考えるときは、年収だけでなく、残業代・ボーナス・役職手当がそれぞれどう変わるかを手取りで比べておくと判断しやすくなります。
※本記事の試算は一定の前提に基づく概算です。手取りは扶養家族の有無、住んでいる地域、加入している健康保険などで変わります。管理監督者に当たるかどうかや割増賃金の扱いは、勤め先の就業規則や労働基準監督署でご確認ください。
参考資料
- 東京労働局「しっかりマスター 労働基準法 管理監督者編」
- 東京労働局「しっかりマスター 労働基準法 割増賃金編」
- 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」
- 全国健康保険協会「令和8年度の協会けんぽの保険料率」
- 日本年金機構「厚生年金保険料額表」
- 山形労働局「令和8年度の雇用保険料率について」
- 国税庁「No.1410 給与所得控除」
- 国税庁「No.1199 基礎控除」
- 国税庁「No.2260 所得税の税率」
- 総務省「個人住民税」
安達 さやか