大雨や台風のあと、屋根の点検をきっかけに、高額な屋根工事の契約を急かされたという相談が寄せられています。屋根工事の点検で「放置すると雨漏りする」と言われると、契約を急いだほうがよいのか迷うところです。
消費者庁が2026年9月17日に公表した「PIO-NETデータを用いた訪問販売等に関する分析調査報告書」では、代金を支払った訪問販売の相談のうち、解約や返金、クーリング・オフの回避に関する記述を含むものが、2024年度に415件ありました。
屋根工事の点検商法の相談件数と契約金額、クーリング・オフの条件、「火災保険で直せる」と勧められたときの注意点を、公的資料で整理します。
1. 屋根工事の点検をきっかけにした相談は増えている?2022年度は2885件で、2018年度の約3倍
国民生活センターは、「屋根瓦がずれているので点検してあげる」などと言って点検し、不安をあおって工事の契約をさせる手口を「点検商法」と呼んでいます。屋根工事の点検商法に関する相談件数は、次のとおりです。
- 【2018年度】923件
- 【2019年度】1157件
- 【2020年度】1824件
- 【2021年度】2352件
- 【2022年度】2885件
2022年度は2018年度の約3倍で、点検商法の相談全体のうち屋根工事は35.4%を占めました。契約当事者の8割超が60歳以上です。
点検商法の相談全体は、2023年度の1万2550件から、2024年度は1万9249件、2025年度は1万9696件に増えています。2026年度も5月31日までに2193件と、前年同期の2012件を上回っています。
※件数は、全国の消費生活センター等に寄せられ、国民生活センターのデータベース(PIO-NET)に登録された相談です。屋根工事の件数は2023年8月31日までの登録分です。
2. 屋根工事の契約額はいくら?点検商法の相談では平均約132万円、最も多いのは100万円以上500万円未満で約4割
国民生活センターによると、2022年度に屋根工事の点検商法の相談に寄せられた契約の金額は、平均で約132万円でした。金額帯ごとの件数は次のとおりです。
- 【10万円未満】98件(約5.7%)
- 【10万円以上50万円未満】437件(約25.2%)
- 【50万円以上100万円未満】422件(約24.3%)
- 【100万円以上500万円未満】738件(約42.6%)
- 【500万円以上】39件(約2.2%)
契約額が50万円以上の相談は約69.1%、100万円以上は約44.8%でした。数百万円の屋根工事の契約は、相談の中では珍しくない金額帯です。
※割合は、金額が分かる相談1734件をもとにLIMO編集部が計算しました。これは相談に寄せられた契約の金額で、屋根工事一般の費用を示すものではありません。工事の費用は、傷みの範囲や工法、足場の有無などで変わります。
3. 屋根工事の契約はクーリング・オフできる?訪問販売に当たれば、書面を受け取った日から8日以内なら解除できる
消費者庁「特定商取引法ガイド」によると、訪問販売で契約した場合、法律で決められた書面を受け取った日から数えて8日以内であれば、書面または電磁的記録(メールなど)で契約を解除できます。これがクーリング・オフです。
- 【期間】契約書面を受け取った日から8日以内
- 【方法】書面(特定記録郵便・書留・内容証明郵便など)か、メールなどの電磁的記録。証拠を残しておく
- 【工事をしたあと】すでに工事が始まっていても、費用を払う必要はなく、建物などを元に戻すよう無償で求められる
- 【期間を過ぎても】事業者がクーリング・オフについてうその説明をしたり、威迫したりして妨げた場合は、期間を過ぎてもできる
ただし、特定商取引法第26条第6項は、自宅で契約することを消費者のほうから求めた場合の訪問販売を、クーリング・オフなどの対象外としています。点検や見積もりを頼んだときの扱いは、やりとりの中身によって変わるため、自己判断せず消費生活センター等で確かめましょう。
また、事実と違う説明を信じて契約した場合は、クーリング・オフの期間を過ぎても、契約を取り消せることがあります。国民生活センターは、誤認に気づいた時から1年間、または契約から5年間を例に挙げています。
4. 屋根工事を「火災保険で直せる」と勧められたら?保険金が使えるという住宅修理の相談は2019年度に2684件で、2010年度の約24倍
国民生活センターは、「保険金を使って自己負担なく住宅修理ができる」と勧誘される住宅修理サービスについても注意を呼びかけています。2020年10月の公表では、相談件数は次のように増えていました。
- 【2010年度】111件
- 【2016年度】1082件
- 【2019年度】2684件(2010年度の約24倍)
同センターによると、手数料が高額なのに説明が不十分だった、工事をしないなら保険金の5割を違約金として払う契約だった、といった相談が寄せられています。台風が多い10月前後に、勧誘や契約が増える傾向もあります。
経年劣化による傷みは、自然災害による損害ではないため、保険金の支払いの対象になりません。うその理由で保険金を請求すると、保険会社から返還を求められたり、保険契約を解除されたりするほか、詐欺罪に問われるおそれもあります。保険金のことは、業者ではなく、契約している保険会社か代理店に直接尋ねましょう。
※件数は2020年10月公表時点の数字です(2020年8月31日までの登録分)。
5. 【検証】試算から見えること:屋根工事の点検商法は、金額が大きく、急かされやすい時期がある
今回の数字から、3つのことが読み取れます。1つは、相談に寄せられた屋根工事の契約は、金額が大きいことです。2022年度の平均は約132万円で、100万円以上の契約が約44.8%を占めました。
2つ目は、相談が増える時期があることです。国民生活センターによると、屋根工事の点検商法の相談は、例年6月と9月から11月に増えています。大雨や台風のあとは、屋根の傷みが気になりやすい時期と重なります。
3つ目は、点検商法の対象が屋根にとどまらないことです。国民生活センターの事例には、分電盤や給湯器、太陽光発電システムの点検をきっかけにした契約も挙がっています。点検商法全体の相談は、2025年度に1万9696件で、2023年度の約1.57倍でした。
高額な見積もりを受け取ったからといって、それだけで不当な契約とは言えません。一方で、その場での契約を求められたときは、すぐに決めないことが大切です。国民生活センターは、家を建てた工務店等に相談すること、1社だけでなく複数社から見積もりを取って比べること、見積書の不明点は納得いくまで確かめることを勧めています。
6. まとめ
屋根工事の点検商法の相談は、2022年度に2885件と2018年度の約3倍に増え、相談に寄せられた契約の金額は平均約132万円でした。訪問販売に当たれば、契約書面を受け取った日から8日以内はクーリング・オフができます。
屋根の点検で工事の契約を急かされたときは、その場で決めず、家族にも相談しましょう。不安を感じたときや契約してしまったときは、消費者ホットライン「188」に電話すると、最寄りの消費生活センター等を案内してもらえます。
※本記事の数字は、国民生活センターに登録された相談をもとにしたもので、すべての契約や工事の実態を示すものではありません。クーリング・オフや契約の取消しができるかどうかは、契約の形や経緯によって異なります。困ったときは、消費者ホットライン「188」で最寄りの消費生活センター等にご相談ください。