3. 【年金との調整】特別支給の老齢厚生年金を受け取りながら給付金を受けると

次に、年金との関係を見ていきます。

3.1 特別支給の老齢厚生年金(在職老齢年金)との併給調整

同資料によると、特別支給の老齢厚生年金(在職老齢年金)を受け取りながら、高年齢雇用継続給付も受けている期間は、年金の一部が支給停止される場合があります。令和7年4月1日以降に60歳になった人などでは、標準報酬月額が60歳到達時の賃金月額の64%以下のときは、標準報酬月額の4%にあたる金額が支給停止されます。64%を超えて75%未満のときは、4%から少しずつ下がる率で計算した金額が支給停止されます。75%以上のときや、標準報酬月額が支給限度額以上のときは、調整は行われません。給付金が支給されない月も同じです。

日本年金機構の「年金と雇用保険の高年齢雇用継続給付との調整」によると、60歳到達日が令和7年4月1日より前の人が高年齢雇用継続基本給付金を受ける場合などは、支給停止される年金の金額は、標準報酬月額の最大6%にあたる金額になります。同じ給付金でも、いつ60歳になったかで、年金の止まり方まで変わる点は見落としやすいところです。自分がどちらにあたるのかを、60歳になった日から確かめておくと安心でしょう。

3.2 給付金と年金の両方を受け取る人が確かめたいこと

給付金を受けると年金の一部が止まることがあるため、両方の金額を合わせた手取りで考えることが大切でしょう。自分が受け取る年金の見込額は、ねんきん定期便で確かめておきましょう。年金の見込額と給付金の目安を並べて、65歳までの毎月の手取りを一度計算してみるとよいでしょう。

給付金が増えると年金が少し減る、という仕組みは分かりにくいかもしれません。どちらか一方だけで判断しないようにしたいところです。年金の一部が止まると聞くと損をしたように感じるかもしれません。それでも、給料と給付金と年金を合わせた手取りで比べてみると、受け止め方が変わることもあるでしょう。年金の見込額は、ねんきんネットでも確かめられます。

4. 【手続きの流れ】原則として勤め先を通じて、2か月ごとに支給申請

給付金の手続きは、原則として勤め先を通じて行います。

4.1 勤め先を通じてハローワークに出す

同資料によると、高年齢雇用継続給付は働いている人を対象とした給付金で、手続きは事業主を通じて行うよう案内されています。初めての支給申請は、給付を受けたい最初の月の初日から数えて4か月以内に出す必要があります。支給申請は、原則として2か月ごとに行います。なお、本人が申請を希望する場合は、本人が出すこともできます。勤め先によって手続きの進め方は違うこともあるため、どちらで出すのかを早めに話し合っておくと、申請の遅れを防ぎやすいでしょう。

4.2 65歳になる月で、給付は終わる

同資料によると、高年齢雇用継続基本給付金が支給されるのは、65歳に達する月までです。給付金で補っていた分は、65歳を境になくなります。65歳の前後で毎月の収入がどう変わるかを、早めに確かめておくとよいでしょう。働き続ける場合は、年金と給料の組み合わせ方も、あわせて考えておきたいところです。

4.3 賃金証明書などが出ないと、受けられなくなることも

同資料では、賃金証明書や受給資格確認票の提出がなかったり遅れたりすると、給付を受けられなくなることがあると注意を促しています。60歳を迎える前に、勤め先の人事や総務の担当者に、手続きの進め方を一度確かめておくと安心でしょう。再雇用の契約を結ぶときに、給付金の書類の準備の時期も一緒に確かめておくと、手続きの遅れを防ぎやすくなるでしょう。給与明細や振込の記録を見て、2か月ごとにきちんと入っているかを確かめる習慣をつけておくと安心です。給付の要件や金額は、法律の改正で見直されることがあります。判断に迷うときは、勤め先とハローワークの案内で最新の内容を確かめておきましょう。

5. 【60歳以降の働き方を考える前に】給料・給付金・年金を同じ紙に並べる

ここまでの決まりを、わが家の給料に当てはめて考えてみます。

5.1 60歳時点の賃金と、60歳以降の見込みの給料を並べる

まずは、60歳時点の賃金の見込みと、再雇用などで60歳以降にもらえる給料の見込みを書き出してみましょう。下がる割合が分かれば、給付金がどのくらい受けられるかの目安が立ちます。勤め先の再雇用の条件や、給与明細を手元に置いて確かめると、数字を出しやすくなるでしょう。

5.2 給付金と年金を合わせた手取りで、65歳までの家計を考える

次に、給付金と、特別支給の老齢厚生年金を受け取れる人はその金額も合わせて、65歳までの毎月の手取りを並べてみましょう。足りない分がある場合は、貯蓄からどのくらい取り崩すのかも考えておく必要があります。65歳からは給付金がなくなり、収入の柱が年金に変わります。60歳から65歳までの5年間を、老後の家計の準備期間と位置づけておくと、65歳から先の働き方やお金の計画も立てやすくなるでしょう。給料が下がる割合によっては、働く日数や時間を見直すことも考えられます。

ただし、給付金のためだけに働き方を決めるのではなく、体力や家族の事情も含めて考えることが大切でしょう。配偶者の働き方や年金の受け取り時期もあわせて書き出しておくと、家族全体の収入の流れが見えてくるでしょう。60歳以降の5年間は、収入が少しずつ変わっていく時期です。給料、給付金、年金のどれが、いつ、どのくらい入るのかを1枚にまとめておくと、急な出費があっても慌てずに済むのではないでしょうか。

給付金は、あくまで下がった給料の一部を補うものです。受け取れる金額にばかり目を向けるより、60歳以降の5年間をどう働き、どのくらい貯蓄を残して65歳を迎えたいのかを先に考えておくと、給付金の使い道も決めやすくなるでしょう。

6. まとめにかえて

まずは、60歳時点の賃金と、60歳以降の給料の見込みを書き出しましょう。次に、給料がどのくらい下がるかを計算し、給付金の目安を確かめましょう。そして、給付金と年金を合わせた手取りで、65歳までの家計を考えておきましょう。

高年齢雇用継続基本給付金は、令和7年4月以降に60歳になった人は支給率の上限が10%です。60歳以降も働き続ける人にとって、収入の一部を支える給付ですが、金額には上限があります。給付金をきっかけに、これからの働き方とお金の流れを家族で話し合い、65歳までの計画を立てておくことが大切ではないでしょうか。

参考資料

宮野 茉莉子