国税庁は、令和6年1月1日から令和8年12月31日までの贈与について、父母や祖父母など直系尊属から受けた住宅取得等資金を、省エネ等住宅で1000万円まで、それ以外の住宅で500万円まで非課税にすると案内しています。親から住宅購入の資金を援助してもらう予定がある人にとって、2026年12月31日は期限の日です。

ただし、枠を超えた分には贈与税がかかります。枠の内側に収まる場合でも、翌年2月1日から3月15日までに申告しなければ、特例は使えません。

この記事では、前半でこの疑問に、国税庁などの公表資料(2026年10月時点)と編集部の試算で答えます。後半では、非課税の対象、受贈者と住宅の要件、枠を超えた分の贈与税を順に確認します。個別の判断は、税務署に確認してください。

1. よくある疑問:親から500万円もらうなら年内が期限?全額非課税なら申告はいらない?

「親が来年の住宅購入に、500万円を出してくれると言っています。年内に渡してもらわないと損だと聞き、年末が近づくたびに気が急いています。500万円なら全額が非課税のはずなので、申告はしなくてもよいのでしょうか」。

この疑問は、一人の事情に見えますが、同じ仕組みは、親から住宅の資金を援助してもらう人にも当てはまりえます。答えは、次の3点です。

  • 非課税の対象は、令和8年12月31日までに受け取った住宅取得等資金です。省エネ等住宅で1000万円、それ以外の住宅で500万円までです
  • 全額が非課税でも、翌年2月1日から3月15日までの申告が必要です。申告しなければ、特例は使えません
  • 枠を超えた分は、暦年課税で計算されます。編集部の試算では、1500万円の贈与で、省エネ等住宅は48万5000円、それ以外の住宅は177万円です

2. 住宅取得等資金の贈与税の非課税はいくらまで?年内の受け取りや申告など4つの場合を国税庁の資料と試算で確認

読者の方が気にしそうな「もし」を、国税庁の資料と編集部の試算で確認します。いずれも、ご自身の贈与税を確定するものではありません。

  • もし、年内(2026年12月31日まで)に受け取ったら:省エネ等住宅で1000万円、それ以外の住宅で500万円まで、贈与税が非課税です
  • もし、全額が非課税の範囲なら:翌年2月1日から3月15日までの申告は、必要です
  • もし、1500万円を贈与してもらったら:贈与税は、省エネ等住宅で48万5000円、それ以外の住宅で177万円です(編集部試算)
  • もし、配偶者の親からの贈与や、住宅ローンの返済に充てる贈与なら:対象外です

ここからは、この答えの前提になる制度を順に確認します。対象になる期間、非課税の枠、対象外のケース、受贈者と住宅の要件、枠を超えた分の贈与税の順です。

3. 非課税の対象は令和8年12月31日までに受け取った住宅資金の贈与

この特例の対象になるかどうかは、いつ、誰から、何のために受け取ったお金なのかで決まります。国税庁のタックスアンサー(令和8年4月1日現在法令等)に沿って、順に確認します。

対象になるのは、令和6年1月1日から令和8年12月31日までの間に、父母や祖父母など直系尊属からの贈与で取得した金銭です。

国税庁の文言は「金銭を取得した場合」です。住宅の契約日や引渡日ではなく、お金を受け取った時期が期間に入っているかどうかが基準になります。

使い道は、自分が住む家の新築、取得、増改築等の対価に限られます。新築や取得には、その敷地の土地等の取得も含まれます。

過去にこの特例で非課税になった金額がある人は、その分を差し引いた残りが限度額になります(一定の場合を除きます)。

4. 非課税は省エネ等住宅で1000万円、それ以外の住宅で500万円まで

非課税になる上限は、贈与を受ける人1人につき、家の性能によって2段階に分かれます。

省エネ等住宅であれば1000万円、それ以外の住宅であれば500万円までです。差は500万円あり、この差は後で見る贈与税の計算にそのまま響きます。

4.1 省エネ等住宅とみなされる基準

省エネ等住宅とは、省エネルギー性能、耐震性能、バリアフリー性能のいずれかの基準に当てはまり、その証明書類を贈与税の申告書に添付した住宅用の家屋をいいます。基準は家屋の区分で異なります。

  • 新築した家屋、または建築後使用されたことのない家屋は、断熱等性能等級5以上かつ一次エネルギー消費量等級6以上、耐震等級2以上または免震建築物、高齢者等配慮対策等級3以上のいずれかが基準です。
  • 建築後使用されたことのある家屋、または増改築等をした家屋は、断熱等性能等級4以上または一次エネルギー消費量等級4以上、耐震等級2以上または免震建築物、高齢者等配慮対策等級3以上のいずれかが基準です。

令和5年12月31日までに建築確認を受けた家屋や、令和6年6月30日までに建築された家屋は、断熱等性能等級4以上または一次エネルギー消費量等級4以上であることを証明できれば、省エネ等住宅とみなされます。この場合は追加の書類が求められることがあります。

5. 配偶者の親・不動産・ローン返済は対象外

資金の出どころと使い道でも線が引かれています。国税庁の質疑応答に載っているケースと、要件の注意点を整理します。

  • 配偶者の親からの贈与は、直系尊属に当たらないため対象外です。ただし、配偶者の親と養子縁組をしていれば直系尊属に該当し、他の要件を満たせば適用を受けられます。
  • 祖父と父など贈与者が複数いる場合は、受け取った金額を合計して、そのうち1000万円までが非課税です。贈与者ごとに1000万円ではなく、受贈者1人についての限度額です。
  • 不動産そのものの贈与は対象外です。対象は、家の新築・取得・増改築等の対価に充てるための金銭の贈与に限られます。
  • 住宅ローンを返済するための金銭の贈与も対象外です。

たとえば、祖父から700万円、父から500万円を受け取ると、合計は1200万円です。省エネ等住宅なら1000万円までが非課税で、超える200万円が課税対象になります。それ以外の住宅では、500万円を超える700万円が課税対象です。

どちらも直系尊属からの贈与なので特例税率を使い、超えた分から基礎控除110万円を引くと、課税価格は省エネ等住宅で90万円、それ以外の住宅で590万円です。贈与税は、省エネ等住宅で9万円、それ以外の住宅で88万円になる試算です。

このほか、配偶者や親族など一定の特別の関係がある人から家屋を取得した場合や、その人との請負契約で新築・増改築をした場合も、要件を満たしません。

6. 【編集者の視点】

この特例の線引きは、細かく見えて、実際には「誰から」「何のために」「どの形で」の3点にまとまります。

見落としやすいのは名義です。国税庁は、受贈者が住宅用の家屋を所有することにならない場合(共有持分を持つ場合は含まれます)は、特例の適用を受けられないとしています。たとえば妻の親が妻に資金を贈与し、家屋を夫の単独名義にすると、妻は家屋を所有しないことになり、対象外です。妻の親から夫へ贈与する形にしても、配偶者の親からの贈与なので対象外になります。

贈与の前に、お金を受け取る人、登記簿に載る名義人、資金を出す人の続柄を、1枚の紙に並べて確認しておくと、取り違いに気づきやすくなります。

受け取った日と金額が通帳の記録で追える状態にしておくことも、申告のときに役立ちます。判断に迷う組み合わせは、贈与を受ける前に所轄の税務署や税理士に、続柄と名義、資金の使い道を具体的に伝えたうえで確認するのが確実です。

年内にと言われると、気持ちの準備より先に日付が迫ってくる感じがします。期限と上限額は、国税庁の資料にそのまま載っている数字です。まずこの2つだけを手元に置き、援助してくれる側と同じ数字を見ながら話せる状態をつくるところが、最初の一歩になります。

要件が並ぶと、どこかで外れていそうだと身構えたくなります。ひとつずつ、自分の年齢、その年の所得、家の広さを当てはめていけば、該当するかどうかは意外に早く見えてきます。全体を一度に理解しようとせず、順番に確かめる進め方で十分です。

同じ1500万円でも、家の性能の証明があるかどうかで税額が大きく変わります。表を見ると、家づくりの打ち合わせで性能の話が出る理由が腑に落ちます。贈与の話と家の話は、別々に進めるより、同じテーブルに並べて考える方が納得しやすくなります。

7. 受贈者と住宅の要件は年齢・所得・床面積で決まる

贈与を受ける人と、取得する家のそれぞれに要件があります。すべてを満たす必要があります。

7.1 受贈者の要件

  • 贈与を受けた時に、贈与者の直系卑属であることが必要です。
  • 贈与を受けた年の1月1日に、18歳以上であることが必要です。
  • 贈与を受けた年の合計所得金額が2000万円以下であることが必要です。新築等をする家屋の床面積が40平方メートル以上50平方メートル未満の場合は、1000万円以下になります。
  • 平成21年分から令和5年分までの贈与税の申告で、この特例の適用を受けたことがないことが必要です(一定の場合を除きます)。
  • 贈与を受けた年の翌年3月15日までに、住宅取得等資金の全額を充てて家屋の新築等をする必要があります。
  • 贈与を受けた年の翌年3月15日までにその家屋に居住するか、同日後遅滞なく居住することが確実と見込まれる必要があります。
  • 贈与を受けた時に日本国内に住所があることが必要です(一定の例外があります)。

7.2 取得する家屋の要件

  • 新築または取得する家屋は、登記簿上の床面積(マンションなどは専有部分)が40平方メートル以上240平方メートル以下で、その2分の1以上が自分の居住用であることが必要です。
  • 取得する家屋は、建築後使用されたことのないもの、または使用されたことのあるもので昭和57年1月1日以後に建築されたものなど、国税庁が定める条件のいずれかに当たることが必要です。
  • 増改築等の場合は、増改築等後の床面積が同じく40平方メートル以上240平方メートル以下で、工事費が100万円以上であることなどが必要です。

受贈者が家屋を所有することにならない場合は、共有持分を持つ場合を除いて、特例の適用を受けられません。

8. 非課税枠を超えた分の贈与税は暦年課税で計算する

非課税の枠を超えた部分は、贈与税の課税対象です。国税庁のあらましは、この特例の適用後の残額には、暦年課税であれば基礎控除110万円を適用できると説明しています。

計算の流れは3段階です。贈与額から非課税限度額を引き、残りから基礎控除110万円を引き、特例税率の速算表に当てはめます。特例税率は、1月1日時点で18歳以上の人が直系尊属から受けた贈与に使います。

次の表は、親から18歳以上の子へ住宅取得等資金だけを贈与し、同じ年に他の贈与がない場合の試算です。

住宅資金の贈与はいくらから贈与税がかかる?贈与額別に、特例税率で計算した贈与税を一覧で確認

令和8年中に親から18歳以上の子へ住宅取得等資金のみを贈与し、同じ年に他の贈与がない場合。非課税限度額を超えた分に、暦年課税の基礎控除110万円と特例税率を適用した編集部試算
贈与額 省エネ等住宅(非課税1000万円) それ以外の住宅(非課税500万円)
800万円 0円 19万円
1000万円 0円 48万5000円
1500万円 48万5000円 177万円
2000万円 177万円 366万円

出所:国税庁「No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」、同「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」などを基にLIMO編集部作成

8.1 【住宅資金の贈与はいくらから贈与税がかかる?贈与額別に、特例税率で計算した贈与税を一覧で確認】

省エネ等住宅(非課税1000万円)の場合

  • 贈与額800万円:0円
  • 贈与額1000万円:0円
  • 贈与額1500万円:48万5000円
  • 贈与額2000万円:177万円

それ以外の住宅(非課税500万円)の場合

  • 贈与額800万円:19万円
  • 贈与額1000万円:48万5000円
  • 贈与額1500万円:177万円
  • 贈与額2000万円:366万円

同じ1500万円の贈与でも、省エネ等住宅なら48万5000円、それ以外の住宅なら177万円です。差は128万5000円で、課税対象の額が390万円から890万円に増え、税率が15%から30%に上がることが原因です。

2000万円の贈与では、省エネ等住宅が177万円、それ以外の住宅が366万円になります。非課税の枠が500万円違うだけで、税額はこれだけ開きます。

9. 【編集者の視点】

省エネ等住宅の証明は、贈与を受けた後に取り直せるとは限りません。国税庁は、証明書類を贈与税の申告書に添付することを求めています。

起こりやすいのは、契約が進んでから、その家では住宅性能証明書など必要な書類が出せないと分かる場面です。1500万円の贈与なら、1000万円の枠で済むはずの税額48万5000円が、500万円の枠に変わって177万円になります。

家を契約する前に、売主や施工会社へ「贈与税の特例に使う住宅性能証明書などの書類を出せるか」を聞いておくと、枠の見通しが立ちます。中古の家屋は、新築より基準が緩く、断熱等性能等級4以上または一次エネルギー消費量等級4以上でも対象になります。

資金の充当期限は、贈与を受けた年の翌年3月15日です。贈与が年内でも、家の確定が間に合わなければ特例は使えません。迷う場合は、書類の名称と提出時期を、所轄の税務署か税理士に具体的に尋ねておくと安心です。

決まっていないことが残る制度は、どうしても落ち着かない気持ちになります。分かっている日付と分かっていない部分を分けて持っておけば、判断の軸はぶれにくくなります。分かっていない部分は、決まった時点で改めて確かめれば足ります。

10. 相続時精算課税と組み合わせると、贈与税0円でも相続時に加算される

非課税の特例は、相続時精算課税と組み合わせて使うこともできます。国税庁は、令和6年1月1日から令和8年12月31日までに住宅取得等資金の贈与を受けた場合、両方の適用が可能としています。

相続時精算課税は、原則として60歳以上の父母や祖父母から選ぶ制度です。住宅取得等資金の贈与では、贈与者がその年の1月1日に60歳未満でも選択できます。

控除の順序は、先に非課税の枠、次に精算課税の基礎控除110万円、特別控除2500万円です。それでも控除しきれなかった残額には、一律20%の税率がかかります。

暦年課税と相続時精算課税は住宅資金の贈与でどう違う?2つの課税方式を比較で確認

住宅取得等資金2000万円を親から一般住宅(非課税500万円)で令和8年中に受け、他の贈与がない場合の編集部試算(暦年課税は特例税率)
項目 暦年課税 相続時精算課税
非課税の枠を引いた後の額 1500万円 1500万円
使える控除 基礎控除110万円 基礎控除110万円と特別控除2500万円
贈与税 366万円 0円
親の相続のとき 加算対象期間内の贈与は、贈与時の価額が加算される 基礎控除後の1390万円が加算される

出所:国税庁「No.4506 住宅取得等資金とそれ以外の財産を同一年中に贈与されたとき(相続時精算課税)」、同「No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)」などを基にLIMO編集部作成

10.1 【暦年課税と相続時精算課税は住宅資金の贈与でどう違う?2つの課税方式を比較で確認】

暦年課税の場合

  • 非課税の枠を引いた後の額:1500万円
  • 使える控除:基礎控除110万円
  • 贈与税:366万円
  • 親の相続のとき:加算対象期間内の贈与は、贈与時の価額が加算される

相続時精算課税の場合

  • 非課税の枠を引いた後の額:1500万円
  • 使える控除:基礎控除110万円と特別控除2500万円
  • 贈与税:0円
  • 親の相続のとき:基礎控除後の1390万円が加算される

2000万円の贈与を一般住宅で受けた場合、暦年課税なら贈与税は366万円、相続時精算課税なら0円です。

ただし、0円で終わる話ではありません。精算課税を適用した金額は、基礎控除後の金額で、贈与者が亡くなったときの相続税の課税価格に加算されます。この例では1390万円です。

精算課税は、一度選ぶと、その贈与者からの贈与は選んだ年分以降すべて精算課税の対象になり、暦年課税には戻せません。選択は、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までに「相続時精算課税選択届出書」を提出して行います。

一方で、非課税の特例の適用を受けて贈与税の課税価格に算入されなかった金額は、贈与者の相続税の計算で加算する必要はありません(国税庁の質疑応答)。

11. 全額が非課税でも申告は必要。日程は翌年3月15日まで

非課税の枠に収まる贈与でも、申告は必要です。国税庁の質疑応答は、全額が非課税になる場合でも、特例の適用を受けるには申告書の提出が必要だと示しています。

申告期間は、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までです。戸籍の謄本、新築や取得の契約書の写しなど一定の書類を添付して、納税地の所轄税務署に提出します。

申告書には、マイナンバーの記載と、マイナンバーカード等の本人確認書類の提示または写しの添付も求められます。贈与から居住までの日程は、次の表のとおりです。

贈与から申告・居住まで、いつ何をする?翌年2月1日から3月15日の申告を含む日程を順番に確認

令和8年中に住宅取得等資金の贈与を受けた場合の主な期限(令和8年4月1日現在法令等)
期限 手続 内容
2026年12月31日まで 贈与を受ける この日までに金銭を取得する
2027年2月1日から3月15日 贈与税の申告 特例を受ける旨を記載した申告書を、戸籍の謄本や契約書の写しなどを添えて税務署へ提出
2027年3月15日まで 新築等と居住 全額を充てて新築等をし、居住する。同日後遅滞なく居住することが確実と見込まれる場合も可
2027年12月31日まで 居住 居住していないと原則として特例を受けられず、修正申告が必要

出所:国税庁「No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」などを基にLIMO編集部作成

11.1 【贈与から申告・居住まで、いつ何をする?翌年2月1日から3月15日の申告を含む日程を順番に確認】

贈与を受ける年(2026年)

  • 2026年12月31日まで:この日までに金銭を取得する

翌年(2027年)

  • 2027年2月1日から3月15日:特例を受ける旨を記載した申告書を、戸籍の謄本や契約書の写しなどを添えて税務署へ提出
  • 2027年3月15日まで:全額を充てて新築等をし、居住する。同日後遅滞なく居住することが確実と見込まれる場合も可
  • 2027年12月31日まで:居住していないと原則として特例を受けられず、修正申告が必要

年内の贈与では、お金を受け取った日がいつになるかも重要です。年末の着金日など年内贈与の注意点は、LIMOの【生前贈与】12月31日ギリギリはNG?年末駆け込み贈与で失敗しないための5つのポイント!「税制改正」持ち戻し期間7年も解説でも整理されています。

12. 住宅ローン控除の計算では、非課税を使った贈与の額が差し引かれる

非課税の特例を使っても、住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は受けられます。国税庁の質疑応答事例(令和7年8月1日現在の法令・通達等に基づく)は、その際、特例の適用を受ける贈与の額を考慮するとしています。

控除の計算の基礎になる「住宅借入金等の金額の合計額」は、次の2つのうち、いずれか低い金額です。

  • 住宅の取得等に係る借入金の金額です。
  • 住宅の取得等に係る対価の額から、特例の適用を受ける贈与に係る金銭の額を引いた金額です。

住宅の対価が4000万円で、非課税の特例を使った贈与が1000万円だとします。対価から贈与を引いた額は3000万円です。借入額が3500万円、3000万円、2500万円の場合の計算の基礎は、次のとおりです。

  • 借入額が3500万円の場合:低いほうの3000万円が計算の基礎で、500万円は基礎から外れます。
  • 借入額が3000万円の場合:3000万円が計算の基礎です。
  • 借入額が2500万円の場合:借入額のほうが低く、2500万円が計算の基礎です。

これは計算の基礎になる金額だけを見た編集部の試算です。実際の控除額は、借入限度額や年末の残高、住宅の区分などで変わり、この記事では扱っていません。相続時精算課税の特例を使う場合も、同様の控除が質疑応答事例で示されています。個別の取引では異なる課税関係が生じることがあるため、税務署や税理士への確認が前提です。

13. 2027年1月以降の扱いは未定。令和9年度の要望は「所要の措置」

期限の2026年12月31日を過ぎた後はどうなるのか。現時点で確認できる公的資料の範囲をまとめます。

国土交通省は令和8年8月に公表した令和9年度の税制改正要望事項の中に、住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置等について「必要な検討を行い、所要の措置を講じる」という項目を載せました。

この要望の文面に、「延長」の語は出てきません。要望は各省庁が出す段階のもので、実際にどうなるかは、与党の議論と税制改正大綱を経て決まります。大綱が出る時期は、現時点で確認できていません。

要望の説明には、住宅価格や金利の上昇で住宅取得環境が厳しくなっているとの認識が書かれています。適用実績も載っており、令和6年度の適用件数は4万5411件、適用額は3180億円でした。

14. 【編集者の視点】

期限の近い制度では、確定している条件と、まだ決まっていない条件を分けて考えることが出発点になります。

確定しているのは、令和8年12月31日までの贈与が対象であること、限度額が1000万円と500万円であること、翌年2月1日から3月15日までに申告が必要なことです。未確定なのは、令和9年度以降に同じ措置が続くのか、内容が変わるのかです。

未確定の部分を理由に、急ぐ判断も待つ判断も、情報としては裏づけがありません。贈与の時期を動かせるのか、家の引渡しや居住の時期と合うのか、贈与額が枠に収まるのかは、確定している条件だけで検討できます。

贈与者の年齢や所得、他の贈与の有無で結果は変わります。具体的な金額で試算する段階になったら、税理士や所轄の税務署に、贈与額と家の種類、贈与の予定日を伝えて確認してください。

※本記事は、編集部が国税庁・国土交通省が公表する公式の最新一次資料を直接確認の上、執筆・検証しています。

15. まとめ

  • 非課税の対象は、令和8年12月31日までに受け取った直系尊属からの住宅取得等資金で、省エネ等住宅は1000万円、それ以外の住宅は500万円までです
  • 配偶者の親からの贈与、不動産そのものの贈与、住宅ローンの返済に充てる贈与は対象外です
  • 枠を超えた分は暦年課税で計算され、1500万円の贈与では省エネ等住宅が48万5000円、それ以外の住宅が177万円になる試算です
  • 相続時精算課税と組み合わせると、2000万円の贈与を一般住宅で受けた例で贈与税は0円ですが、相続時に1390万円が加算されます
  • 全額が非課税でも、翌年2月1日から3月15日までの申告が必要です
  • 住宅ローン控除の計算の基礎は、借入額と、対価から非課税の贈与を引いた額のうち低いほうです
  • 令和9年度の扱いは決まっておらず、国土交通省の要望は「所要の措置」にとどまっています

期限が決まっている分だけ、日付と金額は動かせない前提で組み立てられます。2027年以降の扱いが決まっていないため、年内に贈与を受けるかどうかは、確定している条件を土台に考えることになります。

贈与の前に、贈与者が直系尊属であること、家の性能証明が取れること、贈与額が枠に収まるかを確かめておくと、翌年2月1日からの申告で慌てずに済みます。迷う点は、所轄の税務署や税理士に具体的な数字を示して聞いておくと安心です。

16. よくある質問

16.1 Q. 親からの援助が非課税の枠を超えたら、どうなりますか?

A. 超えた部分が贈与税の課税対象になります。暦年課税なら、超えた分から基礎控除110万円を引き、速算表の税率で計算します。親から18歳以上の子へ省エネ等住宅の資金を1500万円贈与した場合の試算は、48万5000円です。個別の事情で結果が変わるため、申告の前に税務署や税理士へ相談する流れになります。

16.2 Q. 配偶者の親からの援助は対象になりますか?

A. 配偶者の親は直系尊属に含まれないため、対象になりません。配偶者の親と養子縁組をしている場合は直系尊属に該当し、他の要件を満たせば特例を受けられます。

16.3 Q. 祖父と父の両方から贈与を受けた場合、それぞれ1000万円まで非課税ですか?

A. 贈与者ごとの枠はありません。贈与者が複数でも、受け取った金額を合計して、そのうち1000万円(省エネ等住宅の場合)までが非課税です。受贈者1人についての限度額になります。

16.4 Q. 非課税の枠に収まる贈与でも、申告は必要ですか?

A. 必要です。特例の適用を受けるには、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までに、特例を受ける旨を記載した贈与税の申告書と、戸籍の謄本、契約書の写しなどの書類を提出します。

16.5 Q. 住宅ローンの返済に充てる贈与は対象になりますか?

A. 対象になりません。特例は、居住用の家屋の新築・取得・増改築等の対価に充てるための金銭の贈与に限られます。

16.6 Q. 非課税の特例を使うと、住宅ローン控除は受けられなくなりますか?

A. 受けられます。ただし、控除の計算の基礎は、借入金の額と、住宅の対価から特例の適用を受ける贈与の額を引いた額のうち低いほうになります。実際の控除額は借入限度額などで変わるため、税務署や税理士に確認してください。

16.7 Q. 令和9年1月以降も、この特例は使えますか?

A. 現時点で適用期間は令和8年12月31日までです。国土交通省は令和9年度の税制改正要望で「所要の措置」を求めていますが、延長されるかどうかは決まっていません。

16.8 Q. 非課税になった分は、親が亡くなったときの相続税に加算されますか?

A. 非課税の特例の適用を受けて贈与税の課税価格に算入されなかった金額は、相続税の課税価格に加算する必要はありません。相続時精算課税を適用した金額は、基礎控除後の金額が加算されます。

16.9 Q. 家の広さに条件はありますか?

A. 新築または取得する家屋は、登記簿上の床面積が40平方メートル以上240平方メートル以下で、2分の1以上が居住用であることが必要です。相続時精算課税と組み合わせる特例では、床面積は40平方メートル以上で上限がありません。

参考資料

齊藤 慧