Aさんの話を聞いた筆者は少々いじわるな質問を投げかけました。「Aさん、あなたの子どもがもしいじめられたら、かつてのあなたのように、『理由があるからいじめられるのは仕方ない』とお子さんに言えますか?」

Aさんははっとしたような顔をした後、うつむいてこう答えました。「それは無理ですね。自分勝手かもしれないけれど、学校や相手の親に徹底的に抗議すると思います」

「では、あなたのお子さんが誰かをいじめたら?」Aさんはしばらく考え込んだ後、こう言いました。「いじめはいけない、と娘をきつく叱り、相手のご両親に謝罪に行きますね…」

そしてAさんはこう続けました。「Sちゃんには本当に悪いことをしたと思っています。けれど日々の生活では、かつて自分がいじめていたことなんてほとんど忘れています。Sちゃんのことを思い出すこともありません。自分がいじめっ子だったから、娘もその遺伝子を引き継いでいじめっ子になるのでは?なんて考えたこともありませんし、他の親御さんと同程度に、『我が子が誰かにいじめられないかな』という心配はしています。ムシが良いのかも知れませんが、中学校時代のことはもう過去のことなんです」

席を立つAさんを見送りながら「もし、Aさんの娘さんに『お母さんの中学時代のお話をして?』と言われたら…Aさんはどんな話をするのだろう」と思った筆者でした。

いじめっ子だったあなたへ「我が子に胸をはれますか?」