漫画家の祭さんは、大明神さんと、小明神さんというチンチラさんと一緒に暮らしています。
大明神さんの突然の食欲不振による受診、そして命がけの『全身麻酔』を使った検査を経て、自宅での看護生活を始めた祭さん。大明神さんの体重と体力回復のため、ペースト状の餌を用意しての給餌を行いますが、相変わらず食欲不振が続く大明神さんは、ほんの少ししか口にすることができません。無理に食べさせるわけにもいかず、1日ぶんの食事を、何回かに分けて与えるため、祭さんは大明神さんにほぼつきっきりでの生活になりました。
そんな生活が1週間ちかく続き、季節は梅雨の時期へ。朝の給餌を済ませた祭さんは、どうしても外せない用事のため、久しぶりに外に出かけることに。いつもと少しもかわらない様子で、ケージの中から、バタバタと準備をしている祭さんをじっと見つめている大明神さん。ふと目が合った祭さんは、いつものように「いい子にしててね。大ちゃん。」と声を掛けてから、自宅玄関のドアを閉めました。
いざ外に出てみると、やはり家のことが気になります。「早く帰らなきゃ。」にはじまり、「牧草とペレットのペーストでダメなら、大好きなりんごをすりつぶしたら食べるのかも。」ということばかり考えてしまって、とにかく気が気ではありません。その一方で、つきっきりの看護生活で家のことがあまりできてないことを反省してみたり、あれこれ気になり出して、なかなか思考がまとまりません。
もんもんとした状態で帰路につく祭さん。でも大切な家族であるペットたちに暗い表情は見せられません。家に入って部屋着に着替え、気を取り直しつつ、「ただいま!大ちゃん元気?」と、つとめて明るく声を掛けてから、ふと祭さんは気がつきます。「…あれ?今、大ちゃんの返事がなかった…。」
頭をかすめる嫌な予感。あわててケージに近寄ってみると、中で大明神さんがうずくまっています。そっと手に乗せてみると、体温が低下して、意識がとびかかっている!あわてて、大明神さんにタオルを巻き、カイロを出して温める祭さん。大明神さんの意識が完全に飛んでしまわないように、必死で声をかけ続けます。
1時間後。だんだんと意識がはっきりしてきた様子の大明神さん。苦しそうに息をしながら、手を差し出してきました。「ん?どうした?手?」といいながら、大明神さんの手を取る祭さん。小さな、小さな手。いつも祭さんからおやつを大事そうに受け取っていた手。握手会ごっこでいつもつないでいた手。「ここにおるよ。」と言いながら、祭さんがその小さな手をきゅっと握ってあげると、「ピィ」と大明神さんが声を上げました。
「ピィ…」、「ピュウ…」、「ピィ…」。苦しそうな息の下から、祭さんにゆっくりと話しかけるように、声をあげる大明神さん。その声にこたえて「うん」「うん」と頷く祭さん。でも、声はだんだんと細く、弱くなっていきます。それでも何かを伝えようとするかのように、必死に声を上げようとする大明神さん。それを見た祭さんは言いました。「わかった。もういいよ。大ちゃん。ありがとうね。」胸が詰まって、最後はほとんど涙声。でもきっと、大明神さんの耳にはちゃんと届いていると信じたい。そして、そのあとすぐに大明神さんは静かに息を引き取りました。
「私の管理不足も大きいと思います。小動物の体調不良は、本当に命にかかわることが多く、少しの変化も見逃さないように、しっかり観察してあげなくてはいけないということを実感しました。」と、思い出を語るのは、祭さん。実は、これまでのチンチライフは、2016年6月に大明神さんが天に召されてしまうまでの過去のお話。ただ、祭さんにとって大明神さんは、出会いからのすべてがとても印象的な子だったそうで、今でも思い出すと涙が出てしまうこともあるそうです。
そして当時は、元気いっぱいのいたずらっ子だった小明神さんも、今では7歳になり、お嫁さんを迎えているといいます。ヨメ大好きなのに、なぜかダメ夫な小明神さんの夫婦エピソードも近日公開される予定とのこと!まだまだ続くチンチライフ、次回もどうぞお楽しみに。
【マンガ記事】チンチライフ!
チンチラの大明神と小明神、そして漫画家の祭さんの3人(?)が織りなす、ドタバタな毎日。チンチラって何?という方から、チンチラの飼い主さんまで、初めて情報からディープなチンチラ情報まで、楽しくお伝えしていきます。