厚生労働省が平成29年12月に公表した「平成28年度 全国ひとり親世帯等調査結果の概要」によると、ひとり親家庭のうち、母親のみで子供を養育する家庭では、母親の就労収入の平均は年間200万円と低くなっています。

さらに、預貯金額が50万円未満であるシングルマザー家庭が約半数であることを考えると、何十万という学費を貯めてから講座を受講するというのは、現実的には難しいと思われます。

預貯金のある人や親族からお金を借りられる人であれば、受講が可能でしょう。しかし、講座を受けるために貸付を受けたりクレジットやキャッシングを行ったりした場合、受講が終わるまでは就労条件などを変更することが難しくなります。

また、今までと変わることのない毎月の生活費に月々の返済がプラスされるというのは、暮らしていくのがやっとのひとり親家庭にとっては厳しいものがあります。

さらに、正社員ではない契約社員やパートなどの場合、体調が悪いなどの理由で仕事を休めば月々の返済が滞ってしまう可能性も高いでしょう。そのため、大抵の場合はこうしたリスクを考慮して受講を先送りにするか、本来希望していた講座とは違う数万円程度で受講可能な講座を選択したりするようです。

もし、離職したときに通えるハローワークなどの指定講座のように、支払う金額が教科書代程度であれば、収入の少ないひとり親でも利用しやすくなるのではないかと思います。さらに講座を受講するひとり親が増えることで、就業率や年収、納税額がアップし、生活水準の向上が子供への学習費用の捻出などにもつながるのではないでしょうか。

ひとり親家庭等子どもの学習支援事業

学習支援コーディネーターと学習相談ができ、学習習慣が身につくような学習支援計画を立て、1回60~90分の学習支援を指定期間内に8回も実施してくれる制度です。

とても手厚いこちらの制度ですが、学習支援を行ってくれる場所が「対象者の自宅」であるという点が残念な部分だと言えます。学習支援の対応時間は朝の9時から夜20時までと配慮されているものの、「忙しくて家の片付けにまで手が回らないから、自宅に来てもらうのは気が引ける」という意見も多数ありました。

収入の少ないひとり親は、生活のためにダブルワークをしていたり、夜勤のある介護職や看護職に就いたりしていて留守であることも多く、親が家にいる場合は、まだ年齢の小さな兄弟姉妹がいて勉強に集中できる環境ではないことも少なくありません。

学習支援事業を請け負っている事業所は、家庭教師だけでなく個別指導を行っていることも多いため、最初の手続き以外は子供だけでも通えるような制度になると利用しやすくなるのではないかと思います。

まとめ

日本にはたくさんのセーフティネットがあり、特にひとり親に関しては、国や自治体も力を入れて支援をしてくれていると感じます。ただ、残念なことに、ひとり親など制度を利用したいと思っている人たちが利用しづらい内容となっていることも少なくありません。筆者を含むひとり親たちのリアルな声が、今後の制度の充実につながれば嬉しく思います。

松原 朱里