昔と比べると世間の風当たりもゆるやかになり、ひとり親家庭が生活しやすくなったと言われる現在は、さまざまなセーフティネットが確立されています。しかし、現行のままではDVなどから逃れたい人や収入の少ないひとり親にとって、利用しづらい内容となっているものが多いのも事実です。

今回は、自身もシングルマザーである筆者が、「現状のままでは、ひとり親家庭を救えない」と残念に感じた国や自治体の制度を取り上げます。

はじめに

本記事のタイトルや内容を読み、「どこまで国のお金をアテにするつもり?」という意見を持たれることもあるかと思います。しかし、セーフティネットが機能せず、貧困の悪循環を繰り返す世の中になれば、思いやりや常識という概念が育ちにくくなり、犯罪率の上昇につながる可能性も高くなることでしょう。

本稿では、貧困の悪循環を断ち切るために政府がせっかく確立した制度であるにもかかわらず、ひとり親などが利用しづらい実情について焦点を絞ってお伝えしているものとお考えいただけると幸いです。

また、ひとり親を支援するための制度のなかには、都道府県によって内容や名称が違っていたり、実施されていない自治体が存在する場合もあります。そこで、筆者が住んでいる地域の制度を例に挙げ、筆者を含むシングル家庭の人たちが「救いになっていない」と感じた制度や改善案について綴っていきたいと思います。

児童扶養手当

ひとり親の収入や扶養の人数に応じて手当額が決定され、支給される制度です。具体的には現状、児童扶養手当が全額支給される場合で子供が1人の場合、月額42,910円となっています。

子供が小さいと、発熱時の保育問題や保育時間が短いなどの理由で正社員として働くことが難しいため、養育費をもらっていない「ひとり親」の生活の支えとなっている制度でもあります。

この制度が残念だと感じる部分は、手当額を決定するために対象となる所得が最長で2年ほど前のものになることです。たとえば、令和2年10月分の児童扶養手当を申請する場合、平成30年1月1日~12月31日までの所得で判断されるのです。

また、支給日は2カ月に1度(令和元年11月より)となっているため、申請する月によっては、支給されるまでに2カ月以上かかることも残念に感じます。

仮に配偶者の経営する会社で働いていた場合、DVに耐え切れず着の身着のまま飛び出したとしたら、急に収入が断たれるだけでなく児童扶養手当も支給されず困窮してしまうでしょう。

また、身寄りのない人や、たとえ身寄りがあってもさまざまな理由で親族に頼れない人たちが、救いを求められずに貧困生活から脱出できないというケースも少なくありません。若者や低所得による貧困問題、貧困の悪循環についての討論でもよく取り上げられているテーマでもあるため、何らかの改善策が必要なのではないかと思います。

たとえば、DVで家を飛び出してきたような場合には、過去の年収にかかわらず児童扶養手当の支給が必要な場合もあるのではないかと思います。また、初回は支給額を日割り計算して早い段階で支給するなどの柔軟な対応を行うことで、今よりもさらに強力なセーフティネットになるのではないかと思うのです。

ひとり親家庭自立支援教育訓練給付金

児童扶養手当の支給要件と同じ所得水準にあるひとり親が、厚生労働大臣の指定する講座を受講すると、受講費の60%相当の額を支給してくれるという手厚い制度です。ただし、講座費用が1万2千円以下の場合は支給されず、20万円を超える講座の場合は20万円を上限として支給されます。

また、ハローワークで一般教育給付金の受給資格がある場合には、一般教育給付金の支給額を差し引いた金額を支給。一般教育給付金の受給資格がない場合でも、「ひとり親家庭自立支援教育訓練給付金」から規定の支給額が全額支払われます。

講座内容は、介護士や看護師、司法書士やIT関連、キャリアコンサルタント、ファイナンシャルプランナーなど、就業や転職に即戦力となるものが多く魅力的です。

ただ残念なのは、この給付金が支払われるのが講座終了後であるということです。