ねんきん定期便を開き、将来の年金額が月7万円ほどしか書かれていないことに驚く40歳前後の会社員は少なくありません。
ただ、50歳未満の人に届くねんきん定期便の年金額は、これまでの加入実績に応じた金額です。この先も働いて保険料を納めれば、年金額は増えていきます。
私が資産運用を見てきた経験からいえば、老後資金の計画は「正しい見込み額」をつかむことから始まります。ここでは、平均年収の会社員と年収1000万円の会社員の2つのケースで、将来の年金額を試算します。
※編集部:本記事のケースは、公的統計をもとに設定した試算例です。年収487万円は国税庁「令和7年分 民間給与実態統計調査」の平均給与で、架空の数字ではありません。
40歳のねんきん定期便の年金額はなぜ少ない?50歳未満は「これまでの加入実績」だけで計算されているから
ねんきん定期便は、毎年誕生月に届く年金の通知です。日本年金機構「『これまでの加入実績に応じた年金額』は、どのように計算されているのですか。(50歳未満)」によると、50歳未満の人の定期便には、これまでの加入実績に応じた年金額が載ります。今後の加入は含まれていません。
一方、50歳以上の人の定期便には、現在の加入条件のまま60歳まで加入し続けた場合の見込み額が載ります。同じ「年金額」でも、40歳と50歳では意味が違う点に注意が必要です。
22歳で入社し、40歳で加入18年(216カ月)の会社員について、定期便の年金額を試算しました。
- 【平均年収487万円】月約7.2万円(報酬比例部分 約4.0万円、老齢基礎年金 約3.2万円)
- 【年収1000万円】月約11.4万円(報酬比例部分 約8.2万円、老齢基礎年金 約3.2万円)
※試算の前提:22歳から同じ年収で厚生年金に加入。報酬比例部分は「平均標準報酬額×5.481/1000×加入月数」、老齢基礎年金は令和8年度の満額(月7万608円)を加入月数で按分。再評価率などは考慮していません。
40歳時点の金額が少なく見えるのは、残り20年分の加入が含まれていないためです。
実際の厚生年金の平均受給額はいくら?月約15.1万円で、男性約17.0万円、女性約11.1万円だった
厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」2025年12月によると、厚生年金(第1号)の老齢年金の平均月額は、基礎年金を含めて15万1142円です。
- 【全体】月15万1142円
- 【男性】月16万9967円
- 【女性】月11万1413円
- 【国民年金のみ(参考)】月5万9431円
40歳時点の定期便の約7万円は平均の半分以下に見えます。ただし、平均受給額は加入を終えた人の金額です。比べるなら、60歳まで加入した場合の金額でなければなりません。
60歳まで働くと年金はいくら?平均年収なら月約15.2万円、年収1000万円なら月約24.1万円だった
同じ会社員が60歳まで、加入38年(456カ月)働いた場合を試算しました。
- 【平均年収487万円】月約15.2万円(報酬比例部分 約8.5万円、老齢基礎年金 約6.7万円)、年額約182万円
- 【年収1000万円】月約24.1万円(報酬比例部分 約17.4万円、老齢基礎年金 約6.7万円)、年額約289万円
※試算の前提は前章と同じです。65歳から受け取る場合の金額で、60歳以降の就労分は含みません。
平均年収のケースは、40歳時点の約2.1倍となり、平均受給額の月約15.1万円とほぼ同じ水準です。定期便の月約7万円だけを見て「老後は月7万円」と考えるのは早計です。
年収が2倍なのに年金はなぜ2倍にならない?老齢基礎年金が年収に関係なく定額だから
年収1000万円は平均年収487万円の約2.05倍です。しかし、60歳まで加入した場合の年金額は約1.6倍にとどまります。
理由は、年金が2階建てだからです。報酬比例部分は年収に比例して約2.05倍になります。一方、老齢基礎年金は年収に関係なく、加入月数が同じなら同じ額です。この定額部分が差を縮めます。
現役時の年収に対する年金額の割合で比べると、違いがはっきりします。
【平均年収487万円】年金年額約182万円÷年収487万円=約37%
【年収1000万円】年金年額約289万円÷年収1000万円=約29%
※税・社会保険料を差し引く前の額面での比較です。
さらに、厚生年金の保険料と年金額の計算に使う標準報酬月額や標準賞与額には上限があります。年収がさらに高い人ほど、年金の伸びは鈍くなります。年収が高い人ほど、現役時の生活水準と年金とのギャップは大きくなるのです。
自分の見込み額はどう確認する?公的年金シミュレーターやねんきんネットで試算できる
厚生労働省の「公的年金シミュレーター」では、ねんきん定期便のQRコードを読み取ると、今後の働き方や年収、受給開始年齢を変えて年金額を試算できます。日本年金機構の「ねんきんネット」でも、加入記録の確認や見込み額の試算ができます。
受給開始年齢も年金額を大きく変えます。65歳より後に繰り下げると、1カ月あたり0.7%増えます。平均年収のケースで70歳から受け取ると、42%増の月約21.5万円です(試算)。
※繰下げの増額率は65歳時点の年金額に一律で適用した概算です。在職中の年金や加給年金の扱いなどにより、実際の金額は異なります。
経済アナリストの検証:40歳の定期便は「最低ライン」、本当に見るべきは年収とのギャップ
40歳の定期便に載る金額は、今後一切保険料を納めなかった場合の「最低ライン」と読むべきです。会社員として働き続ける限り、この数字だけで老後を悲観する必要はありません。
一方、今回の試算が示す本質は、公的年金は年収に比例しないという点です。年収1000万円の人は、住居費や教育費、日々の支出も平均より高い水準になりがちです。生活水準を下げずに老後を迎えるには、平均年収の人より大きな自助努力が必要になります。
企業分析で売上高に対する利益率を見るように、老後資金も「現役時の年収に対して年金がどれだけあるか」で見ると課題が見えます。年収487万円で約37%、年収1000万円で約29%という差は、そのまま自分で用意すべき資金の差です。
40歳であれば、60歳まで20年以上の時間があります。つみたて投資枠などのNISAやiDeCoの税制優遇を使い、時間を味方につけた資産形成ができます。会社の企業年金や退職金制度の内容を確認することも欠かせません。
まずは定期便と公的年金シミュレーターで自分の数字を把握し、毎年届く定期便で更新していきましょう。数字を正しく読むことが、老後資金計画の第一歩です。
まとめ
40歳のねんきん定期便に載る年金額は、これまでの加入実績に応じた金額です。平均年収487万円の会社員が60歳まで働けば、試算で月約15.2万円となり、平均受給額とほぼ同じ水準になります。
ただし、年収1000万円でも年金は月約24.1万円で、年収の伸びほどには増えません。年収が高い人ほど、現役時の生活水準とのギャップを埋める準備を早めに始めることが大切です。
※本記事の試算は一定の前提に基づく概算です。実際の年金額は加入期間、報酬額、制度改正などにより異なります。正確な見込み額は、ねんきん定期便、ねんきんネット、年金事務所でご確認ください。
参考資料
- 国税庁「令和7年分 民間給与実態統計調査」(https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan/gaiyou/2025.htm)
- 厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」(https://www.mhlw.go.jp/content/001617995.pdf)
- 日本年金機構「『これまでの加入実績に応じた年金額』は、どのように計算されているのですか。(50歳未満)」(https://www.nenkin.go.jp/section/faq/nteikibin/teikibinkisainaiyo/nenkingaku/50saimiman.html)
- 日本年金機構「報酬比例部分」(https://www.nenkin.go.jp/service/yougo/hagyo/hoshuhirei.html)
- 日本年金機構「令和8年4月分からの年金額等について」(https://www.nenkin.go.jp/oshirase/taisetu/kojin/2026/202604/0401.html)
- 厚生労働省「公的年金シミュレーター利用のご案内」(https://www.mhlw.go.jp/stf/kouteki_nenkin_simulator.html)