「定期預金は、一度預けたらあとは放っておいている」。そんな方は多いのではないでしょうか。満期が来ても自動で預け直してくれるので、特に何もしなくても困ることはありません。
ただ、金利がほぼゼロだった時代と今とでは、話が違います。私が資産運用を見てきた経験からいえば、金利が動き始めたときに差がつくのは、何に預けるかより、満期のたびに条件を確かめているかどうかです。
ここでは、退職金などを1000万円、定期預金に預けた場合を例に、自動継続で何が起きるのかを数字で確かめます。
定期預金の自動継続とは何なのか?満期後はその時点の金利で同じ期間、預け直される
まずは、自動継続の仕組みからみていきましょう。
自動継続は、満期を迎えた定期預金を、手続きなしで同じ期間の定期預金として預け直す仕組みです。多くの金融機関では、申し込みのときに特に指定しなければ、自動継続が選ばれます。
ここで大切なのは、預け直した後の金利です。継続後は、原則としてその時点の店頭に示されている通常の金利が使われます。最初に預けたときの金利がそのまま続くわけではありません。
つまり、自動継続が得になるか損になるかは、最初に預けたときの金利と、継続するときの金利の関係で決まるということです。
定期預金の金利はどこまで上がったのか?1年定期の平均は0.005%から0.472%に
では、実際の定期預金の金利はどのくらい動いているのでしょうか。日本銀行が公表している、銀行の店頭に示された金利の平均を見てみます(日本銀行「預金種類別店頭表示金利の平均年利率等」)。
預入金額1000万円以上、1年の定期預金の平均金利と、その金利で1000万円を1年預けた場合の利息(税引前)は次のとおりです。
- 【2023年12月】年0.005%、利息500円
- 【2024年12月】年0.126%、利息1万2600円
- 【2025年12月】年0.259%、利息2万5900円
- 【2026年9月】年0.472%、利息4万7200円
わずか3年足らずで、同じ1000万円の利息が500円から約4万7000円に増えたことになります。普通預金の平均金利も、2023年12月の年0.001%から2026年9月には年0.322%まで上がっています。
ここで大事なのは、金利が上がる局面では、自動継続はむしろ味方になりうるということです。1年定期を自動継続していれば、満期のたびにその時点の高い金利で預け直されます。自動継続そのものが損なのではない、ということになります。
では、どんなときに損になるのか。それが次のケースです。
キャンペーン金利が終わると利息はいくら減るのか?1000万円なら年10万円、税引後でも約8万円
自動継続で損をしやすいのは、最初に特別な金利で預けていた場合です。退職金専用プランや新規口座向けのキャンペーンなどでは、最初の満期までだけ金利を上乗せする商品が少なくありません。満期後に自動継続されると、その上乗せはなくなり、通常の金利に戻ります。
たとえば、ケースとして1000万円をキャンペーン金利の年1.5%で預け、自動継続で年0.5%になった場合、1年あたりの利息は次のように変わります。
- 【キャンペーン金利(年1.5%)】利息15万円(税引後約11万9500円)
- 【自動継続後(年0.5%)】利息5万円(税引後約3万9800円)
- 【差額】税引前で10万円、税引後で約7万9700円
※税引後は利息に20.315%の税金がかかるとした試算。年1.5%はキャンペーン金利の例、年0.5%は日本銀行の統計における1年定期の平均(0.472%)を丸めた数字です。
金利が上がったとはいえ、通常の定期預金はまだ年0.5%前後です。キャンペーン金利との差は大きく、金額が大きいほど、その差はそのまま利息の差になります。「満期後は高い金利のまま続くだろう」と思い込んでいると、気づかないうちに年約8万円を取りこぼすことになります。
元利金継続と元金継続はどう違うのか?1000万円を元利金継続にすると預金保険の上限を超える
自動継続には、大きく分けて2つの種類があります。
- 【元利金継続】元本に税引後の利息を足して、まとめて預け直す。利息にも利息がつく複利の効果がある
- 【元金継続】元本だけを預け直し、利息は普通預金などで受け取る
利息を生活費に使うなら元金継続、使わないなら元利金継続。一般的にはそう考えると分かりやすいでしょう。
もっとも、金額が1000万円になると、もう一つ考えておきたいことがあります。預金保険です。
預金保険機構によると、定期預金などの一般預金等は、金融機関ごとに合算して「預金者一人当たり元本1,000万円までと破綻日までの利息等」が保護されます。元本1000万円を超える部分は、破綻した金融機関の財産の状況に応じて支払われるため、一部カットされることがあります(預金保険機構「保護の範囲」)。
満期前に何を確かめればよいのか?継続後の金利、満期時の取り扱い、ほかの預け先との差の3つ
ここまでを踏まえると、満期の前に確かめておきたいことは3つに絞られます。
- 【継続後の金利】自動継続された後に何%になるのか。キャンペーン金利で預けている場合は特に重要
- 【満期時の取り扱い】元利金継続か、元金継続か、自動で解約されるのか
- 【ほかの預け先との差】同じ銀行の別の商品や、ほかの金融機関の定期預金、個人向け国債などと比べてどうか
注意したいのは、より高い金利の商品を見つけても、満期前に解約すると損をする場合があることです。定期預金を途中で解約すると、多くの場合、最初に約束した金利より低い中途解約利率が使われます。乗り換えるなら、満期のタイミングが基本です。
また、自動継続を止めたいときは、金融機関ごとに決められた期限までに手続きが必要です。満期日を過ぎてから気づいても、すでに次の期間の定期預金として預け直されています。通帳やアプリで満期日を確かめ、少し前に予定を入れておくだけでも違います。
アナリストの検証:自動継続の損得を決めるのは「仕組み」ではなく「満期のたびに確かめる習慣」
自動継続は、それ自体が得でも損でもありません。金利が上がる局面では、満期のたびに新しい金利で預け直してくれる便利な仕組みです。実際、1年定期の平均金利は、この3年足らずで0.005%から0.472%まで上がりました。
損につながるのは、「最初の金利が続くはず」という思い込みです。キャンペーン金利が終わったことに気づかなければ、1000万円で年約8万円を取りこぼします。金利がゼロに近い時代には意識する必要のなかった差が、金利のある時代にははっきりと金額に表れるようになったといえるでしょう。
もう一つ、金額が大きいほど「利回り」だけでなく「守られるかどうか」も大切になります。預金保険で守られるのは、一つの金融機関につき元本1000万円までとその利息です。退職金のように大きなお金を預けるなら、金利の高さと同じくらい、預け先を分けることにも意味があります。
私は、金利のある時代に預金で差をつけるのは、特別な知識よりも「満期日を把握し、そのたびに条件を確かめる」という小さな習慣だと考えています。
まとめ
定期預金の自動継続は、満期時点の金利で預け直す仕組みです。1年定期の平均金利が0.005%から0.472%に上がったように、金利上昇局面では味方になります。一方で、キャンペーン金利の年1.5%から年0.5%に戻れば、1000万円で利息は年10万円、税引後でも約8万円減ります。
また、元利金継続で元本が1000万円を超えると、超えた分は預金保険で全額が守られるとは限りません。満期の前に、継続後の金利、満期時の取り扱い、ほかの預け先との差の3つを確かめておきましょう。
※本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品を勧めるものではありません。試算は一定の前提に基づく概算です。定期預金の条件や預金保険の取り扱いは、各金融機関や預金保険機構の最新の公式情報をご確認ください。
参考資料
- 日本銀行「預金種類別店頭表示金利の平均年利率等」(https://www.stat-search.boj.or.jp/ssi/mtshtml/ir02_m_1.html)
- 預金保険機構「保護の範囲」(https://www.dic.go.jp/yokinsha/page_000016.html)