厚生労働省によると、地域包括支援センターは、地域の高齢者の総合相談、権利擁護や地域の支援体制づくり、介護予防の必要な援助などを行い、高齢者の保健医療の向上と福祉の増進を包括的に支援することを目的とする、地域包括ケアの中核的な機関です。市町村が設置し、全国で5487か所あります。
離れて暮らす親の物忘れが増えたとき、「地域包括支援センター」という名前は聞いたことがあっても、何をしてくれるのか、費用はかかるのか、どこにあるのかが分からず、動けない方は少なくないと考えられます。
この記事では、前半でこの疑問に、厚生労働省の公表資料と、介護保険法などの条文、横浜市の案内、編集部の試算で答えます。後半では、センターが行う事業、3職種の配置基準、1か所あたりの人数、令和8年の法改正で新設される窓口との関係を整理します。個別の判断は、お住まいの市区町村に確認してください。
1. 遠くに住む母の物忘れが増えた。まだ介護認定は受けていない。地域包括支援センターは何をしてくれて、費用はかかるのか
「遠くに住む母が、電話のたびに同じ話をするようになりました。まだ介護認定は受けていません。地域包括支援センターという窓口があると聞きましたが、何をしてくれるのでしょうか。費用はかかりますか。母の家の近くのセンターに相談すればよいのでしょうか」。
同じ迷いは、離れて暮らす親の様子が気になる人に、当てはまりえます。答えは、次の3点です。
- 地域包括支援センターは、市町村が設置する、高齢者の総合相談の窓口です。介護保険法は、総合相談支援、権利擁護、包括的・継続的ケアマネジメント支援などを事業に挙げています。厚生労働省の説明や横浜市の案内は、相談の対象を、要介護認定を受けた人に限っていません
- 横浜市では、福祉・保健の専門員が無料で相談を受けています。担当は地区ごとに分かれているため、親の住所地の担当センターに連絡します。訪問相談やオンライン相談を行う市もあり、横浜市は、事前に電話で連絡するよう案内しています
- センターには、第1号被保険者おおむね3000人以上6000人未満ごとに、保健師、社会福祉士、主任介護支援専門員が各1人置かれます(介護保険法施行規則)。令和8年法律第51号で、市町村は「地域権利擁護相談支援センター」も設置できるようになります。原則として令和9年4月1日の施行です
2. 相談の前に確認したい3つの「もし」を、条文と市の案内で確認
読者の方が気にしそうな「もし」を、介護保険法と横浜市の案内、厚生労働省の資料で確認します。いずれも、ご自身が住む市区町村の運用を確定するものではありません。
- もし、親が遠方に住んでいたら:横浜市は、地域包括支援センターは地区ごとに担当が分かれており、お住まいの地区の担当センターに連絡するよう案内しています。離れて暮らす親の場合は、親が住む地区を担当するセンターが窓口になると考えられます
- もし、費用が心配だったら:横浜市は、福祉・保健の専門員が無料で相談に対応する、と案内しています。ほかの市区町村は、それぞれの案内で確認してください。紹介されたサービスを使うときの利用料は、別です
- もし、相談したいのが夜間や日曜だったら:横浜市は、令和8年10月から、相談時間を月曜から土曜(祝日を除く)の午前9時から午後5時までにしました。時間外と日曜・祝日は、相談専用コールセンターに電話を転送します
ここからは、この答えの前提になる仕組みを順に確認します。センターの定義と設置数、看板の違い、行う事業、3職種、1か所あたりの人数、新しい窓口の順です。
3. 地域包括支援センターとは:市町村が設置する、高齢者の総合相談の中核的な機関
介護保険法第115条の46は、地域包括支援センターを、包括的支援事業などを実施し、地域住民の心身の健康の保持と生活の安定のために必要な援助を行うことで、保健医療の向上と福祉の増進を包括的に支援することを目的とする施設、と定めています。市町村は、これを設置できます。
委託を受けた者も、市町村長への届出により、センターを設置できます。設置者は、自らその実施する事業の質の評価を行うなどして、事業の質の向上を図らなければなりません。市町村も、定期的に、事業の実施状況の評価を行います。
厚生労働省のページによると、全国の設置数は5487か所です。支所(ブランチ)を含めると7374か所で、令和7年4月末現在の数字です。65歳以上の人口は、現在3600万人を超えており、2043年の約3950万人でピークを迎えると予想されています(厚生労働省)。
4. 看板の名前は自治体で違う:横浜市では「地域ケアプラザ」と一部の特別養護老人ホームがセンターの役割を担う
見落としやすい点があります。「地域包括支援センター」という看板の窓口が、どの市町村にもあるとは限りません。横浜市は、地域ケアプラザと一部の特別養護老人ホームに、地域包括支援センターを設置しています。
横浜市のFAQでは、横浜市では、地域ケアプラザと一部の特別養護老人ホームがその役割を担っている、と説明しています。このため、横浜市では、地域ケアプラザに相談する、というかたちになります。
名前が違っても、役割は同じです。親の住む市区町村の案内で、地域包括支援センターに当たる窓口が、どこにあるのかを確かめてください。分からないときは、市区町村の介護や高齢者福祉の担当課に聞くのが確実です。
5. 地域包括支援センターが行う事業は、総合相談支援、権利擁護、ケアマネジメント支援などの7つ
介護保険法第115条の45第2項は、市町村が行う包括的支援事業を、7つ挙げています。1つ目は、被保険者の心身の状況や、居宅における生活の実態などの実情の把握、総合的な情報の提供、関係機関との連絡調整などを行う、総合相談支援です。
2つ目は、被保険者に対する虐待の防止と、その早期発見のための事業、そのほかの権利擁護のために必要な援助です。3つ目は、保健医療や福祉の専門的知識を有する人による、居宅サービス計画などの検証や協議を通じた、包括的かつ継続的な支援です。
4つ目から6つ目は、在宅医療と介護の連携の推進、地域における自立した日常生活の支援の体制整備、認知症の早期における症状の悪化の防止のための支援です。7つ目は、関係者の間での被保険者に係る情報の共有と活用の促進です。
5.1 【包括的支援事業の7つ】
前提条件:e-Gov法令検索の介護保険法第115条の45第2項の記載を、編集部が表に整理したもの。実際にセンターが担う範囲は、市町村が委託する内容で決まる。第4号から第6号の事業は、センターとは別に委託できる1/2
出所:e-Gov法令検索「介護保険法」を基にLIMO編集部作成
- 第1号 総合相談支援:心身の状況や生活の実態などの実情の把握、総合的な情報の提供、関係機関との連絡調整です。
- 第2号 権利擁護:虐待の防止とその早期発見のための事業、そのほかの権利擁護のために必要な援助です。
- 第3号 包括的・継続的ケアマネジメント支援:居宅サービス計画などの検証、定期的な協議を通じた、包括的かつ継続的な支援です。
- 第4号 在宅医療・介護連携の推進:医療に関する専門的知識を有する人が、介護サービス事業者や医療機関などの連携を推進します。
- 第5号 生活支援・介護予防の体制整備:自立した日常生活の支援と、要介護状態等の予防などに係る体制の整備を促進します。
- 第6号 認知症総合支援:認知症の早期における症状の悪化の防止のための支援など、認知症またはその疑いのある人への総合的な支援です。
- 第7号 情報の共有・活用の促進:被保険者、介護サービス事業者その他の関係者が、被保険者に係る情報を共有し、活用することを促進します。
表を見ると、相談の窓口として知られる総合相談支援は、7つのうちの1つです。虐待の相談や、ケアマネジャーの支援、認知症の人への総合的な支援も、条文が定める事業に含まれています。ただし、第4号から第6号の事業は、センターとは別に市町村が委託することもできます(介護保険法第115条の47)。
6. 【編集者の視点】
今回、条文を読んでいちばん意外だったのは、センターの名前を冠した事業の、すべてをセンターが行うとは限らない点です。介護保険法は、第4号から第6号の事業について、センターとは別に委託できるようにしています。窓口の看板が1つでも、実際の担い手は、複数のことがあります。
そのため、相談先で「それは、うちではなく、別の窓口です」と言われたとき、たらい回しだと感じてしまうことがあります。ただ、それは、制度が、役割を分けて設計されているためかもしれません。分からないときは、「どこに行けばよいか」を、そのまま聞いてみてください。
この記事は、特定の窓口を勧めるものではありません。担当や運用は、市区町村で違います。お住まいの市区町村の、介護や高齢者福祉の担当課に、必ず確認してください。
7. 3職種の配置基準:第1号被保険者おおむね3000人以上6000人未満ごとに、保健師、社会福祉士、主任介護支援専門員が各1人
介護保険法施行規則第140条の66によると、センターが担当する区域の第1号被保険者の数が、おおむね3000人以上6000人未満ごとに置く職員は、専らその職務に従事する常勤の職員で、原則として、保健師その他これに準ずる者が1人、社会福祉士その他これに準ずる者が1人、主任介護支援専門員その他これに準ずる者が1人です。
この基準は、市町村が条例を定めるときに従うべき基準です。運営協議会が必要と認めるときは、常勤換算方法によることができます。また、運営協議会が、効果的な運営に資すると認めるときは、複数のセンターの区域を1つの区域として、第1号被保険者の数を数えることもできます。
主任介護支援専門員は、介護支援専門員であって、主任介護支援専門員研修を修了した人です。修了から5年を経過するごとに、更新研修を修了していることが、条件とされています(介護保険法施行規則)。
7.1 【地域包括支援センターの3職種の配置基準】
前提条件:e-Gov法令検索の介護保険法施行規則第140条の66第1号の記載を、編集部が表に整理したもの。市町村が条例を定めるときに従うべき基準。運営協議会が認めるときの例外(常勤換算、複数の区域の合算)がある2/2
出所:e-Gov法令検索「介護保険法施行規則」を基にLIMO編集部作成
- 人数の単位:第1号被保険者の数がおおむね3000人以上6000人未満ごとです。専らその職務に従事する常勤の職員が原則です。
- 職種1:保健師その他これに準ずる者を1人置きます。準ずる者を含みます。
- 職種2:社会福祉士その他これに準ずる者を1人置きます。準ずる者を含みます。
- 職種3:主任介護支援専門員その他これに準ずる者を1人置きます。修了から5年ごとに、更新研修の修了が条件です。
表を見ると、1つのセンターには、保健、福祉、ケアマネジメントの3つの専門職が、1人ずつ、そろう設計になっています。介護だけでなく、健康や福祉の相談も、同じ窓口で受け止められる体制です。
8. 1か所あたりの人数を試算:全国の設置数で割ると約6561人、支所を含めると約4882人
配置基準の「おおむね3000人以上6000人未満」と、実際の設置数を、並べてみました。編集部が、厚生労働省のページの数字で、試算しました。65歳以上の人口は、現在3600万人を超えている、とされています。
この3600万人を、全国の設置数の5487か所で割ると、1か所あたり約6561人です。支所を含む7374か所で割ると、約4882人です。65歳以上の人口を、第1号被保険者の数とほぼ同じとみなした、単純な目安で、実際は地域で大きく違います。
8.1 【1か所あたりの65歳以上の人数の目安】
- 全国の設置数(令和7年4月末現在):5487か所です(厚生労働省のページ)。
- 支所(ブランチ)を含む設置数:7374か所です(厚生労働省のページ)。
- 65歳以上の人口(現在):3600万人超です(厚生労働省のページ)。
- 1か所あたりの人数(設置数で割る):約6561人です(編集部試算)。
- 1か所あたりの人数(支所を含めて割る):約4882人です(編集部試算)。
- 配置基準の人数の単位:おおむね3000人以上6000人未満です(介護保険法施行規則)。
表を見ると、設置数だけで割った目安の約6561人は、基準の6000人未満を上回っています。支所を含めると、約4882人で、基準の範囲に収まります。ただし、これは全国をならした単純な目安で、実際の担当人数は、センターごとに違います。
9. 相談の仕方:担当は地区ごと、事前に電話で連絡し、費用は横浜市では無料
横浜市は、地域包括支援センターは地区ごとに担当が分かれているため、相談を希望する人は、まず自分の担当センターを確かめたうえで、連絡するよう案内しています。探し方として、一覧のPDFや、外部の検索サイトが示されています。
横浜市のFAQによると、福祉・保健の専門員が無料で相談を受けています。施設まで来られない人のために、訪問相談やオンライン相談も行います。相談に当たっては、あらかじめ電話で連絡するよう、案内されています。
介護の費用が足りないときの資金面は「介護費用に困ったら地域包括支援センターに相談すればよい?実際はケアプランの相談窓口であり、費用が足りない場合は社会福祉協議会の生活福祉資金貸付制度という別の窓口が必要に 要支援・要介護での担当窓口の違いと、連帯保証人の有無による利子の差までを編集部が丁寧かつわかりやすく整理して解説」で、確認できます。
なお、センターの設置者や職員は、正当な理由なしに、その業務に関して知り得た秘密を漏らしてはならない、とされています(介護保険法第115条の46第8項)。相談の内容は、守られる前提です。
10. 令和8年法律第51号:市町村は「地域権利擁護相談支援センター」も設置可能に、原則として令和9年4月1日に施行
厚生労働省老健局の令和8年6月29日の資料によると、社会福祉法等の一部を改正する法律(令和8年法律第51号)で、成年後見制度や、地域における権利擁護事業の適切な利用の支援の中核的な役割を担う「地域権利擁護相談支援センター」を、設置可能とします。
この資料では、頼れる身寄りがいない高齢者等に対する、日常生活・入院等の手続・死後事務の支援を行う事業が、第二種社会福祉事業に位置付けられます。施行期日は、原則として令和9年4月1日です。ただし、一部は、公布後2年以内に政令で定める日です。
衆議院の附帯決議(令和8年5月22日)は、この新しい支援事業を、市町村の包括的支援体制の中に位置付け、地域包括支援センター、生活困窮者自立相談支援機関、社会福祉法人、互助組織等との連携を含め、適切な役割分担を図るよう、求めています。
地域包括支援センターとの関係は、どうなるのでしょうか。確認した資料には、地域権利擁護相談支援センターが、地域包括支援センターに置き換わる、という記載は見当たりません。附帯決議は、連携と役割分担を求めています。実際の窓口の姿は、市町村の運用で決まると考えられます。
11. 【編集者の視点】
今回、資料を読み比べて、気づいたのは、窓口の数が増える方向にある点です。地域包括支援センターに加えて、令和9年4月以降は、地域権利擁護相談支援センターも、市町村が設置できるようになります。窓口が増えること自体は、相談の選択肢の広がりです。
一方で、親の相談を、どこに持ち込めばよいのかが、分かりにくくなる心配もあります。ただ、これは編集部の見方で、制度がそう動くと決まったわけではありません。新しい窓口の具体的な姿は、政令や、市町村の運用で、定まる部分が残っています。
当面は、親の住む地区の地域包括支援センターが、最初の相談先として、分かりやすい入口です。最新の内容は、厚生労働省や、市区町村の窓口で、必ず確認してください。
12. まとめ
地域包括支援センターは、市町村が設置する、高齢者の総合相談の中核的な機関で、全国に5487か所あります(支所を含めると7374か所、令和7年4月末現在)。介護保険法は、総合相談支援、権利擁護、ケアマネジメント支援などを、事業に挙げています。
センターには、第1号被保険者おおむね3000人以上6000人未満ごとに、保健師、社会福祉士、主任介護支援専門員が各1人置かれます。65歳以上の人口3600万人超を設置数で割ると、1か所あたり約6561人です(編集部試算)。
横浜市では、相談は無料で、担当は地区ごと、事前に電話で連絡する案内です。令和9年4月1日に施行される令和8年法律第51号で、市町村は地域権利擁護相談支援センターも設置できます。個別の判断は、市区町村に確認してください。
13. よくある質問
13.1 Q. 地域包括支援センターとは、何ですか?
地域の高齢者の総合相談、権利擁護、介護予防の援助などを行い、高齢者の保健医療の向上と福祉の増進を包括的に支援する、市町村が設置する中核的な機関です(厚生労働省)。
13.2 Q. 全国にいくつありますか?
全国で5487か所です。支所を含めると7374か所です(令和7年4月末現在、厚生労働省)。
13.3 Q. 何を相談できますか?
介護保険法は、総合相談支援、虐待の防止などの権利擁護、ケアマネジメント支援、認知症の人への総合的な支援などを、事業に挙げています(介護保険法第115条の45)。
13.4 Q. 介護認定を受けていなくても、相談できますか?
厚生労働省の説明や横浜市の案内は、相談の対象を、要介護認定を受けた人に限っていません。横浜市は、高齢者やその家族からの、介護、福祉、健康などの相談に対応しています。
13.5 Q. 費用はかかりますか?
横浜市では、福祉・保健の専門員が無料で相談を受けています。ほかの市区町村は、それぞれの案内で確認してください。
13.6 Q. どんな職員がいますか?
第1号被保険者おおむね3000人以上6000人未満ごとに、保健師、社会福祉士、主任介護支援専門員(それぞれ、これに準ずる者を含む)が各1人置かれます(介護保険法施行規則第140条の66)。
13.7 Q. 離れて暮らす親の相談は、どこにしますか?
地域包括支援センターは地区ごとに担当が分かれています(横浜市)。親が住む地区を担当するセンターに、事前に電話で連絡します。
13.8 Q. 令和9年4月に何が変わりますか?
令和8年法律第51号で、市町村が地域権利擁護相談支援センターを設置可能になります。原則として令和9年4月1日の施行で、一部は政令で定める日です(厚生労働省老健局の資料)。
参考資料
- 厚生労働省「地域包括ケアシステム」
- e-Gov法令検索「介護保険法」
- e-Gov法令検索「介護保険法施行規則」
- 厚生労働省老健局「社会福祉法等の一部を改正する法律について(報告)」(令和8年6月29日)
- 横浜市「あなたのお住まいの地区を担当している地域包括支援センター」
- 横浜市「地域包括支援センターはどのような活動をしていますか。」
齊藤 慧
