3. 【出産育児一時金と葬祭費】出産は原則50万円、葬祭費は市区町村ごとに額が違う
国民健康保険では、出産や死亡のときにも決まったお金が支給されます。出産育児一時金と葬祭費の受け取り方を確かめておきます。
3.1 出産育児一時金は直接支払制度なら差額だけ
出産育児一時金は公的医療保険の加入者が出産したときに子ども1人につき原則50万円が支給される制度で、2023年4月に原則42万円から引き上げられました。港区の国民健康保険では、妊娠85日以上であれば死産や流産の場合も支給されます。
入院のときに直接支払制度の手続きをすると、出産育児一時金は区から医療機関に直接支払われます。出産費用が50万円を下回ったときは、差額が世帯主に支給され、港区では出産から約2か月後に申請書が届く流れです。
なお、会社の健康保険などに1年以上加入していた人が退職後6か月以内に出産し、前の健康保険から支給される場合は、国民健康保険からは支給されません。
3.2 葬祭費は条例で決まり港区は7万円
国民健康保険法では、市町村は条例の定めるところにより、葬祭費の支給などを行うことになっています。そのため、葬祭費の額は市区町村によって違います。
港区では、加入者が亡くなったとき、葬祭を行った人に7万円が支給されます。ただし、勤務先の健康保険に本人として加入していた人が退職後3か月以内に亡くなった場合は、退職前の健康保険から支給されるため、国民健康保険からは支給されません。
4. 【療養費・移送費・高額介護合算療養費】全額払ったときや1年分の合算
医療費を一度全額払ったときや、医療と介護の両方を使っている世帯にも、申請して受け取る給付があります。残りの3つを順に見ていきましょう。
4.1 療養費は保険で認められた分が戻る
療養費は、医療費の全額を払った場合に、国民健康保険に申請すると、保険で認められた部分から自己負担分を除いた額が支給される給付です。自己負担が3割の人なら、7割が戻ってきます。
港区が対象として挙げているのは、次のような場面です。
- 急病など、やむを得ない理由で医療機関にマイナ保険証などを示せなかったとき
- はり・きゅう、あんまマッサージ
- 補装具
- 海外療養費(海外渡航中に緊急でやむを得ず診療を受けたとき)
- 整骨院・接骨院での施術
医師の同意書や診断書があっても、審査で支給の対象にならないことがあります。港区では申請から支給まで3か月ほどかかり、診療月ごとに申請します。
4.2 移送費は医師の指示による緊急の転院など
移送費は、移動が難しい患者が医師の指示で緊急に転院したときなどに、移送にかかった費用が支給されることがある給付です。災害現場から医療機関に緊急に運ばれた場合なども対象になります。
通院のように一時的・緊急と認められない移動や、本人や家族の都合による転院は対象になりません。
4.3 高額介護合算療養費は8月から翌年7月の1年分
同じ世帯で1年間に払った国民健康保険の自己負担と介護保険の利用者負担を合わせ、限度額を超えたときに、超えた分が支給される給付です。計算の期間は8月1日から翌年7月31日までです。
港区の案内では、69歳までの人の年間の限度額は、アが212万円、イが141万円、ウが67万円、エが60万円、オが34万円です。港区は、基準日の翌年の3月ごろに申請書を郵送しています。
5. 住民税の申告がないと高額療養費の所得区分は「ア」に
高額療養費の限度額は、所得区分によって大きく変わります。その所得区分を決めるもとになるのが、住民税の申告などでわかる所得です。
5.1 港区は未申告の人に申告を呼びかけ
港区は、住民税が未申告の場合は所得区分アとみなされ、高額療養費が支払われないことがあると案内しています。そのうえで、国民健康保険に加入している世帯の未申告の人に、全員申告するよう求めているのです。
区分アの限度額は、2026年8月診療分からは27万300円に医療費に応じた額を足した金額です。区分オの3万6900円とは大きく違います。
5.2 保険料の計算根拠と同じ所得の情報
自治体で国民健康保険の保険料の計算を担当していた頃、窓口では「保険料の計算根拠を知りたい」という相談をよく受けてきました。そのたびに、住民税の課税情報のどの所得をもとにしているかを一緒に確かめていました。
高額療養費の所得区分も、こうした所得の情報をもとに決まります。自分の世帯がどの区分になるかは、住んでいる市区町村の国民健康保険の担当窓口で確かめられます。
6. まとめにかえて
国民健康保険には、高額療養費や高額介護合算療養費、療養費、移送費、出産育児一時金、葬祭費など、申請して受け取るお金があります。受け取る権利は、2年で時効を迎えます。
高額療養費は2026年8月診療分から70歳未満の限度額が改定され、住民税非課税世帯の区分オは月3万6900円になりました。1年分の上限も新しく設けられています。
市区町村から申請書やお知らせが届いたら、期限を確かめて早めに出しておきましょう。葬祭費の額や申請書が届く時期は市区町村で違うため、迷ったときは国民健康保険の担当窓口で聞くのが確実です。
参考資料
- 港区「国民健康保険の給付」
- 港区「令和8年8月から高額療養費の自己負担限度額が変わります」
- 港区「高額療養費(国民健康保険制度に加入している方)」
- 港区「高額介護合算療養費(国民健康保険制度に加入している方)」
- 港区「療養費」
- 港区「移送費」
- 港区「出産育児一時金(国民健康保険に加入している人)」
- 港区「国民健康保険に加入していた人の葬祭費の手続き」
- 厚生労働省「出産育児一時金の支給額・支払方法について」
- e-Gov法令検索「国民健康保険法」
太田 彩子