自営業やフリーランス、退職後の人などが加入する国民健康保険は、病院の窓口で保険証やマイナ保険証を出すと、医療費の一部の負担で診療を受けられる制度です。ただ、受けられる給付はそれだけではありません。

医療費が高額になったときの払い戻しや、出産・葬儀のときのお金のように、自分で申請して受け取る給付もあります。このうち高額療養費は、2026年8月診療分から70歳未満の人の限度額が改定されました。

この記事では、国民健康保険で申請して受け取れる主な6つのお金と、改定後の高額療養費の限度額を見ていきます。

1. 【国民健康保険の給付】申請して受け取れるお金は主に6つ

国民健康保険の給付には、病院の窓口で受けるものと、あとから申請して受け取るものがあります。まずは申請が要るお金の全体を確認しましょう。

1.1 窓口で受ける給付と申請して受け取る給付

病院や薬局の窓口でマイナ保険証などを示し、医療費の一部を払って診療を受けるのが「療養の給付」です。義務教育就学後から69歳までの人の自己負担は3割になります。

これに対して、次の6つは市区町村に申請して受け取るお金です。東京都港区の案内をもとに、どんなときに受け取れるかをまとめてみました。

国民健康保険で申請して受け取る主な6つのお金1/2

国民健康保険で申請して受け取る主なお金として、高額療養費・高額介護合算療養費・療養費・移送費・出産育児一時金・葬祭費の6つと、それぞれを受け取れる場面を並べた一覧

出所:港区「国民健康保険の給付」を参考にLIMO編集部作成

  • 高額療養費:1か月の自己負担額が限度額を超えたとき
  • 高額介護合算療養費:医療と介護の1年分の自己負担を合わせて限度額を超えたとき
  • 療養費:やむを得ず医療費を全額払ったとき、医師の指示で補装具を作ったときなど
  • 移送費:医師の指示で緊急に転院したときなど
  • 出産育児一時金:出産したとき(港区は出生児1人につき50万円)
  • 葬祭費:加入者が亡くなり、葬祭を行ったとき

1.2 申請できるのは2年まで

国民健康保険法では、保険給付を受ける権利は、行使できる時から2年がたつと時効で消滅すると定めています。申請しないまま2年を過ぎると、受け取れなくなるのです。

いつから2年を数えるかは、給付によって違います。たとえば港区では、高額療養費は診療月の翌月1日から、葬祭費は葬祭を行った日の翌日から、出産育児一時金は出産日の翌日から、それぞれ2年以内が申請できる期間です。

2. 【高額療養費】2026年8月診療分から70歳未満の限度額が改定

高額療養費は、1か月に病院や薬局で払った医療費が限度額を超えたとき、超えた分が払い戻される給付です。国の制度改正で、2026年8月診療分から限度額が見直されました。

2.1 住民税非課税世帯の区分オは月3万6900円に

港区の案内では、69歳までの人の月の限度額は所得区分ごとに次のとおりです。所得区分は、保険料の計算のもとになる「賦課基準額」で分かれます。

70歳未満の高額療養費の限度額(2026年8月診療分から)2/2

70歳未満の国民健康保険の高額療養費の月の自己負担限度額を、所得区分アからオごとに2026年7月診療分までと8月診療分からで比べ、新設された年間上限も並べた表

出所:港区「令和8年8月から高額療養費の自己負担限度額が変わります」、港区「高額療養費(国民健康保険制度に加入している方)」を参考にLIMO編集部作成

【2026年7月診療分まで】

  • ア(901万円超):25万2600円+(総医療費−84万2000円)×1%
  • イ(600万円超〜901万円以下):16万7400円+(総医療費−55万8000円)×1%
  • ウ(210万円超〜600万円以下):8万100円+(総医療費−26万7000円)×1%
  • エ(210万円以下):5万7600円
  • オ(住民税非課税世帯):3万5400円

【2026年8月診療分から】

  • ア(901万円超):27万300円+(総医療費−90万1000円)×1%
  • イ(600万円超〜901万円以下):17万9100円+(総医療費−59万7000円)×1%
  • ウ(210万円超〜600万円以下):8万5800円+(総医療費−28万6000円)×1%
  • エ(210万円以下):6万1500円
  • オ(住民税非課税世帯):3万6900円

過去12か月に限度額を超えた月が3回あると、4回目からは限度額が下がります。この4回目以降の額は、アが14万100円、イが9万3000円、ウとエが4万4400円、オが2万4600円で、改定の前後で変わっていません。

2.2 1年分の上限も新しくできた

あわせて、8月から翌年7月までの1年分の自己負担にも上限が設けられました。上限は、アが168万円、イが110万円、ウとエが53万円、オが29万円です(エの一部の人は41万円)。

港区によると、2027年8月にも段階的な見直しがあり、その内容は改めて知らせることになっています。

2.3 港区では申請書が3〜4か月後に届く

港区では、高額療養費に該当する世帯の世帯主に、診療月から3〜4か月後に申請書を郵送しています。申請書を受け付けてから支払いまでは、1か月から1か月半ほどかかります。

申請書と一緒に届く申出書で申請の簡素化を選ぶと、次からは申請書を出さなくても、登録した口座に自動で振り込まれる仕組みです。ただし、国民健康保険料を滞納した場合などは、簡素化が解除されます。

太田 彩子

国民健康保険の給付は、市区町村から申請書が届いてから動くものが多くあります。封書が届いたら中身と期限を確かめ、分からない点は国民健康保険の担当窓口で聞いてみてください。