厚生労働省の資料によると、一般的な所得の区分の70歳以上の外来特例は、令和8年8月に月1万8000円から2万2000円へ上がりました。

令和9年8月には、2万8000円へ上がる予定です。外来の医療費が12万円の月に戻るお金は、編集部の試算で、6000円から2000円に減ります。

「もし70歳以上で、外来だけの通院でも、高額療養費は使えるのか。今回の改定で、戻るお金はどう変わるのか」と気になる方もいるでしょう。結論から言うと、外来だけでも対象になります。ただし、一般的な所得の区分では、戻る額が小さくなります。

この記事では、前半でこの疑問に、厚生労働省の公表資料(2026年10月時点)と編集部の試算で答えます。後半では、外来特例と世帯の上限の関係を整理します。個別の金額は、加入している保険者に確認してください。

1. 入院していなくても、外来だけで高額療養費って使えるの?

「72歳の母は、入院したことはなく、整形外科とかかりつけ医に通っているだけです。高額療養費は入院した人の制度だと思っていました。8月から上限が上がったと聞いて、母のお金が戻らなくなるのではと、気になっています」。この疑問は、編集部が想定したもので、実際の問い合わせではありません。

高額療養費は、入院のときだけの制度だと思われがちです。外来だけの通院でも、窓口で支払う医療費が上限額を超えれば、超えた分が支給されます。答えを3点にまとめると、次のとおりです。

  • 70歳以上の外来には、世帯の上限とは別に「外来(個人ごと)」の上限があり、「外来特例」と呼ばれます
  • 一般的な所得の区分の年間上限は、14万4000円から21万6000円になりました。外来だけで毎月上限まで使う場合の年間の最大負担は、7万2000円増えます(編集部試算)
  • 外来の医療費が12万円(窓口2割で2万4000円)の月に戻る額は、6000円から2000円に減ります(編集部試算)

2. 70歳以上の外来特例で高額療養費はいくら戻る?3つの場合を厚生労働省の資料と試算で確認

読者の方が気にしそうな「もし」を、厚生労働省の資料と編集部の試算で確認します。いずれも、一般的な所得の区分の70歳以上が対象で、個別の金額を予測するものではありません。

  • もし、外来だけで医療費12万円(窓口2割で2万4000円)の月があったら:戻る額は、令和8年7月までの6000円から、令和8年8月から2000円に減ります(編集部試算)
  • もし、外来だけで毎月上限まで使ったら:年間の最大負担は14万4000円から21万6000円に、7万2000円増えます(編集部試算)
  • もし、外来特例の金額が令和9年8月にさらに上がったら:月2万8000円になる予定です(厚生労働省の資料)

外来特例の対象年齢は、令和7年11月の閣議決定で、見直しが検討されています。ここからは、この答えの前提になる制度を順に確認します。外来だけの通院が対象になる理由、外来特例の金額、年間の負担の試算、世帯の上限との関係の順です。

3. 外来だけの通院でも、窓口の支払いが上限額を超えれば高額療養費の対象になる

厚生労働省の「高額療養費制度を利用される皆さまへ」によると、高額療養費制度は、医療機関や薬局の窓口で支払う医療費が上限額を超えた場合に、その超えた額を支給する制度です。上限額は、年齢や所得に応じて定められています。

同じページには、平成24年4月から、入院だけでなく、外来診療についても、「限度額適用認定証(認定証)」などを提示すれば、月ごとの上限額を超える分を窓口で支払う必要はなくなった、と書かれています。

この取扱いを受けるには、健康保険証としてマイナンバーカードを利用するか、事前に認定証を入手しておく必要があります。認定証の交付手続きは、加入している健康保険組合、協会けんぽ、市町村(国民健康保険など)に問い合わせるよう案内されています。

つまり、外来だけの通院でも、高額療養費は使えます。ただし、外来だけで上限額を超える人は、多くはないかもしれません。上限を超えやすいのは、医療費が高い治療を、月に何度も外来で受ける場合です。

4. 70歳以上には、世帯の上限とは別に、個人ごとの「外来特例」の上限がある

厚生労働省の見直し資料(令和8年8月診療分から)には、70歳以上の高額療養費の自己負担限度額の表があります。月単位の上限額は、「外来(個人ごと)」と、世帯の上限額(入院を含む)に分かれています。

外来(個人ごと)の上限は、いわゆる外来特例です。70歳以上の人が、外来で医療機関にかかったときに、個人ごとに適用されます。窓口の負担割合は、資料では、70歳から74歳が2割、75歳以上が1割(一定の場合は2割)と示されています。

資料によると、一般的な所得の区分(年収換算で約260万円から約370万円、健保の標準報酬月額で20万円から26万円)では、外来特例の月額上限は、令和8年7月までは1万8000円(年間上限14万4000円)でした。

令和8年8月からは、2万2000円(年間上限21万6000円)に変わっています。さらに令和9年8月からは、年収換算で約200万円超から約370万円の区分で、2万8000円(年間上限21万6000円)になる予定です。年収換算で約200万円以下の区分は、令和9年8月以降も2万2000円(年間上限21万6000円)の予定です。

住民税非課税の区分では、令和8年7月までが8000円、令和8年8月からが1万1000円(年間上限9万6000円)、令和9年8月からが1万3000円(年間上限9万6000円)です。一定所得以下の区分は、8000円のまま変わりません。

4.1 【70歳以上の外来特例(個人ごとの月額上限)の見直し】

前提条件:厚生労働省「高額療養費制度の見直しについて(令和8年8月診療分から)」による。一般的な所得の区分は、年収換算で約260万円から約370万円(健保の標準報酬月額で20万円から26万円)の区分。令和9年8月以降は予定で、年収換算で約200万円以下の区分は令和9年8月以降も2万2000円の予定1/2

前提条件:厚生労働省「高額療養費制度の見直しについて(令和8年8月診療分から)」による。一般的な所得の区分は、年収換算で約260万円から約370万円(健保の標準報酬月額で20万円から26万円)の区分。令和9年8月以降は予定で、年収換算で約200万円以下の区分は令和9年8月以降も2万2000円の予定

出所:厚生労働省「高額療養費制度の見直しについて(令和8年8月診療分から)」

  • 令和8年7月まで:一般的な所得の区分は1万8000円(年間上限14万4000円)、住民税非課税は8000円、一定所得以下は8000円です。
  • 令和8年8月から:一般的な所得の区分は2万2000円(年間上限21万6000円)、住民税非課税は1万1000円(年間上限9万6000円)、一定所得以下は8000円です。
  • 令和9年8月から(予定):一般的な所得の区分は2万8000円(年間上限21万6000円)、住民税非課税は1万3000円(年間上限9万6000円)、一定所得以下は8000円です。
齊藤 慧
毎月、通院している方にとって、上限額が変わるというお知らせは、気になると思います。まずは、ご自身がどの所得区分に当たるのかを、保険証や、市区町村の窓口で確かめてみてください。区分が分かれば、見通しも立てやすくなります。

5. 外来だけで毎月上限まで使うと、一般的な所得の区分の年間上限は14万4000円から21万6000円になる:編集部試算

外来特例の月額上限が上がると、毎月のように外来にかかる人の、年間の負担が気になります。そこで、一般的な所得の区分で、外来だけで毎月上限まで自己負担する場合の、年間の最大負担を試算します。

令和8年7月までは、月額上限は1万8000円ですが、年間上限は14万4000円でした。月に直すと、12か月で14万4000円ですから、月平均は1万2000円です。毎月1万8000円を払い続けても、年間では14万4000円までで止まる計算になります。

令和8年8月からは、月額上限が2万2000円で、年間上限は21万6000円です。毎月2万2000円を払うと、12か月で26万4000円になりますが、年間上限の21万6000円で止まります。月平均は1万8000円です。

令和9年8月からは、月額上限が2万8000円で、年間上限は21万6000円の予定です。毎月の上限まで使っても、年間では21万6000円までに収まります。

この試算では、年間の最大負担は、14万4000円から21万6000円へ、7万2000円増えます。月額上限の引き上げ幅より、年間上限の引き上げの影響が、大きく出る形です。

5.1 【一般的な所得の区分・外来だけで毎月上限まで使う場合の年間の最大負担(編集部試算)】

前提条件:70歳以上の一般的な所得の区分で、外来だけで毎月上限まで自己負担したと仮定した編集部試算。年間は8月から翌年7月までを指す。令和9年8月以降は予定。厚生労働省の資料の金額による2/2

前提条件:70歳以上の一般的な所得の区分で、外来だけで毎月上限まで自己負担したと仮定した編集部試算。年間は8月から翌年7月までを指す。令和9年8月以降は予定。厚生労働省の資料の金額による

出所:厚生労働省「高額療養費制度の見直しについて(令和8年8月診療分から)」を基にLIMO編集部試算

  • 令和8年7月まで:月額上限は1万8000円、年間上限は14万4000円で、年間の最大負担は14万4000円(月平均1万2000円)です。
  • 令和8年8月から:月額上限は2万2000円、年間上限は21万6000円で、年間の最大負担は21万6000円(月平均1万8000円)です。
  • 令和9年8月から(予定):月額上限は2万8000円、年間上限は21万6000円で、年間の最大負担は21万6000円(月平均1万8000円)です。

住民税非課税の区分では、事情が少し違います。令和8年7月までは、月額上限8000円を12か月払うと9万6000円です。令和8年8月からは、月額上限が1万1000円に上がりますが、年間上限が9万6000円に設けられるため、年間の最大負担は9万6000円のままです(編集部試算)。

厚生労働省の資料も、住民税非課税の区分に新たに年間上限を導入することで、毎月現在の上限額まで利用される方の負担は変わらない、という考え方を示しています。一般的な所得の区分とは、扱いが違う点に注意してください。

6. 外来の医療費が12万円の月に戻るお金は、6000円から2000円に減る:編集部試算

月ごとの、具体的な数字でも見てみます。70歳から74歳で、窓口の負担割合が2割の人が、ある月に、外来だけで、医療費(10割)が12万円かかったとします。

窓口の自己負担は、12万円の2割で、2万4000円です。令和8年7月までの外来特例の上限は1万8000円なので、2万4000円から1万8000円を引いた、6000円が高額療養費として戻ります。

令和8年8月からは、上限が2万2000円なので、2万4000円から2万2000円を引いた、2000円が戻ります。同じ医療費でも、戻るお金は6000円から2000円に減ります(編集部試算)。

医療費が10万円で、窓口の自己負担が2万円の月なら、2万2000円の上限に届かないため、戻るお金はありません。この試算は、1か所の医療機関の外来だけを前提にした仮定です。複数の医療機関や、薬局の分を合算できるかなど、個別の扱いは、加入している保険者に確認してください。

齊藤 慧
戻るお金が6000円から2000円になると聞くと、少し寂しく感じる方もいらっしゃると思います。ただ、これは、ある月の数字です。年間で見るとどうなるのか、ご自身の通院の頻度や、窓口で払う額と照らし合わせて、無理のない見通しを立ててみてください。

7. 【編集者の視点】

外来特例の数字を並べてみると、月額上限の引き上げだけでなく、年間上限の存在が、実際の負担を左右することが分かります。一般的な所得の区分では、令和8年7月までの年間上限14万4000円が、月平均1万2000円でした。

それが、令和8年8月からは月平均1万8000円になりました。月額上限の1万8000円から2万2000円への変化より、年間の最大負担が7万2000円増えるという見え方のほうが、家計への影響を実感しやすいと思います。

ただし、これは、毎月上限まで使う人の、最大の負担です。実際の通院は、月によって医療費が違います。年間の合計が、年間上限に届くかどうかは、ご自身の通院の実績で確認するのが一番確実です。

8. 世帯の上限は外来特例とは別にあり、入院を含めた月の上限額を決める

外来特例は、外来(個人ごと)の上限です。これとは別に、世帯で合算する、入院を含めた月の上限額もあります。同じ資料には、一般的な所得の区分について、世帯の月額上限が示されています。

令和8年7月までは5万7600円、令和8年8月からは6万1500円、令和9年8月からは6万9600円(予定)です。多数回該当の場合は、いずれも4万4400円です。

また、世帯の上限には、令和8年8月から、新たに年間上限が設けられました。一般的な所得の区分では、年間上限は53万円です。年間は、8月から翌年7月までを指します。

厚生労働省のページには、月ごとの自己負担額が積み上がっても、年間の上限額に達したあとは、それ以上の医療費については、保険者から還付を受けられる、と説明されています。

外来特例の上限と、世帯の上限が、どのように組み合わさって計算されるかは、本記事で確認した資料では、具体的な計算例までは示されていませんでした。複数の医療機関にかかる人や、同じ世帯に70歳以上の人が複数いる場合は、保険者に確認してください。

9. 【編集者の視点】

外来の医療費12万円の月で見ると、戻るお金は、令和8年7月までが6000円、令和8年8月からが2000円です。上限額が上がると、同じ医療費でも、戻るお金が減る仕組みが、はっきり見えてきます。

一方で、上限額が上がっても、窓口で払う額が、そのまま上限まで増えるわけではありません。医療費が少ない月は、もともと上限に届かないため、影響を受けないからです。

通院の頻度が多く、医療費が高い月が続く人ほど、影響が大きくなります。ご自身の通院の実績を、年間で振り返ってみることが、見通しを立てる近道です。

10. 外来特例の対象年齢は、令和7年11月の閣議決定で見直しが検討されている

厚生労働省の資料には、外来特例の対象年齢についての注意書きがあります。令和7年11月21日の閣議決定(総合経済対策)では、「医療費窓口負担に関する年齢によらない真に公平な応能負担の実現」について、令和7年度中に具体的な骨子について合意し、令和8年度中に具体的な制度設計を行い、順次実施する、とされています。

資料は、これを踏まえて、外来特例の対象年齢についても、高齢者の窓口負担の見直しとあわせて、具体案を検討し、一定の結論を得る、としています。現時点で、対象年齢をどう見直すかは、資料からは分かりません。

外来特例を使っている人は、今後の見直しの動きも、厚生労働省のページや、加入している保険者からのお知らせで、確認しておくと安心です。

制度の見直しの全体像は、【高額療養費】年間上限は令和8年8月から。所得区分の細分化は令和9年8月からでも整理されています。

齊藤 慧
医療費の制度は、年によって少しずつ変わっていきます。ご家族に、通院が長い方がいらっしゃる場合は、ときどき、最新の情報を確かめてあげると、安心につながると思います。手続きや金額は、必ず保険者に確認してください。※本記事は、編集部が厚生労働省が公表する公式の最新一次資料を直接確認の上、執筆・検証しています。

11. まとめ

高額療養費は、外来だけでも対象になります。窓口で支払う医療費が上限額を超えた場合に、超えた額が支給されます。認定証などを提示すれば、窓口での支払いを上限額までに抑えられます。

70歳以上の外来には、外来特例(個人ごとの上限)があります。一般的な所得の区分では、月額上限が、令和8年7月までの1万8000円から、令和8年8月から2万2000円、令和9年8月から2万8000円(予定)に引き上げられます。

編集部の試算では、毎月上限まで使う場合の年間の最大負担は、14万4000円から21万6000円へ、7万2000円増えます。個別の金額は、加入している保険者に確認してください。

12. よくある質問

12.1 Q. 高額療養費は、外来だけでも使えますか?

使えます。窓口で支払う医療費が上限額を超えた場合に、超えた額が支給されます。認定証などを提示すれば、窓口の支払いを上限額までに抑えられます(厚生労働省)。

12.2 Q. 外来特例とは何ですか?

70歳以上の人の外来について、世帯の上限とは別に定められた、個人ごとの月額上限です。所得区分によって、金額が違います(厚生労働省)。

12.3 Q. 外来特例の上限は、いくらですか?

一般的な所得の区分では、令和8年8月から月額2万2000円(年間上限21万6000円)です。住民税非課税は1万1000円(年間上限9万6000円)、一定所得以下は8000円です。

12.4 Q. 令和9年8月からは、どうなりますか?

一般的な所得の区分は月額2万8000円(年間上限21万6000円)、住民税非課税は1万3000円(年間上限9万6000円)になる予定です。一定所得以下は8000円のままです。

12.5 Q. 年間とは、いつからいつまでですか?

8月から翌年7月までを指します(厚生労働省)。

12.6 Q. 年間上限に達したら、どうなりますか?

年間上限に達したあとは、それ以上の医療費は、保険者から還付を受けられます(厚生労働省)。具体的な手続きは、保険者に確認してください。

12.7 Q. 外来特例の対象年齢は、変わりますか?

厚生労働省の資料では、高齢者の窓口負担の見直しとあわせて、具体案を検討し、一定の結論を得る、とされています。現時点で、どう変わるかは分かりません。

参考資料

齊藤 慧